宴会シーズンに増える急性膵炎、原因の第1位は?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)男性はアルコール、女性は胆石が最多
(2)男性は胆石、女性はアルコールが最多
(3)男女ともにアルコールが最多
(4)男女ともに胆石が最多
正解は、(1)男性はアルコール、女性は胆石が最多 です。
膵液が膵臓自体を溶かす病気
膵臓はおなかの中央から左後ろあたりに存在する、全長10~15cmの臓器で、インスリンというホルモンを出して血糖を下げたり、膵臓の管(膵管)から消化酵素を含む膵液を出す働きがあります。
急性膵炎は、膵液が膵臓自体を溶かしてしまう病気です。何らかの原因で膵液の流れが悪くなって膵管が閉塞すると、膵液は膵臓自体に向かいます。すると、膵液に含まれる酵素が膵臓や膵臓の周囲の組織を溶かし始めるのです。「行き場がなくなった膵液は膵臓の外にもあふれ、血液中にも入り込みます。こうして起こる急性膵炎は『おなかのやけど』と言われるほど、ひどい炎症を起こします」と、東京医科大学消化器内科学分野主任教授の糸井隆夫氏は話します。
原因は性別によって異なります。「男性はアルコール、女性は胆石が第1位です(図)。ベースにあるのは、食生活の欧米化です。脂っこいものを食べながらアルコールを過剰に摂取すると、それに対処するために膵液がたくさん分泌され、膵臓への負担が増します」(糸井氏)。

胆石とは、胆汁に含まれる、コレステロール、レシチン、胆汁などのバランスが偏った結果、胆のう内にできる結石で、その大半は脂っこいものの摂取から起こるコレステロール結石です。その石が胆管を経て膵管との合流部に届くと、膵液の流れが悪くなって閉塞してしまいます。
急性膵炎は、男女いずれもアルコールを原因とすることが多いため、年末年始や春の宴会シーズンは要注意です。お酒や脂っこい料理を食べる機会が多い季節は、急性膵炎が増える傾向があります。
急性膵炎の痛みは猛烈で、みぞおちの痛みとあわせて、背部痛もみられます。「おなかと背中の両方が痛くなる病気は、膵臓以外の病気ではなかなかみられません。中等度~重度になると七転八倒する痛みになり、エビのように、おなかと膝をくっつけてうずくまる体勢を取らざるを得なくなるほどの強い痛みです」(糸井氏)
治療には絶飲・絶食が基本で、軽症でも7~10日の入院が必要となります。重症化すれば10人に1人は死亡する、恐ろしい病気です。通常の健康診断で急性膵炎の前兆を把握することは難しく、「膵臓を酷使しないために、アルコールや脂っこい食事を大量に摂取しないこと。これが一番の予防です」と糸井氏は話しています。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday 2017年12月4日付記事を再構成]
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