全国で進む新アリーナ建設 「ぴあ」も音楽専用で参入
2020年の東京オリンピックに向け、関東圏のアリーナ施設や体育館が次々と改修に入り、コンサートの会場不足が音楽業界の大きな関心事となっている昨今。コンサート利用もできる多目的アリーナを新たに建設する動きが全国で広がっている。併せて民間企業の単独主導による音楽アリーナ建設も進み、コンサートの市場環境は大きく変わりそうだ。ちなみに、アリーナとは定員1万~2万人前後の大規模室内競技場のことだ。
自治体が建設を主導する多目的アリーナでは、17年4月に群馬県高崎市に「高崎アリーナ」、11月には東京都武蔵野市に「武蔵野の森総合スポーツプラザ」が開業。19年には東京都の有明や、沖縄県沖縄市、23年には香川県高松市でもオープンが予定されている。
コンサートプロモーターズ協会事務局長の今泉裕人氏は、「福岡や佐賀にも、新規の多目的アリーナ建設の話があり、すべてコンサートや音楽フェスの利用を見越したものとなっています」と語る。
一方、民間企業として初めて単独主導による音楽アリーナを建設するのは、チケット販売などを行う「ぴあ」だ。コンサートの会場不足問題の打開策として、20年春の完成を目標に1万人収容の音楽アリーナを横浜市みなとみらいに建設中だ。不動産会社の「ケン・コーポレーション」も2万人を収容する世界最大級の音楽専用アリーナを23年に、同じくみなとみらいにオープンさせる予定。
これまで公共施設として建築・運営されてきたアリーナ事業に民間企業が参入し始めた理由は、コンサート市場が大きく成長を遂げているからだ。16年の市場規模は約3100億円と、11年の1596億円から5年で約2倍に伸びている(コンサートプロモーターズ協会調べ)。
音楽専用アリーナの利点
収容人数の大きいアリーナの需要も高まっている。ぴあの事業統括担当の鈴木悠太氏は、「3000~5000人収容のホールよりも、1万人規模のアリーナを建設して運営するほうが収益性は高い」という。用途を音楽に限定することで、多目的アリーナでは必須のスポーツ選手用の広い控え室や、ドーピング検査用の部屋などを作る必要がないため、建築費用を抑えられる利点もある。
コンサートに最適化した設計にしたことも、建築コスト削減につながった。ぴあの音楽アリーナは従来の楕円形ではなく長方形にすることで、観客席とステージの距離を縮めて一体感を生み出す工夫をしている。地上4階建てにして座席数を確保するため、全体の床面積も大きく減らすことができた。「同規模施設の有明アリーナと比べると、約3分の1の100億円の予算で建てられる予定です」(鈴木氏)
ぴあの音楽アリーナが成功すれば、続いて参入する企業も今後は増えるだろう。全国で建築が進む多目的アリーナに、民間主導のアリーナが加わり、コンサート市場の伸びは20年以降、加速する可能性がある。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2018年2月号の記事を再構成]
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