栗の産地や生地は個性に富み、断面からもこだわりが見える。
取り寄せて食べたい秋のケーキをランキングした。
モンブランとはフランス語で「白い山」。実は名前に栗の要素はない。菓子の歴史を研究する猫井登さんによると「一説ではイタリアで生まれたのが原型」という。アルプスの麓の栗産地、ピエモンテ州に、モンテビアンコ(イタリア語で白い山)という菓子があった。ペースト状の栗に生クリームを載せたもので、雪をかぶったアルプス山脈を模した。
マロンクリームを細く搾ったモンブランを生み出したのはパリの菓子店「アンジェリーナ」とされる。「モンテビアンコをヒントにして、メレンゲにマロンクリームを搾った。細い搾りはパスタに着想を得た可能性がある」(猫井さん)
茶色い洋風に対し、黄色いのは和製だ。生み出したのは東京・自由が丘の洋菓子店「モンブラン」。日本人に合わせ土台にカステラ、ペーストの代わりに栗の甘露煮を使った。
最近では洋風、和風それぞれの要素の融合や、和栗を使った新しいタイプが生まれている。食べ比べて楽しみたい。
素朴な栗の味わい しっかり(東京都大田区)
熊本産の和栗を使った。「バターと生クリームの量をできる限り少なくしたマロンクリームと、甘さを控えた生クリームを合わせることで和栗の優しい風味を引き出した」と西野之朗オーナーシェフが胸を張る自信作だ。
「栗の味わいをしっかり感じられる。取り寄せとは思えないクオリティー」(平岩理緒さん)。土台にはホワイトチョコを薄く塗ったメレンゲを使い、しけるのを防ぎながら食感のおもしろさを演出した。「メレンゲのサクサク感と、素朴な和栗の風味を生かしたマロンクリーム。軽やかな生クリームと一緒に食べると上品な味わいになる」(下井美奈子さん)。「自分へのご褒美に」(里井真由美さん)
余計な水分を吸わないようにモンブランは瞬間冷凍。試食を繰り返し、解凍後も冷凍前の風味を保つマロンクリームや生クリームの最適な配合を考案した。栗の割合が高く乾燥が進みやすいため、蓋を開けたら早く食べた方がいいという。9月後半から2月までの限定商品(12月15~25日は発送不可)。
(1)2732円(2)4個(3)https://mezoputi.com/shop/
高級ラム酒 気品高い味の決め手(鎌倉市)
えりすぐりの国産栗を蒸して丁寧に裏ごしし、和栗の風味を最大限に生かした看板商品。マロンクリームにはカスタードクリームと甘露煮の栗を少し混ぜ、優しい甘さに仕上げた。高級ラム酒「ディロンラム」を使うことで「ラム酒の甘い香りがしっかりと残り、インパクト大。甘さもくどくなく、後を引くおいしさ」(村山なおこさん)。
土台のタルトは、バターとアーモンドクリームを焼き上げた。生クリームを重ねる前にディロンラムで香り付けしている。「底生地の風味と口溶け、ミルキーでいて甘すぎない生クリーム。栗とのバランスが計算されていて食べ飽きない」(糸田麻里子さん)、「力強いマロンクリーム、軽やかな生クリーム、コクがありさくっとしたタルト。1つの洋菓子として気品高くまとまりある味わい」(瀬戸理恵子さん)などバランスがとれている点に評価が集まった。販売は11月下旬まで。
(1)3456円(2)5個(3)http://www.lesanges.co.jp/
甘さ控えめ 渋皮煮がアクセント(高知県四万十町)
地元、四万十町産の糖度が高い栗だけを使った手作りモンブラン。添加物やブランデー、底生地を使わず、甘さも控えめで「栗の滋味が存分に楽しめる。栗好きにはたまらない」(瀬戸さん)。
無糖の生クリームを栗のペーストで挟んだ3層構造。底部分の栗ペーストは少し硬さを残し、上の層はふわふわにして食感の違いを楽しめる。上部には栗の渋皮煮を載せてアクセントに。「生クリームが主張せず和栗を引き立てる。底生地をあえて入れないなど栗のおいしさを存分に味わってほしいという作り手の意図が伝わる」(糸田さん)
(1)1200円(2)3個(3)http://ec-shop.shimanto-towa.jp/fs/kuri/c/
凍ってもふんわり(京都市)
凍らせたまま味わう、新感覚の生ケーキ。冷凍庫から出した直後でも柔らかな食感で、少し溶けた状態になるとふんわりとした味わいを楽しめる。内側のバニラをきかせた「ムースグラッセ」は空気を含み軽やか。ラム酒が香るマロンクリームを上から重ね、中心部にもスポンジ生地と一緒に入れた。土台はサクサクとした食感が楽しいクルミ入りのスポンジ生地だ。
「軽さの中に華やかさがある味わい」(郡司麻美さん)。「スタイリッシュな見た目と切り分けたときのかわいらしさが、クリスマスのブッシュドノエルとしても使える」(隈部美千代さん)。パーティーや贈答に映える見た目にも評価が集まった。
(1)2916円(2)1本(3)http://www.malebranche-shop.jp/
和三盆のコク まるで和菓子(岐阜県中津川市)
創業明治40年(1907年)の老舗栗菓子店が、和生菓子作りのノウハウを生かした純和風のモンブラン。陶器に渋栗入りの栗きんとんを詰め、その上に栗あんペーストを搾った。「栗の食感が生きている」(中沢章子さん)
モンブランは洋酒を使うことが多いが、栗花落は和三盆でコクを生み出す。国内産の和栗を使い「栗そのものを味わう、和菓子のような一品」(下園昌江さん)。「抹茶と合わせたい」(糸田さん)。模様を筆で一つ一つ手描きして焼き上げたオリジナルの陶器は「おしゃれで土産にも喜ばれそう」(隈部さん)。栗花落とは、栗の花が落ちる梅雨入りのこと。花が枯れて新緑の芽が出る中、雨露が光り輝く情景をイメージした。
(1)1836円(2)3個(3)http://www.syogetsudo.jp/webshop/