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ダークサイド・スキル

事を為すにはチームが大事 「使える奴」を手なずけろ 本当に戦えるリーダーになるための7つの裏技 その3

2017/11/14

 大企業のミドルリーダーには、通り一遍のビジネススクールでは学べない「人に影響力を与えたり、時には意のままに操るような、もっと泥臭いヒューマンスキル」が必要――。このように説いたビジネス書「ダークサイド・スキル」(木村尚敬著、日本経済新聞出版社)が話題だ。ダークサイド・スキルとはどんなスキルなのか、本書の一部を転載して紹介する。今回は7つのスキルの3つ目「『使える奴』を手なずけろ」だ。

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■「借り物競走」戦略をとる

 人間40歳を超えてくると、弱みを克服するといっても、吸収力は若い頃より落ちてくるし、いまさら性格を直すのもむずかしい。若いときは、学校に通ったり、新しいことにチャレンジしたりして、貪欲に能力を伸ばすことができるが、ある程度の年齢になると、劇的なスキルアップは望めない。

 どうがんばっても、全知全能の神にはなれないのだから、すべて自分でやろうという発想を捨てる必要がある。そこで、ミドルがとるべき戦略は、「借り物競走」である。使えるものはなんでも使って、総合力で勝負する。

 会社を機能別に分けると、営業もあれば生産もあるし、マーケティングも財務も調達もある。いろいろな機能があり、いろいろな人がいて成り立つのであって、全部を一人でこなすことはできない。こうしたハード的な機能だけでなく、コミュニケーションの場面においても、たとえば、強面さながらバッドコップ(悪い警官)が必要なケースもあれば、相手に共感して動かすグッドコップ(良い警官)が求められるケースもある。北風で上着を吹き飛ばそうとしてもダメなら、太陽で暖めて上着を脱がすこともある。もちろん経営に関するいろいろな要素についてある程度精通し、同時に一人何役も演じることができるのであれば、それに越したことはない。しかしながら現実世界においては、これらすべてを、一人のリーダーがこなすのには無理がある。

 だから、何か事をなそうというときは、どうやって役に立つ人を集めてチームをつくるかが重要になる。全部自分でやろうとしないで、あちこちから能力や機能を借りてくるためには、発想の転換が必要だ。要するに、いかに他人のスキルをパクってくるか。ここにダークサイド・スキルが隠れていて、相手構わずパクるためには、上の人間は下の人間を認めるところから始めなければいけない。「俺の言うことを聞け」というだけでは、上司はもはや務まらないのである。

 部下が自分にないものを持っていたら、それを認めて、うまく引き上げてやらないと、良いチームは築けない。高圧的なパワーマネジメントではない、マネジメントスタイルが求められているのである。

■マスター・オブ「アイ・ドント・ノウ」

 ゼロックス元会長のアン・マルケイヒー氏は、2000年に突然COO(最高執行責任者)に指名された。当時のゼロックスは倒産間近の悲惨な状況で、2兆円近い負債を抱えていた。株価も就任1年前は65ドルだったものが、就任時には10分の1の6ドル88セントまで落ち込んで、チャプターイレブン(日本の民事再生法に相当)を申請すべきと言われていた。

 マルケイヒー氏は人事畑を歩んできて、事業に精通しているわけではなかった。その彼女がCOOに就任して最初にやったのは、チームアップとファクトファインディングだった。要するに、自分が何を知らないかということを、彼女はとことん理解していったのだ。だから、開き直って「アイ・ドント・ノウ(知らない)」を連発した。知らないなら、知っている人を呼べばいい。具体的には、財務やR&D、製品開発などの領域に精通した人を集めてチームをつくった。それが功を奏してターンアラウンドに成功する。

 人は偉くなると「アイ・ドント・ノウ」と言いづらくなってくる。偉くなるほど、我が身かわいさもあって、「知らない」「教えて」とは言えなくなってくるものだが、彼女はそこを割り切った。ついたあだ名が「マスター・オブ『アイ・ドント・ノウ』」。使える人は何でも使い、徹底的にパクって結果を出したのである。

 私は彼女の講義に参加した際、「それだけ会社が厳しくて、株主からのプレッシャーもきつかったときに、最後の拠り所としたのは何ですか? 何を自分の信念としてその時期を過ごしたのですか?」と聞いたら、彼女はひと言「顧客」と答えた。「株主のことなどまったく考えていなかった。顧客のためにどうあるべきかということしか私は考えていなかった」というのである。

 多少のリップサービスがあることは推測できるが、短期的に株主利益を上げることよりも、会社として顧客にどう応えていくのか。その軸がまったくブレなかったところに彼女の強さがある。

 リーダーになるとき、完璧なスキルを身に付けている人はいない。足りないものがたくさんありつつ、それでも何か人より秀でた部分を認められて、人を率いる立場になる。要するに、必要なスキルを全部身に付けてから昇進するわけではなく、先にポジションが与えられるので、足りないものをどんどん借りてこなければいけないということだ。

 自分に足りないところを冷静に見極めて、それを補ってくれる人を集めてチームアップする。そういうふうに発想を転換しないと、いつまでたってもリーダーになれないし、ある日、突然リーダーに指名されることもあるということだ。

 全部身に付けた人がポジションにつくのではなく、ポジションが人を育てるのだ。そして、真のリーダーは自分に足りないところをきちんと認め、そこを埋めてくれる人を引っ張り上げて、チームをつくっていくのである。

■社内諜報戦を勝ち抜くための人脈とは

 そのためには、普段から、周りの人間のやることをよく観察しておかなければいけない。この人はどういうスキルを持っているのか。どんな性格で、どういう場面で能力を発揮するのか。それも、数字に強いとか、立て板に水の説得力といったブライトサイド・スキルだけではなく、いざというときに役に立つかどうか、どれだけ人を動かせるかというダークサイド・スキルまで含めて、頭の中で仮想チームをつくって常にシミュレーションしておく。

 組織の中での戦い方にもいろいろあって、空中戦のときは誰と誰を自分のチームにして師団をつくるのか。逆に地上でドンパチやるときは、別の人間を味方にしたほうが有利かもしれない。戦局ごとに、どういうフォーメーションで戦っていくのか、誰と誰をどの場面で投入して、どんな役割を持たせるのか。地図上の駒を動かして戦局を展望するように、どれだけ多くのパターンをシミュレーションできているかによって、改革が成功するかどうかが決まるのだ。

 そのためには、会社の組織図とは別に、自分なりの神経回路のマップを持っておくことが重要だ。組織の指揮命令系統が骨格だとすると、自分なりの神経回路はその組織の中に縦横無尽に張り巡らされた情報網を指す。組織内での切った張ったというのは、結局、情報戦なのだ。インテリジェンス、いわゆる諜報戦に強い人間が勝つのである。

 こういう情報はどこの誰から取ってくればいいのか、自分の情報網が組織の中にどれだけ張り巡らされているのか。上に対しても、横に対しても、下に対しても神経回路が太く、機微な情報を入手できる人は、戦いに勝利する可能性が高い。社内に太い人脈を持っている人間は、ダークサイド・スキルを駆使して、改革を有利に進めることができる。

 社内とはいえ、インテリジェンス活動はCIAさながらのスパイ合戦でもあるから、場合によっては、嫌いな人間に近づくことも必要になる。改革に抵抗する守旧派ほど情報を持っていたりするから、そこからいかに情報を引っ張ってくるか。気の合う人間だけで神経回路をつくっても、敵の懐に飛び込むことはできないのだ。

木村尚敬
 経営共創基盤パートナー・取締役マネージングディレクター。慶大卒。ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。経営共創基盤参画後は製造業を中心に全社経営改革や事業強化など様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

著者 : 木村 尚敬
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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