――東大など日本の国公立大学の授業料は年間54万円弱ですが、米国の名門大学は高額です。資金面で苦労しませんでしたか。

「MITの授業料は年間約4万6000ドル(約520万円)、生活費や寮費を含めると年間6万ドルでも足りないのが実感です。当時の日本では大学院への奨学金制度はたくさんありましたが、学部進学を対象にした制度は充実していませんでした」

東大に合格しながら、MITに進学した副島智大さん

「米国では日本人も対象にした奨学金制度は、あまりありません。MITでも、(学生の家庭の所得に連動して授業料が決まる)ニードブラインドと呼ぶ制度がありますが、複雑です。1年目の13年は両親の援助を受けましたが、ちょうどアベノミクスで円安に大きく振れた時期に当たり、正直大変でした」

美術収集家の授業料支援で一息

――授業料は東大の約10倍、生活費を含めるとかなり経済的な負担が重いですね。

「2年目に米国在住で美術収集家のミヨコ・デイヴィーさんから授業料などの支援をうけられることになりました。これで一息付きました。デイヴィーさんは、個人的に日本人留学生の応援をされていて、現在も何人か資金援助しています。化学研究室のバイトも始めました。物質合成の実験やデータ収集、分析などで1時間約10ドル。週20時間くらいをバイトに充てました」

――副島さんは、全米で最優秀の学生を選ぶとされるクラブ「ファイ・ベータ・カッパ」のメンバーにもなり、現在はドイツのマックス・プランク物理学研究所でインターン研修を受けています。このクラブには米国の政治・経済界の大物がメンバーに多いといわれますが。

「米国には大学や州ごとに優秀な学生を顕彰するオーナーソサエティー制度があります。ファイ・ベータ・カッパは全米的な友愛会で、MITにもチャッターという特定の審議委員がいて、学生を選出します。成績優秀で卒業しましたという証しにはなりますね。終身会員制度なので、ビジネス面で人脈づくりに役立つという話はよく聞きます」

――MITと日本の大学、進学した場合の違いをどうみますか。

「やはり米国の方が世界から優秀な研究者が集まってきており、刺激を受けます。関心のある分野の最新の動きに触れていけます。日本の大学にいるより自分の世界が広がると感じます」

「学生への許容範囲も違います。日本では大学1年生が大学院の講義を受講しても単位にはなりません。ほかの学部に移る際もカリキュラムの組み方などが、日本の場合は複雑になります。米国は最終的に単位を取得していればOKだからスムーズに転部できます」

「教授のレベルは専攻ごとに米国の方が優れている場合もあれば、日本の方が進んでいることもあるでしょう。ただ学生の幅は大きく違うように思います。米国は(1)試験の成績(2)研究発表で優秀さを証明する(3)一芸に秀でている――といった複数の基準で入学します。学生のスキルセットが違ってきます」

――自分のキャリアの将来像をどう描いていますか。

「MITの寮では『何のために研究するのか』『知識とは何か』という議論をしました。自分の場合は、大きいか小さいかは別として『世界を変えよう』という研究をしたいと思っています」

将来は研究者かグーグル、IBM

「ドイツで1年間、インターン研修をした後は米国に戻って大学院に入りますが、MIT以外のところを選びます。米国の大学には、同じ所にとどまるより、新しい環境で経験を積んだ方がよいという考えがあります」

「将来は、(国内外の)大学や国立研究機関で研究生活を送ることを考えています。企業に就職するなら、量子コンピューターに興味を持っているのでグーグルやIBMなどに関心がありますね」

次のページ
憧れの米留学時代は終わった