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プロが明かす出世のカラクリ

スキルや経験は4段階 会社流から「汎用」に翻訳せよ 20代から考える出世戦略(26)

2018/2/6

 今いる企業で活躍することを目指していれば、30代にもなると標準以上の成果を出せるようになっているはずです。ただ、将来役員にまで出世できそうか、というとまだわかりません。そんな状況でがむしゃらに今の仕事を頑張るのもよいのですが、少し視点を変えてみてはいかがでしょう。前回紹介したようにスキルや経験を「翻訳」するには、外部の視点を持つことが重要だからです。そしてスキルや経験の「翻訳」は、社内での出世にも役に立ちます。

■プライドの高さはいつまで維持されるのか

 多くの優秀なビジネスパーソンとお話ししていて、特に一流企業の方に多い傾向があります。それは極めてプライドが高いこと。

 たとえば一流企業の管理職向けに講義を行っていると、こう言われることがあります。

 「講師の先生には申し訳ないのですが、私たちは●●社の課長級ですよ。講義いただいているレベルの内容なんて、もうみんな当然のように知っていますよ」

 たしかに優秀な方々で、知識としてはすでに備えておられることも多い。そしてその知識や経験を踏まえて、社内の現実の課題解決を検討してみください、とワークを依頼すると、しっかりとした検討をしてくださいます。

 もちろん若干足りない点などはあるので、そういう部分を講義やケースワークなどで補っていきます。そうして学びを実感して、実践につなげていただけるようになります。

■金太郎飴型の出世はもうなくなっている

 さて、そういう方々と数年して再会することがあります。私たちは社外のコンサルタントなので、その間にどのようなことがあったかはわかりません。だから新鮮な視点で再会するのですが、5年もすぎれば完全に2つのタイプに分かれてしまっています。

 第1のタイプはいわゆる勝ち組です。

 研修の後順調に出世し、今や部長や執行役員、取締役などに出世している人たちです。

 一方、第2のタイプは負け組、というわけではありません。そもそも選抜されて研修に出ておられた方々ですから、優秀な方々であることには間違いありません。ただ、どこかぱっとしないままで過ごしておられる方々が第2のタイプです。

 このタイプの方々は、肩書としては次長、シニアマネジャーのようにしっかりしたものをお持ちです。ただ、お会いしてもどこか不安げです。出世競争に負けたとまではおっしゃいませんが、転職は一度ならず考えてみた、という言葉も聞きます。

 そして研修当時に示されていたようなプライドをお持ちかというとそうではなくなっているのです。この傾向は、この10年ほどで特に強くなっているように感じます。

■高度人材型のスキルが求められはじめている

 「きっかけは社外交流ですかね」

 そうおっしゃった技術次長は、5年前には意気軒昂な課長でした。今ももちろん専門性を生かしながら、工場ラインの生産性向上に励んでおられるのですが、どこかキレが感じられませんでした。

 「うちの生産方法が一番すぐれていると思っていました。しかし技術部門の社外交流で、他社工場に1週間張り付く機会があったんです。衝撃的でしたよ。10年前にうちの仕組みを学んで採用したと聞いていました。けれども10年がすぎたらぜんぜん別物なんです。うちが1時間かける工程を分単位で改善している。そんな工夫ができるなんて、想像もしていませんでした。それからですかね。やる気が衰え始めたのは」

 会社の常識の中で過ごしてきた彼は、気が付けば業界の標準からも劣ってしまっていました。優秀なはずの人材が、気が付けば周回遅れになってしまうようなことも今では日常茶飯事です。そうならないようにするためにも、自社だけの情報、業界だけの情報におぼれていてはいけないのです。そのための手法がまさに「翻訳」です。

■自己流で課長になれた時代もたしかにあった

 大事なことは、自分の業務スタイルを理解することです。特に近年のビジネスの領域では、経験やスキルに4つの段階ができるようになりました。

 自己流⇒会社流⇒業界流⇒汎用、の4段階です。

 これらはビジネスモデルの変化速度によって影響が異なります。ゆっくりした変化速度であれば、自己流のままで成果を出せたでしょうし、社内でも出世できたかもしれません。しかし今では自己流では係長になるのがやっとでしょう。「俺の若い頃はこうだった」という考え方は今では通用しないのです。

 同様に、現在では会社流を覚えてようやく課長、業界流で部長、そして役員になるには汎用的なスキルにまで「翻訳」する必要があります。

■「会社流」「業界流」の常識だけでは10年後は見えない

 弊社に昨年いただいた、ある巨大インフラ企業からの依頼も「翻訳」がテーマでした。そのきっかけは大きな変革に直面した経営陣の危機意識からのものでした。

 「業界の常識をうちやぶる人材に活躍してほしい」

 「もはや旧来のビジネスモデルや経営戦略では存続できない」

 だから新しい時代を切り開ける人材を採用し、育成し、評価し、処遇したい、というご依頼なのですが、そもそもなぜ社内でその検討ができないのでしょう? わざわざ高い費用を払ってまで、コンサルティング会社に依頼する理由は?

 それは「会社流」「業界流」の常識を乗り越えることがとても難しいからだということでした。特に人事の領域では、会社の常識や業界の常識が世間の非常識である、という場面は多々見受けられます。

 会社の常識や業界の常識に慣れ親しんだ人ほど、「翻訳」が難しくなってしまうのです。

 そんな場面で、あえてコンサルタントに依頼することなく改革を進めるためには、会社や業界としてのスキルや経験を、汎用レベルにまで引き上げなくてはいけません。

 スキルや経験を「翻訳」できるようになるためには、前回示したようなリカレント教育を受けることも重要です。しかしもう一つの手段があります。それが副業などの手段です。

 ではこれからの時代に私たちが副業とどうつきあっていくべきか。それは次回にご提示させていただきます。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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