ペットとのキス、実は危険? ひとなめで細菌が数百万

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/11/13
PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK

ただし、どちらの研究も同じ種同士でなめた場合の効果であって、別の種からなめられる例は調べていない。一方、2016年にある兵士が傷をイヌになめさせたところ、彼はその後6週間昏睡状態に陥った。細菌に体の組織を食べられたためだ。

ネコはどうして自分の体をなめまわすのか

では、ペットの口が細菌でいっぱいだとすれば、自分の体をなめることで果たしてきれいになれるのだろうか。

イエネコが毛づくろいに長い時間をかけるのは、捕食者としての本能を保っているからだ。野ネコは、ざらざらした舌を使って「毛に付いた血などをきれいにしている」とプリム氏は話す。「仕留めた獲物のにおいで追跡されることを嫌うのです」(参考記事:「ネコは自ら人間と暮らし始めた? DNA分析で判明」)

一方、イヌはそうした心配はしていない。「イヌを洗ってやらなければ、単に汚くなるだけです」とプリム氏。「イヌはネコと違い、忍者のようにこっそり狩りをしたりしないので、生存という点で体のにおいはそれほど問題ではありません」

毛づくろいをすると、ネコは自分の体を細菌で覆うことにもなる。といっても、ネコはこうした微生物と一緒に進化しており、免疫系もこれらの細菌に慣れているので、ネコにとっては問題ない。

飼い主にとって朗報なのは、ネコの口内の細菌の多くは毛についたまま永遠に生き続けたりしないということだ。ただし、細菌はすぐに死ぬわけではない。ある研究では、ネコの毛1グラムに100万近い生きた細菌がいることがわかった。

この研究チームは、あらかじめ滅菌した人の手でネコを2分間なでると、どれだけの細菌がネコから人に移るかという実験も行っている。結果は、飼い主たちを安心させるはずだ。なでる間に人に移動した細菌は150ほどにとどまった。

私たちが清潔を心がけている限り、この程度は問題にはならない。「皆さんにはいつも、標準的な衛生管理を勧めています」とプリム氏は言う。「動物に手をなめられた後は、手洗いをした方がいいのです」

「飼い主が注意すべきは、細菌が皮膚の中に入り込む可能性があるかどうかです」とプリム氏は指摘した。人の体内に入れば、細菌が増えやすい湿った環境があるため、感染症につながりうる。

イヌに関しては、顔中をなめられてよだれだらけにされても、免疫機構が強く、顔や口の中に傷がなければ、普通は害はない。もし傷があれば、細菌が血流に入ってしまう。「今週は別々のイヌ2匹に口の中をなめられました」とプリム氏。

しかし、乳幼児や高齢者は、健康な成人に比べて免疫力が弱い場合があるため注意が必要だ。ある例では両親が生後7週の赤ちゃんを病院に連れてきた。赤ちゃんは発熱し、頭蓋骨の泉門(ひよめき)が膨らんでいた。

診察の結果、赤ちゃんはパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)による髄膜炎にかかっていたことが判明。これも、ネコやイヌの口の中によくいる病原体だ。2歳の兄が飼いイヌによく手をなめさせており、その指を生まれて間もない弟に吸わせていたのだ。

結論としては、ペットを愛する皆さんは手洗いをお忘れなく。そして、イヌやネコにぬれた舌で顔にたっぷりキスさせることには、慎重になった方がいいかもしれない。

(文 Erika Engelhaupt、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年10月27日付]

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