グルメクラブ powered by 大人のレストランガイド

World Food Watch

第二の人生、シチリアでワインと生きる 駐在員の挑戦

2018/1/4

2010年夏、シャープの太陽電池事業のためにイタリア南部のシチリア島に赴任した西川恵章さん(66歳)は、そこでふとしたきっかけから同地のワイン畑を購入することになった。ここから定年後も見すえた西川さんの新しい挑戦が始まる。

真っ青な空が頭上に広がり、まばゆいばかりの陽光が大地を照らすシチリアの夏。西川さんは、ある週末、住まいから車で1時間ほどの島東北部のエトナ山北麓の町ランダッツォの青空市場を夫人と歩いていた。

活火山として知られるエトナのこの周辺はワイン造りで知られる地域だが、ふと目に入ったのが市場を開催している広場に隣接するワイン販売店だった。

「ちょっと、飲んでいこうか」

そうやってなんということもなく入った店が、彼の人生を大きく変えた。

ワイン販売店にはテーブル代わりのワインたるが置かれ、何種類ものワインをグラスで飲むことができた。あるワインを飲んだとき、「これはおいしい」と西川さんは思わず声を上げた。赤ワインの代表的な品種の一つであるピノ・ノワールのような華やかな香りと味わいを持つシチリアの地ブドウ、ネレッロ・マスカレーゼを使ったワインだった。

西川さんは、様々な品種をブレンドしたものではなく、「ブドウの本当の良さがストレートに出ると感じる」単一品種のワインが好きだったが、そのワインはこれまで飲んできた同品種のブドウに比べ特に味わいが優れ、その良さがよく表れているように思えたのだ。

「ここの畑、今売りに出ているんですよ」とイタリア人の店主が声をかけた。ほんの軽い世間話のつもりだったのだろうが、西川さんの心は大きく動く。

売りに出ていたワイン畑は、エトナ山の北側斜面にあるパッソピッシャーロという標高約700メートルの村の近く。火山灰性の灰色の土をした1ヘクタールの小さな畑だった。

エトナ山北側中腹にある西川さんの畑 標高が高く寒暖差が激しい土地だ

近くには、村の名前を冠した有名ワイナリーもある。西川さんは、日頃から「良いワインを造るのは、土地の力がすべて」と信じていたと言い、「良いワインを造る畑に出合えた」と、これを買うことを即決した。2013年7月、西川さんが62歳のときのことだ。

ワイナリーは、「テラ デッレ ジネストレ」と名付けた。イタリア語でテラは大地、ジネストレはエニシダ。畑の近くの大自然でたくましく育つエニシダのように繁栄していきたいという思いから付けた名前だという。

実は西川さんは2010年、イタリアに赴任したころから漠然と「そのうちワイナリーを経営してみたい」と思っていたという。「でも、もともとは、ワインに限らず単にお酒が好きだったんです」と笑う。ただ、スペイン、米国などワイン造りで知られる国々へ赴任するうち、次第にこの酒に魅了されていった。

グルメクラブ 新着記事

ALL CHANNEL