便秘解消に前進? 初のガイドラインの気になる中身

日経Gooday

最近はエビデンスのある治療薬も登場している。重症化する前に適切な治療を受けてはどうだろうか。写真はイメージ=(c)Nongnuch Leelaphasuk0-123rf
最近はエビデンスのある治療薬も登場している。重症化する前に適切な治療を受けてはどうだろうか。写真はイメージ=(c)Nongnuch Leelaphasuk0-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

トイレに行った後もすっきりしない、便がたまっておなかが痛くなる……。便秘は若い女性だけでなく、60歳以上の中高年の男女が多く悩まされている症状だ。「たかが便秘」と放置していると生活の質を落とし、命の危険につながることもある。

便秘の治療薬を販売するマイランEPD合同会社は、2017年11月22日に慢性便秘症についてのメディアセミナーを開催。2017年10月に日本で初めて作成された便秘のガイドライン、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」の作成に携わった横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳氏が講演を行った。その中から、便秘の現状と治療のポイントを紹介しよう。

便秘は「回数」だけでは決まらない

若い女性に多いというイメージがある便秘。しかし歳を取るにつれて、男女ともに便秘に悩む人が増える。2013年の国民生活基礎調査によると、80歳以上では10人に1人以上が便秘の症状を抱えている(図1)。「便秘は60歳以下では女性に多いのですが、60歳を超えると男女ともに増えて、男女差がなくなってきます。介護が必要になったことをきっかけに便秘になる方も多く、今後高齢化が進むと、ますます便秘で悩む患者さんは増えるでしょう」と中島氏。

50代までは女性に多いが、60歳を超えると男女ともに増えて、男女差がなくなっていく。(日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編「慢性便秘症診療ガイドライン2017」より、データ出典:厚生労働省平成25年「国民生活基礎調査」)

そもそも便秘とはどのような状態なのだろうか。2017年10月に日本で初めて作成された「慢性便秘症診療ガイドライン2017」(日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会・編)では、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されている。

この「十分量かつ快適に排出できない状態」には、大きく分けて2つのタイプがある。一つは、排便の回数や量が少ないため、便が腸の中に滞ってしまうタイプ。もう一つは、量や回数は問題ないが、便が快適に排出できず、残便感があるタイプだ。

便秘とは……
本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態
(以下のタイプに分けられる)
(1)排便の回数や量が少ないため、便が腸の中に滞るタイプ
(2)量や回数は問題ないが、便が快適に排出できず、残便感があるタイプ

よくある誤解は、「排便の回数が多ければ、便秘ではない」というものだ。毎日出ていても、便が硬いと力んでもすっきり出せない。このように出すときに不快感があったり、出した後に残便感があったりする場合も実は便秘といえる。中島氏は、「便が硬いと一度に出せないために、1日に何回もトイレに行く人がいます。すると、医師によっては、排便の回数だけに注目して、『便秘』ではなく『下痢』と判断してしまう場合もあります」と話す。

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エビデンスのある治療薬が次々と登場