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塩をさかなに日本酒を飲む

さて、話を日本酒に戻しましょう。

この「塩をさかなに日本酒をたしなむ」という習慣がいつから始まったのかを調べてみたところ、少なくともすでに戦国時代には始まっていたようで、特に上杉謙信は酒のさかなに塩、味噌、梅干しなどを好んで食べていたようです。今でこそ塩は当たり前にあるものですが、当時はまだまだ入手が難しい希少品であったことから、塩も、それを大量に使わないと作ることができない味噌や梅干しも、とても貴重だったことが推察されます。

そしてこの習慣は江戸時代になっても続けられ「升」で酒を飲む際には、そのふちに塩が盛られていました。戦国時代に比べたら物資もある程度豊かなになったはずの江戸時代に、なぜわざわざ塩を酒のさかなにしたのかという理由ははっきりとしておらず諸説あるようで、有力なものとして下記の5つがあります。どれか一つが正しいというよりは、これらの理由が絡み合っているのだと思われます。

升酒はふちに塩を盛って

1.塩を口に含むことで酒の味が甘く、うまみを強く感じられるため

2.食事でお腹が膨れると酒の味がわからなくなるため

3.塩の塩分によって喉が渇くので酒をより飲みたくなるため

4.日本酒には甘味、うまみ、酸味、苦味が含まれており、そこに塩のしょっぱさが加わることで五味がそろい味わいのバランスが良くなるため

5.一般庶民の食生活はまだまだ質素なものであり、潤沢に酒のさかなを用意できなかったため

かつて、酒は量り売りで買うものだった=photoAC

その後、瓶詰の日本酒が主流になる昭和中期ごろまでは、角打ち(かつて、酒屋の一角で量り売り用の升で店頭の客に味見をさせたことから派生した、現代にも伝わる立ち飲みスタイル)で酒を提供する際に、酒の味を引き立たせる塩がさかなとして使用されていたそうです。

時代の流れとともに日本酒の消費量が下降し、角打ちも減少するにつれ、この習慣は徐々に廃れていきましたが、ここ数年になって、この「塩をさかなに日本酒をたしなむ」という楽しみ方が逆に「通っぽい」「粋だ」「酒の味がよくわかる」ということで、再び脚光を浴び始めています。

塩比べは「杜氏の晩酌 純米 吉乃川」のぬるかんで

前置きが色々長くなってしまいましたが、今回は、「日本酒に合う塩」をいくつかご紹介したいと思います。日本酒といっても色々ありますが、まだ寒い時期なので、かんに適したうまみや酸味が強めの、しっかりしたボディーの純米酒がおすすめ。

今回は、幅広い温度帯に対応してくれる「杜氏の晩酌 純米 吉乃川」(新潟県長岡市)を選び、温度はぬるかんにして、相性の良いタイプの違う塩を5つセレクトしてみました。どの塩を合わせるかによって引き出される日本酒の味わいも変化しますので、ぜひ色々試してみてください。

新潟県産の海水塩「塩の花」

日本酒の味わいと同化してうまみを全体的に引き上げてくれるのが、「杜氏の晩酌 純米 吉乃川」と同じ新潟県産の海水塩「塩の花」。名勝としても名高い笹川流れの海岸沿いに建つ製塩所で、目の前の海でくみ上げた海水を、薪で炊いた平釜でコトコトと15時間火にかけて結晶化させています。

その中でも一番最初に結晶化してきたフレーク状の塩だけを採取したこの「塩の花」は、最初はあまり味を感じないものの、酒や唾液で溶けるにつれて適度なしょっぱさや苦味、酸味を順に感じます。それが、日本酒の味の変化とマッチするため、最後まで濃厚なうまみを楽しむことができます。粒が大きくフレーク状なので、カリッとした食感も楽しめます。

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