カルビーが新宿に日本各地120社の菓子を集めた新業態をオープンした。店内にはクリスマスコーナーをはじめ、約800点ある菓子などを楽しみながら選べる、さまざまな仕掛けが施されていた。
120社800点の商品が集合
2017年2月に三越伊勢丹とカルビーの協業で開催し、話題を呼んだ流通菓子の期間イベントショップ「Yesterday’s tomorrow」(関連記事「カルビーが『懐かし』菓子屋 業界横断で展開する理由」)。カルビーがその常設店として「Yesterday’s tomorrow ルミネエスト新宿店」を2017年10月にオープンした。約178平米の店舗に、日本各地のメーカー約120社の菓子などを約800点集めた。

目玉は、季節ごとにコラボメーカーやメニューが替わる「出来立てキッチン」。
2018年2月14日までは森永乳業のひと口アイス「ピノ」のデコレーションバージョンや、カップアイス「MOW(モウ)」のソフトクリームなどのスペシャルメニュー、ギンビスの「たべっ子どうぶつ」のビッグサイズをできたてで提供する。

菓子コーナーの注目は約200種類の個包装菓子を量り売りする「ぐるぐる」。選んだ商品は店内の包装機でラッピングし、オリジナルのギフトを作ることもできる。

ひときわ目をひくクリスマスコーナー
実際に店内を回ってみた。入り口を入ってすぐにクリスマスコーナー、個包装菓子を量り売りする「ぐるぐる」、ハロウィーンのイベントコーナー、地方菓子コーナーがあり、突き当たりが出来立てキッチンとイートインコーナー、その向かいにグッズコーナーがある。
クリスマスコーナーには大中小3種類の「ヘクセンハウス(お菓子の家)」があり、華やかな店内でもひときわ目を引く。

一番小さいお菓子の家は「うまい棒」「トッポ」「クランキーチョコレート」など市販の流通菓子だけで作ることができる。合計11種類の菓子を全部買い集めるのはなかなか大変そうだが、面白いアイデアだ。

特に面白いと感じたのが、クリスマスイブまでの毎日、日めくり部分をめくっていくと小さなプレゼントが出てくる「アドベントカレンダー」。

一般的なアドベントカレンダーは中身の菓子が入った状態で販売されているが、この店舗では中に詰める菓子や雑貨を店内の商品から自由に選べる。世界でひとつだけのアドベントカレンダーは小さな子どもへの「プレクリスマスプレゼント」に喜ばれそうだ。

また、子どものクリスマスパーティーのゲームとして受けそうだと感じたのが、お菓子を詰めるくす玉「ピニャータ」。中南米の国などで子どものイベントに使われるものだ。高いところからつり下げ、目隠しした子どもが棒でたたいて割ると、中に詰められたお菓子やおもちゃなどが落ちてくる。

こうした華やかなコーナーに比べると少し地味に感じるのが、店内中央にある地元菓子のコーナー。だがイベントショップではこのコーナーが意外にも人気だったという。「小さいころによく食べていた菓子を自分の子どもにも食べさせたいという親からの反響が多かった。地元ではなじみのある菓子でも東京では手に入りにくいため、喜ばれたのだと思う」とカルビー事業開発本部 新規事業企画部の吉岡健太郎部長は分析する。
価格ではなくお菓子の楽しさで選んでほしい
店内で販売する他社の菓子は、全て店舗を運営するカルビーが買い取っており、「そのための物流体制を構築するのが大変で、準備に約1年半かかった」と同店を企画した同社上席執行役員の鎌田由美子事業開発本部長は語る。
なぜそこまでの時間と手間をかけて、他メーカーの菓子を売る店を出したのだろうか。
同社の松本晃会長兼CEOは「他社との競合とか、そういう小さなことは問題にしていない」と説明する。
「菓子市場はこの15年ほど大きくなっていないので、面白いことをして市場を活性化して、パイを大きくしたい。競合他社との首位争いはその先の話」(松本会長兼CEO)
また、鎌田本部長も、価格競争に陥っている現状に危機感を覚えていると話す。「工場では1円に苦しみながら努力し続けて質が高い商品を作っているのに、店頭では売価しか注目されていない。価格競争ではなく、もっとお菓子の楽しさで選んでもらえる場を作りたかった」
客単価は800~1200円。鎌田本部長は「売り上げが1日3桁(100万円)を超えるような店にしたい」と力強く語った。
(文 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2017年11月1日付の記事を再構成]