ウミガメの99%がメスに! 豪で深刻、海水温の上昇

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/1/20
マレーシア、シパダン島のサンゴ礁で、潮位が下がった間にアオウミガメがひと休み。(Photograph by Mauricio Handler, National Geographic Creative)

だがジェンセン氏は、「気温の変化は驚くほど激しくなっています」と懸念する。「進化とは、何世代もかけて環境に適応していく現象です。50年以上も生きるウミガメにはそれだけ長い時間が必要だというのに、今は一世代の間に環境が激変しているのです」

レイン島だけを見ても、海面上昇で巣に海水が浸入して卵が窒息したり、海岸の浸食で小さな崖ができ、転落したウミガメが裏返ったまま自力で起き上がれずに死んでしまったりする事故が増えている。オーストラリア政府は巨額の予算をつぎ込んで、ウミガメがすみやすいよう島の環境回復に取り組んでいる。

グアム、ハワイ、サイパンでも

世界には7種のウミガメ(アオウミガメ、アカウミガメ、オサガメ、タイマイ、ヒラタウミガメ、ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ)が生息しているが、その全てにおいて、メスとオスの比率が気候変動の影響を受けるだろうと、科学者は少なくとも35年前から予想してきた。卵は気温の変化に極めて敏感で、わずか数度上昇しただけで、オスが1匹も生まれない事態も起こりうる。そうなれば、個体群が全滅する危険性がある。もっと悪いことに、気温が上がりすぎれば、巣の中で文字通りゆで卵になってしまうことすらある。

過去の研究では、過剰な性の偏りは21世紀後半になるまで脅威にはならないだろうという意見が大半で、現実に今何が起こっているのかについての研究はほとんどされてこなかった。2年前に、米カリフォルニア州サンディエゴに生息するアオウミガメの小集団を調査したアレン氏は、65%がメスだったことを突き止めたが、若いアオウミガメだけに限ってみれば、メスの割合は78%にまで増えていた。また、コスタリカのオサガメ、米フロリダや西アフリカなどのアカウミガメにも、メスへの偏りが見られた。しかし、今回のジェンセン氏とアレン氏の研究ほど大規模な個体群を調査した研究はない。

とはいえ、オスの数がどこまで減少すれば危険と言えるのかを判断するのはやはり難しい。答えは、種や地域によって異なる。性を決定する巣の温度も、それぞれの地域の要因に左右される。たとえば、西インド洋の英領チャゴス諸島では、砂の温度を下げる激しい雨や、海辺に生える木々の木陰、そして、そうした海辺からあまり離れられない狭い砂浜など、いくつかの要因が重なってタイマイの性比が健全なレベルに保たれている。逆にカリブ海の島では、森林伐採で砂浜に日陰がなくなり、オスが減少してウミガメが危機にさらされていると科学者は警告している。

アレン氏とジェンセン氏は、引き続き別の海域でも、同様の方法でウミガメの調査を行う予定だ。既に、グアム、ハワイ、サイパンでサンプルを集めている。

「グレート・バリア・リーフの北部は、世界最大のウミガメの個体群がいる場所の一つです。既に数が著しく低下している他の個体群にこの問題を当てはめてみた時のことを想像すると、空恐ろしい思いがします」と、アレン氏は懸念している。

(文 Craig Welch、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年1月10日付]

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