子どもの近視に予防の可能性 外遊び2時間で発症減

日経BP総研マーケティング戦略研究所

写真はイメージです=PIXTA
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近視はこれまで病気ではないと思われていたが、近年失明のリスクにつながることがわかってきた。近視は一度なったら戻らないため、子どもの頃の対策が重要になる。「バイオレット・ライト」を浴びることや「クロセチン」という抗酸化成分を摂取することが近視の予防に役立つ可能性があるとの研究結果も出始めており、今後、関連する市場が活性化しそうだ。

「ついにうちの子も近視か。でも病気じゃないし、メガネやコンタクトレンズで対策できるから、そんなに心配しなくてもいいかな」。学校の健診などで子どもが近視だといわれたら、あなたはこんなふうに軽く考えるのでは?

「近視は、一部の病的近視を除いて病気ではない」――。これまでは、日本の眼科医も含めて、こうした認識が一般的で、積極的に治療する研究などもあまり進んでいなかった。近視は学齢期には進行するが、ある年齢になるとほとんど進まなくなると考えられてきたからだ。しかし近年、そうではないことが分かってきた。近視が進行して視覚障害になる人が増えていることが明らかになってきているのだ。

2050年に9億3800万人が失明リスク

子どもの近視は増えているだけでなく、低年齢化も進んでいる。文部科学省の学校保健統計調査によると、裸眼視力0.3未満の小学生は、2017年の速報では8.7%、高校生になると33.9%で、約35年間で小学生は約2.8倍、高校生は約1.3倍に増えている。

世界的にも近視の急増は問題になっている。オーストラリアのブライアン・ホールデン研究所の予測では、2010年には19億5047万人だった世界の近視人口は、2050年には47億5769万人に達するという。また、2050年には世界中で9億3800万人が失明するリスクのある強度の近視になるとする。ちなみに、日本の近視人口は2010年の6198万人から、2050年には7209万人になると推計されている。

いまや、「たかが近視」と軽視できない状況を迎えている。

図1 裸眼視力1.0未満の子どもの割合。近視の割合は年々増加しており、低年齢化も進む。(学校保健統計調査、文部科学省)

こうした事態を背景に、眼科医の間にも危機感が広がり始めており、近視の予防に関する研究にも力が入るようになってきた。

外遊びに近視を抑える要因が

いま、近視予防の研究者の間で注目されているのは、「外遊びの時間が長い子どもは、近視の発症率が低い」という事実だ。

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紫の可視光線が近視の進行を抑える