井伊雅子・一橋大教授「費用対効果の視点、医師報酬にも必要」

医療に費用対効果を持ち込むという考え方はなぜ必要で、どのように理解したらいいのでしょうか。医療経済学を専門とする井伊雅子・一橋大教授に聞きました。

――医薬品の値決めに費用対効果の考え方を導入する議論が進んでいます。なぜ今なのでしょうか。

一橋大学の井伊雅子教授は「日本の医療保険制度は厳しい現実を見据えねばならない」と話す。

「日本の公的医療保険制度の最大の問題点は、承認された医薬品を漫然と一律にカバーしている点だ。『日本が世界に誇る国民皆保険』というスローガンがあるが、皆保険を導入している国は欧州を中心に多くある。その中で日本のように基本的にすべての医療サービスを保険でカバーしてきた国は例外的だ。このままでは高齢化や医療の高度化により費用はどんどん膨らみ、皆保険制度の持続可能性が危ぶまれる。限られた予算の下ではすべての医療サービスをカバーできないという現実の中で、優先順位をつける方法が費用対効果の評価である」

――導入する際の注意点は何でしょうか。

「費用対効果に基づく医療は、エビデンス(証拠)を重視する。これは過去の研究に基づいて確率的・定量的に示された診療行為の効果や害のことだが、絶対ではない。たとえばEBM(根拠に基づく医療)といっても、患者の意向と周囲の状況を含めて総合的に意思決定することが重要だ。エビデンスが絶対であるかのような独り歩きには注意しなければならない」

「もう1つは、慎重を期すあまりに何もしない事態を避けることだ。費用対効果に基づいた制度を90年代後半からスタートした英国でも、最初から完璧な制度ができあがるとは考えていなかった。当時の英国の保健大臣も『うまくいくかは分からないが、まずやってみよう』と提唱していた。その後、10年超の試行錯誤を経て、徐々に医療現場の効率性を高めてきた歴史がある。日本でも最初から万全の制度をつくることは不可能だ。しかし万全でないから始めない、と言っていられるほど医療財政に余裕がない現実がある」

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