「日本一の体育祭」の湘南高 東大のエース宮台投手も湘南高校の稲垣一郎校長に聞く

「湘南の教員には気合いが必要。新しく赴任してきた先生には過去の教え方は捨ててくださいといいます。高いレベルの授業が求められ、アクティブ・ラーニング(能動的な学習)は当たり前。一方、行事になると、生徒が主体で先生はサポート役に徹する必要があるのです」(稲垣校長)

東大合格者は回復傾向だが

授業ではアクティブ・ラーニングが当たり前=湘南高校提供

17年の合格実績は東大は18人、東工大13人、一橋大6人、京都大学5人。国公立大学の合計合格者は156人だ。1970年代には東大に70~80人が合格してベストテンの常連校だっただけに、もの足りない数字だ。神奈川県では栄光学園や聖光学院など中高一貫の私立男子校が台頭して公立高が低迷、「湘南の東大合格者は、2000年代初頭には1ケタ台にまで落ち込んだが、その後、学校改革を推し進めて20人前後にまで回復した。だが、まだこれからだ」と稲垣校長は強調する。

東大合格者でみると、今年、ライバルの神奈川県立の横浜翠嵐高校は16年の20人から34人と躍進した。首都圏で湘南と同様に文武両道を標榜する埼玉県立の浦和高校は32人、都立西高校は27人。湘南、浦高、西高の3校は海外研修や対抗戦、ディベート大会など交流を深めており、切磋琢磨(せっさたくま)する関係だ。稲垣校長は「現在の生徒の能力なら、湘南は30人近くまではいけると考えている」という。

進学実績向上のため、模試の積極導入のほか、今年から高3に対して図書館を21時20分まで開放することにした。下校時間は19時30分だが、学校側に登録した受験生には延長が認められる。すでに約360人のうち150人強が登録、放課後の図書館は熱気に包まれているという。

湘南高校の稲垣一郎校長

湘南OBは多士済々だ。校内にはOBが運営する「湘南高校歴史館」があり、その中には著名OBの人脈地図がある。ただ、「湘南出身者は官庁や企業にたくさんいますが、OB会をつくったりせず、群れないといいます。個をしっかり持って自分の意見をいえる人が多いからですが、結局、息が合うのか、仲良くなるらしい」(稲垣校長)。

国際政治研究者で、東京大学政策ビジョン研究センター講師の三浦瑠麗さんは、「湘南時代は、集団行動が苦手で、あんまり授業にも出ず、江ノ島とか、鎌倉あたりを勝手に散歩していました。でも今は湘南の先輩にあたる(外交評論家の)岡本行夫さんによくお世話になっていますね」と笑う。

江ノ島をブラブラ、123位の生徒がノーベル賞学者に

ノーベル賞受賞者の根岸氏。10月20日に母校を訪ねて後輩の前でこう語った。「高1のときは勉強もせず、江ノ島辺りをブラブラしていたら、成績は123位。まずいなと思って勉強して学年で1位になった。東大に入ったが、実は学んだものはなかった。米国に渡って初めてすごいと思った。隣には普通にノーベル受賞者がいる、そんな環境だったからだ。君らも海外に飛び立ちなさい」。湘南は今年、根岸氏が特別教授を務める米インディアナ州にあるパデュー大などで海外研修を実施。40人あまりの生徒が参加した。ほかにも浦高や西高など首都圏の有力公立高校で連携してスタンフォード大など米国の名門大への海外研修もスタートしている。

「もっとも困難な道に挑戦せよ、というのが湘南のモットーです。授業と行事、部活動と3つもやるのは大変ですが、この困難を超えていかないと、国際社会で活躍するリーダーには育たないでしょう」と稲垣校長。文武両道の湘南。新たなグローバル人材の育成に燃えている。

(代慶達也)

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