花粉対策、基本はステロイド点鼻薬 子供でもOK
今年こそ花粉に負けない春を 花粉症対策2018(中)
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ……。つらい花粉症を制するには、先手を打つことが肝心。鼻にはまず点鼻薬をシュッ、そして目には点眼薬を。症状がひどくなる前から始めるのが鉄則だ。花粉症対策の最新情報を3回に分けてお伝えする。2回目は花粉症の症状を抑える薬の使い方について見ていこう。
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くしゃみ、鼻水、鼻づまりを効果的に抑えるには、3段構えで薬を使うのがお薦めだ。
基本は、鼻に直接噴霧するステロイド点鼻薬。アレルギー反応による鼻粘膜の炎症を強力に抑える。これを花粉が本格的に飛ぶ前、あるいは症状がごく軽いうちから花粉シーズンが終わるまで毎日使う。「飛散量が少なかったり、症状が軽かったりする日も毎日続けるのが重要」と、こすぎ耳鼻咽喉科クリニックの金井憲一院長は話す。
現在よく処方されているのは「アラミスト(一般名:フルチカゾン)」、「ナゾネックス(同:モメタゾン)」「エリザス(同:デキサメタゾン)」などで、1日1回の点鼻ですむ。ステロイドというと副作用が気になるが、「現在主流のものは局所だけに作用し、全身への影響がほとんどない。子どもにも長期間使える」(金井院長)。
歯磨き後に使うなどと決めておけば、忘れにくい。鼻に噴霧するときは容器の先端を若干外側に向けてシュッとするといいそうだ。「内側に向けると鼻中隔という血管が多い場所に薬剤が集まり、鼻血が出やすくなることがある」と金井院長(下図)。
このステロイド点鼻薬だけで症状が抑えられない場合は、眠気の出にくい第二世代の抗ヒスタミン内服薬(下表)を上乗せする。「人によって薬の効き目や眠気の出方に差があるので、自分に合ったものを処方してもらうといい」(金井院長)
この2段構えでも症状が治まらないときは、漢方薬の「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」を加えてもいい。即効性があり、のんで30分くらいで鼻水やくしゃみがラクになる。
初期療法が間に合わず、すでに症状がひどいなら、これらの薬を最初から併用してもいい。
なお、血管収縮薬の点鼻薬は鼻づまりに即効性があるが、使いすぎるとかえって鼻づまりがひどくなる「薬剤性鼻炎」を招く。「使うのは1日1、2回まで」と金井院長。市販の点鼻薬にも配合されていることが多いので、使い方に気をつけたい。
もちろん、毎日のケアも大事。薬をのんでいるからと油断せず、外出時はマスクで花粉の侵入を防ごう。鼻の中の花粉を洗い流す「鼻うがい」もお薦めだ。
根治療法の「舌下免疫療法」は3~5年
花粉症を根本から治したい! そんな人に向くのが「舌下免疫療法」。アレルギーの原因になるスギ花粉のエキス(「シダトレン」)を毎日、舌の下に投与して体を慣らしていく方法で、健康保険も利く。3~5年続ける必要があるが、金井院長が18人の患者を調べたところ、平均8カ月間の段階で約9割の人が鼻と目の症状改善を認めていた。
治療はスギ花粉のシーズンが終わって症状が完全になくなった6月頃に始めるのがベスト。翌シーズンでの効果を期待するなら、遅くとも11月頃までには始めておきたい。「花粉症の時期と重なる受験に備え、子どもに治療を受けさせる例もある」(金井院長)
こすぎ耳鼻咽喉科クリニック(川崎市中原区)院長。1994年、山梨医科大学(現山梨大学医学部)卒業。昭和大学藤が丘病院耳鼻咽喉科准教授などを経て、2014年から現職。花粉症の治療に詳しい。日本耳鼻咽喉科学会専門医。
(ライター 佐田節子)
[日経ヘルス2018年3月号の記事を再構成]
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