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苦肉の「九州ノロノロ特急」誕生 歓迎したのは訪日客

日経トレンディネット

2017/11/25

鹿児島本線よりは運行本数が少ない日豊本線ではスピードが上がり、苅田駅では先行する普通列車を追い抜かすまでに。カーブを高速で走れる特急ソニックほどのスピードは出ないものの、特急らしい走りにはなった。

大分県に入ってからは好調な走りだった

一部単線区間があるため、大分県日出町の大神駅で行き違いの停車をしたものの、そのほかはノンストップで駆け抜け、別府駅には12時19分に到着。そして別府湾を眺めながら走り、大分駅には12時31分に到着した。

■ノロノロ特急を盛り上げる方法は?

JR九州によると7月15日以降の乗車率は平均37%で、2016年8月の半分以下とのこと。実際に記者が乗った日も、夏休み中の週末だったが同程度の客数だった。

定期列車の時刻を変更するわけにはいかないため、2月までは現状のダイヤでの運行が決まっている。加えて、久大本線の復旧は2018年夏ごろと見込まれ、しばらくは迂回運行を続けざるを得ない。

乗って分かったのは、博多駅-小倉駅間が極端に鈍足ということだ。この区間の平均時速は39.9km。一方、小倉駅-大分駅間は時速65.9kmだから、特急ソニックより遅いとはいえ、ストレスを感じるほどではない。

迂回運行のゆふいんの森号を盛り上げる一つの方策は、小倉駅で山陽新幹線と接続するメリットを生かして、関西や中国地方から誘客することだろう。これまで博多駅まで行かなければ乗れなかったゆふいんの森号に小倉駅から乗れるのだから、所要時間の増加も最小限で済む。

もう一つの方策が北九州地域からの集客だ。駅側の対応が必要にはなるものの、折尾駅や黒崎駅などで乗降できるようになれば少しは集客にプラスになるだろう。

また、JR九州の観光列車を堪能したい人にとっては、実は今が好機ともいえる。博多駅-大分駅間は高速バスとの競争が激烈で、インターネットで乗車3日前まで買える「九州ネット早特3」を使えば、通常料金の57%引きのわずか2500円で特急列車に乗れる。ソニック向けの切符だが、現在は同区間を走るゆふいんの森号にも使えるので、格安で、しかも長時間、観光列車に乗れるというわけだ。

■熊本地震で運休していた観光列車も

ゆふいんの森号が立ち寄る大分駅には、イレギュラーな観光列車がもう1つ発着している。「あそぼーい!」だ。

あそぼーい!は2011年の九州新幹線全線開業に合わせ、熊本駅と阿蘇地方の宮地駅の間の運行を開始。九州新幹線と接続して、九州一円や本州方面から阿蘇地方への誘客に一役買っていた。ところが走っていた豊肥本線が2016年4月の熊本地震の影響で長期運休に。その後は博多駅から長崎のハウステンボス駅、北九州の門司港駅など、阿蘇とは関係ない区間で運行されてきた。そこには、注目が集まる福岡都市圏で運行させることで、阿蘇の復興をPRする意図があったという。

その裏で、あそぼーい!を阿蘇に戻そうという動きも着々と進んでいた。熊本のイメージが強い阿蘇だが、実は大分県との県境付近に位置し、大分側からもアクセスが可能。この区間は地震の被害もなく、豊肥本線は現在、大分駅-阿蘇駅間で折り返し運行をしている。そこで、2017年7月から12月まで震災復興をアピールする観光キャンペーン「GO!GO!!キスマイクマモトオオイタ」を展開するのに合わせ、大分駅からではあるが、1年ぶりに阿蘇駅への運行が実現した。

ダイヤに関しては、通常運行している「九州横断特急」を土休日のみあそぼーい!に振り替えているため、ゆふいんの森のような鈍足ぶりではない。むしろ苦労したというのが、客室乗務員の手配だという。JR九州の観光列車は客室乗務員によるおもてなしが売りだが、乗務員の拠点があるのは博多と鹿児島の2カ所だけ。熊本駅から運行していた際は、九州新幹線を使って送り込んでいたが、大分となると移動に時間がかかる。そこで、異例の泊まり勤務を組むなどして対応しているそうだ。

重厚で大人向けの雰囲気のゆふいんの森とは打って変わり、あそぼーい!は子供向けの遊べるスペースが充実する。共に通常とは異なる区間を走る、対照的な両列車を乗り継ぐのも面白いだろう。1月8日までの期間限定だ。

犬のキャラクター「くろちゃん」が描かれたあそぼーい!の車両。遊べるスペースが満載。客室乗務員が子供の相手をしてくれる。先頭車両には展望シートも

(文・写真 佐藤嘉彦=日経トレンディ)

[日経トレンディネット 2017年10月24日付の記事を再構成]

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