WOMAN SMART

キャリア

無意識の偏見=アンコンシャスバイアス 女性活躍阻む 企業に対策研修「自覚、慎重な判断生む」

2017/11/28 日本経済新聞 朝刊

仕事における「無意識の偏見」を付箋に書き出し議論するジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループのアンコンシャスバイアストレーニング(東京都千代田区)

 アンコンシャス・バイアス。女性活躍の先進企業で聞き慣れない外来語が関心を集めている。邦訳すると「無意識の偏見」。差別する意図はないのに、生来身に付いた価値観が上司や女性自身の判断をゆがめ、活躍を阻む言動に走ってしまうことだ。無意識ゆえに問題は根深く、対策研修が広がりつつある。

 ◇   ◇   ◇

■きつい仕事はかわいそう?

 「思い込みや先入観なんて持ってないと思っていた」。ジョンソン・エンド・ジョンソン(東京・千代田)の営業部門に勤務する男性管理職(51)は話す。10月中旬に同社の日本法人グループが主催したアンコンシャス・バイアス研修に参加した。参加者同士で語り合っているうちに思い当たることがあった。

 6人の女性部下を持つ。子育て中の女性には無理をさせないように心掛けてきた。「仕事を軽くしてあげた女性社員が不服そうにしていたことがある。そのときは理解できなかったが、今は分かる。『子育て中は大変』という思い込みで、何も考えず負担を減らした。でも彼女自身はもっと仕事をしたかったのだと研修を受けて気付いた」

 同研修を2014年度に始めたきっかけは13年の社員意識調査だ。男性は74%が「管理職になりたい」と答えたのに、女性は35%止まり。この差はなぜ生まれるのか。詳しく分析した結果、アンコンシャス・バイアスが浮かび上がった。

 「重要な仕事は女性に任せられない」といった意識的な性差別はないが、「きつい仕事を任せるのは気の毒だ」といった潜在意識が女性の成長機会を奪い、意欲をそいでいた。「女性活躍を加速するためにも無意識の問題に手を入れようと考えた」と研修の講師を務める同社の村田洋子さんは説明する。

「無意識の偏見」を記入した付箋紙(東京都千代田区のジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ)

 「アンコンシャス・バイアスに欧米企業が着目したのは10年度以降。比較的新しい経営課題だ」とコンサルタントのパク・スックチャさんは話す。在日米国商工会議所が10月に主催した「東京ウィメン・イン・ビジネス・サミット」でアンコンシャス・バイアスを紹介するワークショップを担当した。

 無意識が男女の格差拡大にどう影響するのか。職場で誰かに雑用を頼んだ場合で考えてみる。男性に「今は忙しい」と断られても「仕方ない」と思えるのに、同じように断った女性には「薄情」「冷たい」と感じてしまいがちだ。それは「女性はやさしい」「人の世話を好む」といった先入観の影響だという。

 先入観があると、頼む側は「女性は助けてくれるもの」と期待する。その期待が裏切られたことによる反動で、女性に対する評価が厳しくなる。

 米国ではオーケストラのオーディションで性別が分からないように、ついたてを隔てて演奏してもらった結果、女性演奏者の採用比率が上がった事例が報告されている。無意識で男性には技術があるという思い込みをなくした結果だ。パクさんは「人は客観的に良しあしを判断しているようで、先入観の影響から逃れられない」と強調する。

WOMAN SMART新着記事

ALL CHANNEL