ダーウィンもびっくり? 鳥のクチバシが給餌器で進化

2017/11/6
ナショナルジオグラフィック日本版

オランダ、オーファーアイセル州のシジュウカラの仲間(Parus major)。(PHOTOGRAPH BY KARIN ROTHMAN, NIS/MINDEN PICTURES)

野生動物とお近づきになりたいなら、鳥の給餌器を設置するのがお手軽だ。けれども、私たちの悪気のない気晴らしが、身近な鳥たちの姿を変えている可能性が出てきた。

英国イースト・アングリア大学の進化生物学者ルイス・スパージン氏らの研究チームは、給餌器から餌を食べることで、シジュウカラの仲間(Parus major)のクチバシが長く進化しているかもしれないことを発見した。この研究は2017年10月20日付の科学誌「サイエンス」に発表された。

「自然選択による進化がクジャクの尾やキリンの首などを作り出してきたことは、よく知られています」とスパージン氏は言う。「けれども自然選択は、もっと目につきにくい特徴について、より微妙な方法でも働いているのです」

3000羽以上のDNA配列を調査

スパージン氏は、進化論の大きな問題の探求には、ダーウィンフィンチをはじめ鳥類がモデルとして常に役立ってきたことに興味を持ち、英国とオランダのシジュウカラの集団のDNAを調べはじめた。シジュウカラは頭部が黒くて腹部が黄色いスズメ目の鳥だ(訳注:日本のシジュウカラ(Parus minor)の腹部は白い)。

英国とオランダの計3000羽を超すシジュウカラのDNA配列を調べたスパージン氏は、ヒトの顔の形や、ダーウィンフィンチのクチバシの形と関連した領域に違いがあることを発見した。

そこで科学者たちは、英国とオランダのシジュウカラのクチバシの長さに大きな違いが生じているのではないかと考え、調べてみると、実際にその通りだった。

「特に英国のシジュウカラの集団では、近年、非常に速いスピードで、長いクチバシが選択されている証拠が見つかりました」とスパージン氏。

次に、長いクチバシを持つことがシジュウカラに有利になるかどうかを調べるため、研究チームは現在のシジュウカラの巣立ち率についての研究を参照した。英国では、クチバシが長くなる遺伝子を持つ鳥は、クチバシが短くなる遺伝子を持つ鳥よりも平均して多くのヒナを巣立たせてていた。

一方で、興味深いことに、オランダでは反対の傾向が見られた。これは、オランダでは英国ほど鳥の給餌器が普及していないせいかもしれない。

さらに、英国でクチバシの長い鳥と短い鳥に電子タグを付け、自動給餌器にその読み取り装置を設置してどの鳥が食べに来たかをカウントしたところ、クチバシの長い鳥の方が頻繁に食べていることが明らかになった。

「給餌器が2つの集団の違いを作り出していると断定はできませんが、この相関は興味深いと思います」とスパージン氏は言う。

ダーウィンさえ想像していなかった

英インペリアル・カレッジ・ロンドンと大英自然史博物館で進化と発生遺伝学の研究をしているアーカット・アブザノフ氏は、スパージン氏の研究は、動物の身体的特徴(クチバシの形状など)に関する伝統的な研究と遺伝学を結ぶアプローチの好例だと評価する。

けれども、面白い結果が出たと手放しで喜ぶにはまだ早いとアブザノフ氏も考えている。

「クチバシの形のほかにも、何か変化が起きているかどうかまではわかりません」とアブザノフ氏。「ほかの特徴も同時に急速に進化している可能性がありますが、これらについてはどう考えているのか、論文を読んだだけではわかりかねます」

例えば、鳥のクチバシが長くなっているなら頭蓋骨も変化しているだろうし、クチバシの表面を覆うケラチンも変化しているかもしれない。

「クチバシは単独で機能しているわけではありません」とアブザノフ氏は言う。こうしたさまざまな変化のせいで、分子レベルで起こっていることがわかりにくくなっている可能性があると指摘する。

スパージン氏にとっては、こうした点も楽しみの一部だ。「こんなことが起こるとは、ダーウィンさえ想像していなかったでしょう」(参考記事:「地球の奇跡! 目を疑うほど色彩豊かな動物たち」)

(文 Jason Bittel、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年10月24日付]

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