20万円クラスの靴 価格の差は職人が手塩にかけた時間
頑丈さ、美しさと履きやすさを追求
本格靴とはいえ20万円クラスは高額だ。しかし、英国発祥の代表的2ブランドの製品を探れば、このプライスにはちゃんとした『理由』があると知るのだ。
「他の既製靴との価格差は1足に費やす時間の差にあり」
丁寧な作りが履きやすさ、堅牢性、美しさをもたらす
多くの一流企業人に愛用されるジョン ロブとエドワード グリーン。既製靴でありながら、ブランド力、価格ともに他とは卓抜するその理由を調べたところ、一般的な靴に比べ、1足に費やされる製作時間が圧倒的に長いという事実が判明した。
突出した革の品質で知られるジョン ロブだが、元来はビスポークのブランドであり、既製靴においてもビスポーク由来の高い技術と手の込んだ製靴法を取り入れ、1足に平均5日以上の時間を要する。
「ヒールカップの芯材は濡らした月型の革を木型に吊って、ドライヤーは使わず、ゆっくりと自然乾燥させます。それにより型崩れしにくく仕上がります」(ジョン ロブ 丸の内店 スーパーバイザー 国本憲俊さん)
内踏まずやヒールなど要所に厚い補強材
芯材に対するこだわりはエドワード グリーンも同様。トウ、内踏まず、ヒールなど要所に厚みのある補強芯を仕込むことで、重量は多少増しても、確かな保形性を優先させている。
「私どもの木型はいずれも人の足形に適った形状ですが、靴をこうした複雑な形にするには、革の良さとともに手仕事による丁寧な吊り込みが必要」(エドワード グリーンブランドマネージャー 山西謙次さん)
このように時間と手間を惜しまず作られた20万円クラスの靴は履きやすく、堅牢で、かつ佇まいが美しい。それが真の"一流"を心得る企業人に熱心に支持される理由なのだ。
>>> 次ページから「ジョン ロブ」と「エドワード グリーン」の靴作りの技をご紹介
JOHN LOBB/ジョン ロブ
英国靴の端正とユーロ的な洗練を兼備するジョン ロブ。この2型ではスマートなエッグトウの木型「7000」採用。シューツリー付属。
左:パンチドキャップトゥの名品「フィリップ2」。23万円
右:アッパーに切れ目がないサイドモンク「スワイア」。パラジウム仕上げのバックルも超美。全てグッドイヤー製法。25万円(以上ジョン ロブ ジャパン)
【Detail】
吊り込み後、一晩革を寝かせてアッパーを成型
一般的なアッパー成型は短時間で済まされるが、ジョン ロブではハンドラスティング(写真)後、最低でも1日以上寝かせる。革がしっかり成型されて型崩れしにくくなるのだ。
十分な検品が最高峰の革の質を保つ
各一流タンナーからトップグレードのみを仕入れ、職人が厳格に検査。肌目の細やかさや繊維の向きなどを見極め、傷などが全くない部分のみを使うという徹底ぶりだ。
EDWARD GREEN/エドワード グリーン
英国の良心を体現するモノ作りを堅持する名門の2作。
左:人気のセミブローグ「アスキス」。木型「888」は細身だが、甲幅にややゆとりあり。15万2000円
右:新作「セルウィン」はレース付きながら、サイドエラスティックも備えるユニークなレイジーマンモデル。木型「82」採用。全てグッドイヤー製法。17万円(以上エドワード グリーン 銀座店)
【Detail】
ソール交換にも配慮した超絶的な底付けの縫製
グッドイヤー靴では出し縫いがすくい縫い(写真)と重なって針穴を拡げて、オールソールを難しくする。が、エドワード グリーンの底付けでは、その重なりが全くないのだ。
芯材2枚を仕込み、内踏まずを快適&しっかりと保持
内踏まず部分では、革を強いテンションで吊り上げて成型。しかも、実はその部分に革とコットンの2枚の補強芯を仕込むことでフィット感を高め、かつ変形を防いでいる。
※表示価格は税抜きです。
撮影/平井敬治、宇田川 淳、植野 淳、村上 健、岡田ナツ子、武蔵俊介、久保田彩子 スタイリング/武内雅英(CODE) ヘアメイク/勝間亮平(MASCULIN) 構成・文/POW-DER 文/竹石安宏、吉田 巌(十万馬力)、山田純貴、安岡将文、間中美希子、秦 大輔 撮影協力/モルテーニ東京
[MEN'S EX 2018年2月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。