「ファッションが変われば、ビジネスが変わる」――。アサヒグループホールディングスの会長兼最高経営責任者(CEO)、泉谷直木氏はそう語る。国内外での積極的なM&A(合併・買収)を指揮して業容を拡大するなど、名うての敏腕経営者だが、バスケットボールで鍛えた体格を生かし、装いの随所にこだわりを見せる無類のファッション好きでもある。泉谷氏にファッションとビジネスについて聞いた。
――ファッションにこだわりをお持ちと聞きました。
「余人をもって代えがたい人物になるためには3つの大事なことがあると僕は常々言ってきました。『ミッション(使命感)』と『パッション(情熱)』、それに『ファッション』です。ファッションは装い方だけでなく、自分の流儀やスタイルも含みます」
「身だしなみとは身を嗜(たしな)むこと。とかく常識的なものに捉えられがちですが、嗜みとは本来、好みとか趣味のこと。つまりその人に合った嗜みであり、自己主張や自己実現につながるものなのです」
■ファッションで大事なのは自分をきちんと見せること
「ファッションでまず大事なのは自分をきちんと見せること。そのために第一印象は重要です。清潔感は欠かせません。装いには自然と人柄やしゃれ感、こなれ感もにじみでます」
「BtoB(企業間取引)かBtoC(消費者向け取引)かなど業種によっても、装い方は多少違いがあるとは思いますが、いけないのは相手に威圧感を与えたり、軽薄な印象を与えたりするファッション。自分で表現できる範囲はどこまでかをきちんと考え、決める必要があります」
「装いの理想は相手から親しまれるもの。それはいつも『地味ならいい』とは限らない。ファッションは単に着ている物ではなく、その人のスタイルを表しているのです」