コンサート動員力 三代目が1位、嵐や関ジャニ∞は?
「コンサート動員力ランキング2017」の1位は、三代目J Soul Brothers(約180万人)、2位はBIGBANG(約102万人)、3位は関ジャニ∞(約99万人)。そして女性アーティストのトップは乃木坂46(約47万人)――。
日経エンタテインメント!は、主要アーティストが2017年に開催したコンサートと、年末までのスケジュールが発表済みのもの(10月上旬時点)の会場収容人数を合計して、各アーティストの「年間コンサート動員力」を算出、ランキングにした(詳しい調査基準は文末の囲みを参照)。この「動員力」は実際の「動員数」とは一致しないものの、公演会場の規模からアーティストの動員力を推し量ることができる1つの指標となっている。CDチャートだけでは見えてこない、17年のコンサート市場におけるアーティストの人気動向を見ていこう。
17年のトップは、三代目J Soul Brothersの約180万人。10年のデビューから8年目で1位に輝いた。17年は1月から2月にかけて16年のツアー「METROPOLIZ」の延長戦を実施。9月からは「UNKNOWN METROPOLIZ」と題し、4大ドームツアー(東京・名古屋・大阪・福岡)23公演を開催した。1つのツアーで東京ドーム10公演を行うのは、90年のローリング・ストーンズに並ぶ史上最多記録。また17年のドーム公演数37回も史上最多となった。
2位は約102万人のBIGBANG。5月から6月にかけてファンクラブイベントを行い、11月からは海外アーティスト史上初の5年連続のドームツアーを4都市(東京・名古屋・大阪・福岡)で13公演開催。「LAST DANCE」という意味深なツアータイトルで、グループとしてのコンサートはメンバーが兵役に就く関係で、今後しばらく見られないとも噂されている。またD‐LITEやG‐DRAGONなどのメンバーが日本でツアーを行うなど、ソロ活動も目立った。
■嵐は史上初の6年連続5大ドームツアー
3位には関ジャニ∞がランクイン。この夏に14公演行った5大ドームツアー(東京・名古屋・大阪・福岡・北海道)は2部制で開催。前半はバンド形式、後半は歌とダンスを交えたスタイルで行われた。16年12月から17年1月にかけても5大ドームツアーを開催しており、約10カ月の間に2度の5大ドームツアーを行った初のアーティストとなった。
4位は嵐。史上初となる6年連続の5大ドームツアー「untitled」を、11月から18年1月にかけて開催。また今回のドームツアーでは、チケットの不正転売対策として、QRコードを用いたデジタルチケットが導入されている。
5位は10周年を迎えたHey!Say!JUMP。8月から10月にかけてアニバーサリーツアーを、全国8カ所のアリーナで28公演行った。そして年末年始には自身初となる3大ドームツアーを予定している。
トップ10を見ると、20代、30代の若手から中堅クラスのアーティストが大半を占めるなか、ベテラン勢でランクインしたのは6位のMr.Children。25周年を迎え、ホールツアーとドーム&スタジアムツアーで約6カ月間も精力的に全国を回り続けた。10位の桑田佳祐も6年ぶりのオリジナルアルバム『がらくた』を引っさげて、全国アリーナ&5大ドームツアー計18公演を開催している。
17年のランキングでトップ10に入るには約50万人が必要で、1公演で約3万~5万人動員するドーム公演を10回以上行えるかどうかが1つの目安となる。なお16年は45万人でランクインできたことを考えると、17年の上位陣の動員力が伸びていることが分かる。
乃木坂46はAKB48超え
ランキング全体を見ると、例年通り17年も男性アーティストが優勢で、トップ50のうち8割以上を占めた。その中でも高い動員力を誇るのがジャニーズ勢の9組。トップ10以下は、全国のアリーナ会場を回るスタイルが多い。13位のジャニーズWESTは9カ所31公演、15位のNEWSは9カ所26公演、16位のKis‐My‐Ft2は9カ所31公演といった格好だ。なお、20周年を迎えたKinKi Kids(22位)は、年始にドーム公演、夏には横浜スタジアム公演を行い、17年末から18年の年始にかけて再びドーム公演を開催。
それに迫るのがK‐POP勢の8組。BIGBANGに続いたのは7位の東方神起。メンバーのユンホ、チャンミンともに17年に兵役から復帰し、10月に復帰記念アルバムを発売。2年ぶりとなる5大ドームツアーを11月から開催。日本デビュー5周年でアリーナ&ドームツアーを行った8位のSHINee、本国デビューから史上最速となる1年9カ月での日本ドームツアーを行ったiKON(12位)が続いた。
一方、女性アーティスト(女性ボーカル含む)はトップ10には1組も入らず、トップ50の中では8組と、16年の15組からほぼ半減した。その中で動員を伸ばしてトップとなったのが、3月発売の『インフルエンサー』で初のミリオンを達成した乃木坂46(11位)。結成6年目にして初の東京ドーム公演を11月に2日間行った。公式ライバルのAKB48は結成7年目で初の東京ドーム公演を開催しており、それを上回るペースだ。なお今回、AKB48関連の各グループは軒並みトップ50圏外に。近年は、劇場公演と地元エリアを中心とした活動により力を入れる傾向が見られる。
乃木坂46に続いたのはももいろクローバーZ(27位)。夏のスタジアムライブなどのほか、2年をかけて日本全国47都道府県各地のホールを回るジャパンツアー「青春」をスタートしている。女性ソロでトップとなったのは37位の西野カナ。平成生まれの女性ソロアーティストとして、初のドームツアーを東京と大阪で開催した。
バンドではベテラン勢が強さを見せる。Mr.Childrenに次ぐのは、結成30年を迎えるGLAY(18位)。年間通してホールやアリーナを回るツアーで合計43公演を開催し、上位20組の中では最多公演数を記録している。その次につけたのが、デビューから約10年が経つ伸び盛りの中堅バンド2組。20位のONE OK ROCKは1月に発売したアルバム『Ambitions』が33万枚を突破。2月から5月にかけて自身最大のアリーナツアー16カ所32公演を行った。UVERworld(21位)は、ホール&アリーナツアーに加えて、11年にスタートし、年々会場規模を拡大する男性客限定のコンサートを、さいたまスーパーアリーナで開催した。
試金石となる有明アリーナ
17年の上半期のコンサート動員数は、大規模会場の閉鎖などもなかったため1987万人と、16年同期と比べて4%アップした。16年は「2016年問題」と呼ばれる都市圏のコンサート会場不足が話題となり、上半期に関東では横浜アリーナとさいたまスーパーアリーナ、関西では大阪城ホールが一時改修に入り閉鎖されたという経緯がある。
そして2020年の東京オリンピックに向け、これからまた正念場を迎えるという。コンサートプロモーターズ協会事務局長の今泉裕人氏は、「都心でアクセスのいい国立代々木競技場の第一・第二体育館が、17年の7月から19年の5月まで改修に入り、日本武道館も18年9月からオリンピックが終わる20年9月まで使用できません」と厳しい現実を語る。
ただ暗い話ばかりではない。沖縄や香川、佐賀などでアリーナクラスの会場の建設が予定されており、東京オリンピック後は全国的に大規模会場が増加する流れにあるのだ。そしてこれをチャンスと捉え、コンサート会場としても使いやすい施設になるよう、コンサート団体が設計段階から関わっていく取り組みがなされている。
その代表例が20年の東京オリンピックに向けて建設中の有明アリーナだ。コンサートプロモーターズ協会顧問の山本幸治氏は、「会場の床を木製ではなくコンクリート製にしたり、グッズが販売できるスペースを会場内に確保してもらうよう、コンサート団体とスポーツ団体がともに話し合いながら進めています」と言う。他にも、ライブ用の機材を積んだ巨大トラックが複数台駐車できるスペースを確保することも、リクエストしているという。
有明アリーナをモデルケースに、今後建設予定の施設でもコンサート団体の声が反映されていけば、より多くの人がコンサートを楽しめる環境が生まれそうだ。
●2017年1月1日~12月31日までの、主要アーティストの単独公演をピックアップ。
各会場のチケットが完売したと仮定し、弊誌が設定した収容人数を合計して、「コンサート動員力」とした。
●上記期間に開かれる有料の国内単独歌唱公演が対象。複数アーティストが出演する公演(ゲスト・前座は除く)やフェス、握手会、学園祭などは対象外とした。
●歌唱がメインのファンクラブイベント(有料)はカウントする。
●「めざましライブ」のようなパスポート付きのコンサートはカウントの対象としない。
●10月中旬時点で公式発表されていない公演は含まない。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2017年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。