会社頼みでは身につかない 「つぶしの効く」スキル20代から考える出世戦略(19)

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与えられた分業の中に埋没するのではなく、ビジネス全体を見据える視点を持つ。そのためには経験だけに頼るのではなく、時に体系的に学びなおすことで自分自身の価値を高めていく。それが人生100年時代には重要だ、ということを前回と前々回の記事で示してきました。

ではより具体的に、どんなスキルや知識を持てば、自分自身の価値は高まるのでしょう。

まず求められる「考え方」が変化している

社内で出世を目指すには、人脈やコネが大事だ。そのためには上司を立てて、部下には権勢を張らなければいけない。そういわれていた時代には、働くということについての考え方はわかりやすいものでした。

それは「御恩と奉公」。

終身雇用と年功賃金、解雇規制という「御恩」に対して長時間労働や単身赴任、副業禁止を受け入れる「奉公」で返すという考え方でした。(経済産業省「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ」西村創一朗氏資料より抜粋

たしかに「奉公」ということであれば、自分の意見を声高に主張することはできません。忍耐や妥協をしながら御恩に報いる必要があります。結果としてキャリア構築も会社任せになってしまいます。

とはいえ、社会も企業もそのほとんどが成長していたので、忍耐や妥協のあとには安定や幸福が待っていました。

しかし1990年代以降「御恩」がなくなっていったことはみなさん周知のとおりです。人生100年時代のキャリア構築とは、現在も一部で一方的に残っている「奉公」の考え方を振り払い、働く人を幸せにしながら、日本経済全体も伸ばしていこうという取り組みです。

だとすれば、そもそも忍耐や妥協を美徳と考えるような意識を改めると共に、キャリアの責任を会社任せではなく、一人一人が自分で考えるようにならないといけません。

企業側の態度は実は大きく変化していない

従業員からすれば既になくなったと思える「御恩」ですが、企業によってはまだまだ「御恩」を授けてあげている、と思っていることがあります。

それは「雇ってやっている」という意識です。

たしかに定期的に給与を受け取るというサラリーマンの生き方そのものが安定的なことも事実です。そして多くの企業では、そのことだけをもっても「御恩」を授けていると意識している場合が続いているのです。

そのような意識の企業に対して、従業員側が「もう会社の言うとおりに転勤とかしません。長時間労働も拒否します」といったところで、「じゃあ辞めたら」という返事が返ってくるばかりです。

いつでもどこでもやっていける自信のある人ならともかく、いきなり会社から解雇をちらつかされて強くいられる人は少数です。結果として、少なくなった「御恩」に見合った程度の「奉公」をし、あとはプライベートを楽しもうと考えることは決しておかしくはないでしょう。

しかしその状態は、特定の会社に生活を依存していることには変わりません。好きなことをしている、と言いながらも、どこにでも行ける状態にはなっていない。だから私たちが一歩先に進むために、企業側に対する「奉公」をしながらも、ちらつかされる解雇に負けない強さを持つために活動しなくてはいけません。

ここで定義する強さとは、いつでも転職できるとか、独立できるとかの、キャリアを自律的に考えることができる能力のことです。それらの能力は、今皆さんがいる会社の中でもしっかりと身に着けることができるものなのです。その能力をここでは、汎用的に使えるものとして「ユニバーサルスキル」と定義します。

ユニバーサルスキルがないと依存せざるをえない

学問的にいえば、ユニバーサルスキルの前提は一般的人的資本ということになります。対義語は企業特殊的人的資本といいますが、それらはつまり以下のように定義できます。

一般的人的資本(ユニバーサルスキル):どの会社でも通用するスキルや知識、経験。論理的思考力やコミュニケーションスキル、自己管理力、倫理観、生涯学習力など。

企業特殊的人的資本:特定の企業や業界で通用するスキルや知識、経験。一般的人的資本よりも、特定の企業や業界内では、出世や活躍に貢献しやすい。業界の商品やサービスの知識、企業や業界内でのKnow-Who情報(誰がどんなことを知っているのかがわかる情報)など。

どこにいっても通用するユニバーサルスキルを持っていれば、誰しもが強くなれます。

一方で企業側は、従業員がユニバーサルスキルを持つための支援をなかなかしてくれません。なぜなら、常に論理的に考え話せるようになってもらうために時間とお金を使うよりも、今売れ線の商品をしっかり理解して特定顧客の担当者となじみになっておく方がすぐに売上や利益につながるからです。

そのため多くの企業では、OJTを中心とした、社内や業界内に特化した知識やスキルを、実地経験をもとにして獲得するようにするだけのことが多かったのです。

働いている側からすれば、その業界内や企業内でしか使えないスキルの方を強く持っている人ほど、その業界や企業に依存しなくてはいけなくなるのです。

どうすればユニバーサルスキルが手に入るか

ユニバーサルスキルを手に入れるためにはどうすればいいのか。

最近でこそ外部研修機関に従業員を派遣し、代表的なユニバーサルスキルである、クリティカルシンキングやプレゼンテーションなどのスキル教育を支援する企業も増えてきました。しかしそれもまだまだ少数派です。ユニバーサルスキル獲得の支援をしてくれない企業に勤務している場合にはどうすればいいのでしょう。

また、業種や職種によって、このユニバーサルスキルを得やすいものとそうでないものがあります。昔ながらの言葉でいえば、つぶしが効く/効かない、というふうに言い換えることもできます。つぶしが効かない、といわれる業界や職種に就いている場合にどうすればよいか。

そのヒントは、経済産業省を中心に始まっている、人生100年時代の社会人基礎力向上の検討会にありそうです。また、私が理事を務めている、一般社団法人高度人材養成機構でも検討を開始しています。

そこで考えられている方向性の一つが、社会人になったあとで再び大学や大学院に戻って学び直す、リカレント教育の拡充です。

企業特殊的なスキルをユニバーサルなものにするということは、経験を体系化するということです。そして汎用的に使えるようにするということ。それはまさに、学問の力を借りて、経験を言語化するということに他なりません。そのためには、体系的な知識を与えてくれる教育機関の力を活用することが近道です。今後の検討の中で、方向性がより具体的に見えてきた段階で、あらためて皆さんにも紹介したいと思います。

平康慶浩
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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