――同じようにデザイナーに依頼してもうまくいかないケースも多いかと思います。理由はなんだと思いますか?

「おそらく、モノのデザインだけを頼むからじゃないでしょうか。デザイン以前の会社の歴史や考え方、コンセプトの方が重要で、モノだけデザインしてくださいと頼んでも、とっかかりがなくて困ってしまうのだと思います。特に現代はモノよりもその背景が重要な時代になってきていますから、なおさらです」

「SIWA」の製品には数々の入賞・表彰の実績がある

「私にとっての商売の原点は何かといえば、やはり父親です。紙に対する姿勢を見て育っていますから、それが歴史となって染みついている。深沢さんに依頼するときも町や工場を案内し、その地域性や歴史を十分に説明した上でお願いしています」

一番のハードルは資金だった

――事業化する上で、一番のハードルは何でしたか?

「資金面でしょう。大企業を相手に仕事をしている深沢さんが我々のような中小企業の仕事をやってくれるのかと不安でした。ただし、この点に関してはタイミングもよかったと思います」

「我々がSIWA事業に着手する少し前、いわゆる地域資源法が制定され、中小企業が地域産業資源を活用して事業をする場合、補助金が支給されることになっていました。最初に深沢さんと面会した時点ではまだ、そんな制度があることを知りませんでしたが、動いているうちに制度のことが耳に入り、運よく1回目の認定企業に応募して申請が通りました」

「深沢さんが山梨県の出身であることはもちろん知っていました。中小企業とデザイナーが組んで地場産業を盛り上げていくシナリオはおそらく制度が想定していたケースそのものだったとは思いますが、最初からそれを意図していたわけではありません」

――SIWAのブランド名はどのようにして決まったのでしょうか?

「私たちのほうでもいくつか名前の検討はしていたのですが、突然、深沢さんから『SIWAという名前はどうでしょうか?』と電話がありました。とっさに顔のしわが思い浮かび、最初は『うーん』と思ったのですが、『漢字で書くと紙の和で、逆さまにすると和紙になる』と聞いて一気にイメージが膨らみ納得しました」

「海外の方はもちろん、SIWAの素材が障子紙だとは知りません。それでも『日本らしさ』は十分に感じるようです」

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かつてはブランドだった市川和紙
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