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ドラマの着こなしに学ぶ スタイリングの舞台裏と極意 カリスマ・ドラマスタイリストの西ゆり子さんが指南

2017/12/6

西さんが提案する「コンサバ」(中)「エッジ」(右)「華やかさ」の3つのキーワード別に展示されたコーディネート(東京・銀座)=主催社提供

 読者の多くは、テレビドラマを見ながら「あの女優さんの着こなし、ス・テ・キ」と目を奪われた経験をお持ちだろう。私の場合、特にはまったのは、2010年のドラマ「セカンドバージン」(NHK)の主演、鈴木京香さんのファッションだ。「バリキャリのイイ女」のお手本のようだった鈴木さん演じる出版プロデューサー「中村るい」のファッションはちまたで話題となり、NHKもホームページ上で特集を組んだほど。私はそのコピーを今でも大事にしている。

 彼女のスタイリングを手掛けた西ゆり子さんは、テレビ番組のスタイリングの草分け的存在で、担当したテレビドラマは約40年間で100作品を超える。その西さんが初めての個展を先日、東京・銀座で開いた。ドラマの実際のコーディネート写真に添えられた西さんの解説や、来場者とのワークショップを通じて、私たちも応用できる着こなしの知恵が数多く披露された。「着こなせない服なんて、ありません!」と言い切る西さんのスタイリング術を6つのTipsにまとめてみた。

西さんがテレビドラマでスタイリングしたコーディネートの写真が壁面に展示されていた(東京・銀座)
ワークショップでスタイリングの「バランス」について参加者と対話する西さん(東京・銀座)

■Tips1 スタイリングの組み立ては「コンサバ」が基本

 ドラマでは「できる女」もいれば「嫌われる女」も登場する。あらゆる人物のキャラクターをファッションで表現する際に西さんはまず、「コンサーバティブ」(コンサバ)を基本に考えるという。

 西さんが定義するコンサバとは「いろいろな人が試行錯誤し、長い年月をかけて生き残った伝統の美しさであり、永遠の美しさ」。「すべてのスタイリングの基本にあるもの」と語る。

 「セカンドバージン」の鈴木さんの衣装はイタリアのブランド、マックスマーラが中心だったが、「まさにコンサバの美しさが表れていた」とのこと。確かに「中村るい」は、奇をてらったデザインの服は着用せず、タイトスカートやカシュクールブラウスといった、流行に左右されないオーソドックスなファッションだったことが印象に残る。

■Tips2 「エッジ」で個性を演出

 ドラマの登場人物には「個性」も必要だ。西さんは、伝統美とは真逆の「現代的な要素」を「エッジ」と呼び、コンサバのスタイリングに加味することで、個性を演出していく。「コンサバを崩すことで、ファッションに違和感が生まれます。『どこかが変な感じ』。それがエッジです」(西さん)

 しかし、下手をすると「どこかが」を通り越して「まったく変な感じ」になってしまいかねない。西さんは「エッジを効かせるところは1カ所。何でも派手にすればいい、ということではありません」とアドバイスする。

 たとえば、これからのクリスマスシーズンに出番が多そうな赤いワンピースのように、全身の面積を大きく占める色が派手な場合は「あまりいろいろなものを加えないのが鉄則。靴まですべて赤のワントーンでまとめ、大きなアクセサリーでエッジを効かせる」といいそうだ。

■Tips3 「華やかさ」で存在感を示す

 コンサバとエッジに加え、西さんは「華やかさ」を3番目の要素としてスタイリングに取り入れている。「華やかさは存在感ともいえます。エッジとともに調整することで、キャラクターの個性をさらに際立たせます」(西さん)

 会場では華やかさのスタイリングの実例として「白」を基調としたコーディネートが展示されていた。西さんによると「冬の白は新鮮みがあり、おしゃれ度の高いコーディネート」だという。

 華やかさを、光で表現する方法もある。16年のドラマ「リテイク」(フジテレビ)の衣装の中で、黒、ベージュ、グレーといった落ち着いた色合いながらも、スパンコールが光るワンピースが写真パネルになっていた。その解説には「『地味だけど派手』。これこそおしゃれの極意」とあった。

 この「コンサバ」「エッジ」「華やかさ」の3つのキーワードを私自身の日常に応用してみた場合、普段は「仕事ができる記者」に見せたいので、コンサバ85%、エッジ10%、華やかさ5%くらいがちょうどいいかもしれない。ただ、パーティーのようなハレの場では、エッジと華やかさとの割合を逆転させようか、それともコンサバの割合を減らそうか。

 スタイリングの際の指標ともいえる3要素を知ったことで、毎日の服選びの時間が短縮。さらに「場違いな感じ」も減った気がする。

西さんがテレビドラマでスタイリングしたコーディネート写真パネル(東京・銀座)

■Tips4 体のラインにつかず離れず

 ワークショップの参加者から、こんな質問が出た。

 「体形が分かるのが嫌なので、オフの時にはチュニックにスパッツといった格好が多いです。おしゃれに見せるコツはありますか」

 西さんは、この参加者が着ていたチュニックの背中を少しつまんでみせた。一堂、異口同音に「痩せてみえる!」。

 「いくら体のラインを見せたくないからといって、大きすぎる洋服は、かえって太く見えます。体につかず離れずの服が体形を細く、きれいにみせますよ」と西さん。参加者のチュニックはボックスシルエットで、体形に比べ少し幅がありすぎたようだ。

 それにしても、ほんの数センチのことで、ここまで印象が変わるとは、驚きだ。西さんは続けて「体にピタッとするストレッチ素材のボディコンシャスなものは、布地が伸びるので着ることができてしまうと思いますが、きれいには見えないので大人の女性にはすすめません」。ストレッチ素材も要注意だ。

■Tips5 どこかに女らしさを

 17年のドラマ「突然ですが、明日結婚します」(フジテレビ)で主演した西内まりやさんの役柄は「大手銀行の外商部につとめる女性」だった。その通勤着のコーディネート写真には「メンズライクなパンツスーツですが、揺れる素材のブラウスで女性らしさを演出」との解説文が掲載されていた。

 「色気のない服は面白くないでしょ」と笑って語る西さんだが、ワークショップの最中、「あなた、色気がないわよ」とダメ出しされた参加者がいた。西さんのアドバイスで、ブラウスの襟元にあるリボンを外し、袖口のボタンもあけて、袖をまくったところ……。

 胸元にV字ができ手首が見えたことで、いわゆる「抜け感」が生まれた。明らかに「女性らしい」感じになり、参加者から大きな拍手が起きた。「体のどこかを出すこと」がポイントだ。

ワークショップで西さんから「色気がない」とダメ出しされた参加者。写真左は西さんからのアドバイス前。写真右は西さんからのアドバイス後。「女っぽさアップ」に他の参加者から拍手が起きた(東京・銀座)

■Tips6 バランスを味方に着こなす

 「着こなせない服はない」が持論の西さんは、成功のためのポイントとして「バランス」を挙げる。たとえば「素材」。冬場にウールのパンツにシルクのブラウスを組み合わせたい場合、「ウールとシルクの素材の違和感でバランスが悪くなる」(西さん)。しかし、ブラウスの中にウール素材の薄手のニットを着ることで、ボトムスのウールとトップスの素材との一体感ができ、バランスがとれたスタイリングとなる。

 また、「色」のバランスも大事だ。基本は「メインの服のどれか1色を取って組み合わせるときれいにまとまる」が、ドラマで個性的なキャラクターを表現したいときは「あえて意表を突いた組み合わせ」をするそうだ。

 大阪からワークショップに参加するために上京した伊井香代美さんは、大阪文化服装学院の教員だが、「西先生の話は具体的で勉強になった。すぐにでも授業に生かしたい」と満面の笑みで会場を去った。

◇  ◇  ◇

 西さんのスタイリングに対する「思い」は尽きない。私が印象に残ったのは「洋服を着て楽しいと思えなければ、着ない方がまし」という発言だ。西さんは、着る服を前日の夜には選ばず、その日の朝に決めるそうだ。「当日の天気や自分の気持ちを考え、一日中、気持ちよくいられるスタイリングを考える」とのこと。「そうすることで、自分のファッションの感性も磨くことができますよ」

 西さんは「着るということは、自らを表現することであり、その人の人生そのもの」との信念を持っている。「では、私を表現する服はどんな服だろう」。ふと、考えていると、「1年後、5年後、10年後の自分はどうなっていたいか。そう逆算をしてみるといい」とアドバイスをくれた。

 そういえば、ドラマで「未熟なキャリア女性」を表現するときには「ガウチョパンツやフリル、レースなど、すべて流行のもので組み合わせ、おしゃれが大好きだけど自分の中にしっかりとした軸ができていない女性」をイメージしてスタイリングしたと、写真パネルに書いてあった。

 西さんの取材を終えて以来、ジャケット1つ選ぶにも、将来の自分の姿とキャリアの軸を考える今日このごろだ。

西ゆり子さん
 1950年生まれ。雑誌や広告を手がけた後にテレビに進出。ドラマやCM、映画での洞察力あふれるスタイリングは高い評価を得ており、近年の作品に「セカンドバージン」(鈴木京香)、「ファーストクラス」(出演者全員)などがある。最新作は映画「探偵はBarにいる3」(北川景子)。

(編集委員 木村恭子)

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