健康・医療

日経実力病院調査

白内障、緑内障と同時手術 総合病院は難症例に対応 実力病院調査

2017/12/25

 目の中でレンズの働きをする水晶体が濁って見えにくくなる白内障は、加齢に伴い誰もがなりうるとされる。全国で年間140万件以上の手術が行われ、最も件数が多い外科手術の一つだ。日本経済新聞社が実施した実力病院調査では、上位の病院は白内障に加えて糖尿病網膜症や緑内障など他の目の病気も一緒に治療し、実績を上げていた。

白内障だけならば日帰り手術も可能だ(倉敷中央病院、岡山県倉敷市)

 白内障は水晶体を構成するたんぱく質が変性し、白色または黄白色に濁ってしまう病気。水晶体を通る光が妨げられて視力が下がったり、光をまぶしく感じたりする。大半は加齢に伴うもので、厚生労働省研究班の報告書によると、水晶体の混濁は50代で37~54%、60代で66~83%、70代では84~97%、80歳以上は100%で起きていた。

 白内障の治療は、角膜を小さく切開して超音波を出す器具を入れ、細かく砕いて吸い取る「超音波乳化吸引術」を行い、水晶体の代わりとなる「眼内レンズ」を入れるのが一般的。白内障だけの手術であれば10~20分で終わり、日帰りも珍しくない。診療所で多くの手術が行われる一方、紹介患者が中心の大病院では白内障以外の目の治療も必要となるなど難しい症例を扱うケースが目立つ。

■高齢化で患者増

 今回の調査で2015年4月~16年3月の「手術あり」症例が4435件と全国首位の大阪労災病院(堺市)。白内障に加えて、糖尿病が原因で目の奥にある網膜に障害が起きる「糖尿病網膜症」や、網膜の中心部の黄斑に障害が生じて見えにくくなる「加齢黄斑変性」などの「硝子体手術」を同時に行うことを得意としている。

 高齢化に伴いこうした患者は増えている。両方の手術を同時に行う場合、まずは超音波を使って水晶体を除去し、その後、硝子体手術に移行する。最後に眼内レンズを入れれば手術は終わる。

 全国に白内障の手術を行う眼科医は多くいるが、硝子体手術を専門とする眼科医は少ない。同病院は16年度に1240件の硝子体手術を行っており、豊富な実績で患者が集まってきているという。恵美和幸副院長は「目の全体の状況を適切に把握し、治療を行わないと視力は回復しない。患者の負担や社会復帰の早さを考えれば、目の手前と奥を同時に手術した方がよい」と強調する。

 大学病院の中で、全国一の「手術あり」の症例数1831件を誇る北里大学病院(相模原市)は、白内障と緑内障の同時治療を得意とする。緑内障は失明につながることもあり、日本人の中途失明の原因として最も多い。

■ベテランが執刀

 緑内障は目の中の液体「房水」がたまって眼圧が上昇することで起きる。目薬で眼圧を抑えながら白内障の手術を行う患者がいる一方で、両方を同時に手術するケースも高齢者の増加とともに増えている。

 この場合、同病院では電気メスで切開する「トラベクトーム」と呼ぶ手術器具を使って、白内障の手術中に房水の流れをよくする「流出路再建術」を行う。緑内障の治療で使う目薬の種類を減らすことができる可能性があるという。庄司信行主任教授は「同時手術は難易度が上がるので、ベテランの医師が行うことが大半」と話す。

 中四国で多くの手術件数を誇る倉敷中央病院(岡山県倉敷市)も、難症例の患者を積極的に受け入れている。水晶体を支える「チン小帯」が脆弱であったり断裂したりしている患者の白内障手術は、合併症の発生頻度も高く、難易度が上がる。こうした患者には「カプセルエキスパンダー」と呼ぶ器具を使って、水晶体が入る袋を安定させて手術を行う。白内障が極度に進行していたり、眼球が小さかったりする患者の手術も難しいという。

 眼科の岡田守生主任部長は「目の病気だけでなく、認知症など様々な病気を持つ患者に対応している」と話す。白内障の手術は局所麻酔が一般的だが、認知症患者などは全身麻酔で行うこともある。様々な病気を持つ患者に対応できるのが総合病院の強みだという。

■眼内レンズ、医師と相談 単焦点は保険適用

 白内障手術では水晶体を取り除くため、代わりに眼内レンズを挿入する。基本的には健康保険が適用される「単焦点」を使う。焦点の合う距離が1カ所であるため、例えば遠くにピントを合わせた場合、本を読むときには眼鏡が必要になる。

 一方、遠近両方でピントが合う「多焦点」の眼内レンズもある。レンズは保険適用外だが、先進医療の対象であるため、検査費などは保険が適用される。手術後、眼鏡なしで生活できる人もいるが、夜間に車のライトがにじんで見えることもある。

 左右の目の焦点を変える方法としては「モノビジョン法」もある。単焦点の眼内レンズを使い、片目を遠くに、もう片方を近くに焦点を合わせる。北里大病院の庄司信行主任教授は「慣れない人もいるので、医師とよく相談してから決めるべきだ」と話している。

 ▼調査の概要 調査は、症例数(診療実績)、医療の質や患者サービス(運営体制)、医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、日経リサーチに依頼してインターネット上の公開データから抽出して実施した。
 診療実績 厚生労働省が2017年2月に公開した15年4月~16年3月の退院患者数を症例数とした。対象は病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1667病院のほか、導入準備中などを含め計3191病院。症例数の後の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
 運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の後に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
 施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。16年10~12月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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