流行:「今」のカルピスであり続ける

カルピスは発売から98年たつが、レトロなイメージに偏らないように気を配っている。目指しているのは、老若男女から愛されているカルピスの温かみのあるイメージを壊すことなく、「今」のカルピスであり続けること。そのため、テレビCMでは、カルピス特有の「家族と作って飲む」というシーンは長年変えることなく続けているが、ディテールは現代風にアレンジしている。例えば、最近は「作ることを楽しみ、その過程や完成品を写真に撮ってシェアする」というSNSの流行を踏まえて、フルーツとソーダを入れてオリジナルのカルピスを作ったり、牛乳と合わせてシャーベットにして食べたり、カルピスの汎用性を伝えている。

テレビCMで紹介したアレンジ方法はホームページで詳しく紹介。「カルピスカフェ」という特設サイトでは、鍋やラーメン、リゾットなどカルピスを調味料として使用するレシピも掲載している。

カルピスウォーターも水玉模様のパッケージでイメージを統一している。だが、希釈タイプの水玉模様より水色が淡く、水玉の大きさも小さい
定番商品の巨峰。イチゴ、メロン、桃、マンゴーなど季節の行事やフルーツの旬に合わせてラインアップ

フルーツ味のカルピスも季節ごとに入れ替えながら販売している。カルピスらしいフルーツ味となるように「懐かしさも感じる素朴な味を目指している」(真鍋マネージャー)。1991年に発売したカルピスウォーターは、ライフスタイルの変化に応じて必然的に生まれた商品だという。「カルピスは家で飲むもの」という概念を覆した。コンビニエンスストアの棚にも並び、ユーザーが目にする機会も多い。若者をターゲットにした広告も、カルピスブランドの鮮度を高める役割も果たしている。

つづく:カルピスに卒業はない

28歳の頃の三島海雲さん

カルピスの創業者、三島海雲さんが目指したのは「国利民福(国家の利益となり、人々の幸福につながる事業をなすこと)」。現在もカルピスでは、「おいしいこと」「滋養になること」「安心感のあること」「経済的であること」という創業者が掲げた4つのポリシーを今も大切に守っている。「この4つの価値をどう伝えていくか。その表現の仕方は時代に合わせて変えている。不況のときは1本あると15杯も飲める、調理にも使える、という打ち出し方をしてきた」(真鍋マネージャー)

4つのポリシーを守り続けた結果、新たに生まれた価値があるという。それは「情緒」だ。「4つのポリシーは、どれも大切な人への思いや家族愛につながることに気付いた。テレビCMでも、必ず家族を登場させている。家族とカルピスを作る豊かな時間を描くことこそ、カルピスらしさと考えている」(真鍋マネージャー)

カルピスは、水で希釈してかき混ぜて飲む「体験」が伴う商品。小さな子どもでもできるため、甘くておいしいカルピスを作った体験は「楽しい思い出」となり味わいと一緒に記憶に刷り込まれる。最近の研究では、希釈して飲むカルピスを親子や兄弟で一緒に作って飲む楽しい体験が、思いやりの心を育み、大人になってからの幸福度が高いというデータもあるそうだ。子どもの頃に飲んでいたカルピスを、大人になったら自分の子どもや孫と一緒に飲む。そんなふうに世代が循環していくことを意識しているという。

ロングライフデザインの秘密
上 水玉模様で95年 カルピスの思い、時代超えて継承
中 奇跡の乗り物スーパーカブ 実用の美、磨き続けて60年
下 一澤信三郎帆布 「時代遅れ」貫き、ファンが急増

(日経デザイン 西山薫)

[日経トレンディ2017年12月号の記事を再構成]