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「課長昇進はイヤ」は大間違い 働き方改革で給与激変 20代から考える出世戦略(21)

2017/11/21

 働き方改革が進んでいます。残業を減らせ、という掛け声だけでなく、より具体的に残業しない働き方ができる取り組みが進んでいるのです。作業をサポートするツールが発展しているだけでなく、経営層が本気になって業務削減に取り組む例も増えてきました。

 世界に目を向けてみれば、在宅勤務などのリモートワークは進んでいます。その分だけ、限られた時間を全力で働く生産性改革も同時に進んでいるのです。

 そして出世の観点でも働き方/生産性改革が進むことで大きな影響が出てきます。多分最初のきっかけは課長になるあたり。それも数年以内だと予測しています。

■課長になって給与が減るのが昔話になる

 働き方改革が進むことで、意外な常識が崩れてしまう可能性があります。

 それは「課長になると給与が減る」という矛盾した常識です。

 そんな矛盾はなぜ生じるのでしょう。

 理由としては、課長手前くらいの給与の人が一番仕事量が多く残業が多い、ということがあげられます。その人が残業代をもらうと、課長になった時の昇給額や役職手当額を超えることがどうしても多くなってしまいます。だから、課長手前の状態でいて残業をする方が、課長になるよりも給与が高い、という矛盾した状態になってしまいます。

 給与が下がるから課長になりたくありません、という言葉は、あながち間違っていないように感じられます。そういう言葉を昇格試験の現場で良く聞きました。

 しかしそれらは今後数年間で、少なくとも働き方改革が進む会社においては、死語になるでしょう。

 そもそもの残業が減るので、残業代も減ってしまうからです。

■昇格の仕組みが本来の形を取り戻す

 人事の仕組みとしていえば、一般社員、たとえば係長から課長になるタイミングでしっかりと昇給するように設計がされています。会社によりますが、月給にして6万円~12万円程度。賞与にさらに格差をつける会社もあります。年収にすれば100万円程度の差が付くように作ることが一般的ではないでしょうか。

 このように差をつけることで、人事制度としては「昇格モチベーション」を高めようとしてきました。まだ昇格していない人たちに「昇格したい」と思わせる仕組みとして設計したのです。また、手当などを支払うことで、実際に昇格した後にちゃんと報いられていると感じてほしかったのです。

 しかしそれらの制度の想いを、残業が台無しにしていたこともまた事実です。残業代のせいで給与が逆転することが多かったからです。

 その残業がなくなる、ということはどうなるのか。それは「昇格モチベーション」がちゃんと機能するようになる可能性が高いということです。

 今まで残業代があるから、課長にならなくてもそれなりに満たされていた生活も、これからは残業そのものがなくなるので余禄がなくなるかもしれません。だから今以上の給与が欲しかったら、昇格を目指すしか方法がなくなるのです。

 もう少し給与が欲しいから今月は残業を増やす、という選択肢がなくなることの余波は、意外に大きくなるでしょう。

■課長の給与に追いつく手段がなくなる

 もちろん、残業代が出る人には残業させないけれど、課長にはどんどん残業をさせる、という風に会社側が開き直ってしまったら、昇格モチベーションは十分に機能しません。給与は増えるかもしれないけれど、課長になったあとで働く時間が増えるのは嫌だ、という思いも自然なことです。

 ただ、それでもやはり残業がなくなることの影響は大きくなると思われます。

 最新の賃金構造基本統計調査をもとにあらためて役職別の賃金カーブを確認してみると、そのことがわかります。

 従業員1000人以上の大企業で、係長と課長の賃金格差は200万円以上にもなります。それ以下の中堅企業でも、30代後半での年収差は100万円ほど。年齢が上がるにつれ拡大し続けます。

 私がかつて所属していた外資系コンサルティングファームでも、数百時間の残業があたりまえだった時代は過去の話。一昨年に弊社(セレクションアンドバリエーション)のインターンだった大学院生が就職したのですが、逆に全く残業がなくてこれで成長できるのか不安になります、という報告を聞いたりします。

 「長時間労働はかっこいい」という風潮はもはやありません。その結果、会社に人生を捧げる生き方ももはや過去のものです。それは、逆説的ですが、会社に人生をささげたくないから課長になりたくない、と思っていた人たちの残業代に如実にあらわれてくるのです。

 それでもなお課長になりたくない、と言い続けたとしても、そのポストは次の世代にすぐに引き継がれてしまいます。結果として、年下の課長に指示命令される一般社員の先輩、という構図ができあがってしまうのです。

■課長になる手前年収を見極めよう

 課長になれるのにならない。その選択は自由です。

 けれども、生活面での自由さを求めるのなら、課長になったあととならなかったときの報酬差を比較しておくことも重要です。

 幸い、現在の統計データを見る限り、一般社員でいる限り年を取ったとしても給与が下がる傾向はありません。管理職には役職定年を採用する企業も多いのですが、一般社員の状態であれば、わずかずつでも給与が増える状態にする会社が一般的です。

 その場合にチェックすべきは、管理職手前層で到達できる年収の上限です。これは人事部に確認すれば(嫌々かもしれませんが)教えてくれることでしょう。その水準を自分自身が許容できるのであれば、昇格を拒否するのもありだと思います。

 しかし残業代の加算は今後ありえません。その前提で考えて、管理職昇格を目指さなくてよいのか、ということをじっくり考えてみてはいかがでしょう。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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