鍋のシメ、あなたは何? ご飯、うどん、ちゃんぽん…
ご当地鍋物(1)
今回から、テーマは「ご当地鍋物」である。
八戸せんべい汁、石狩鍋、きりたんぽ、あんこう鍋、鹿(もみじ)鍋、鱧(はも)すき、鴨の貝焼き、水軍鍋、もつ鍋など、全国には有名な鍋があるが、知っているつもりなのに本当は真髄がわかっていなかったという例もあろう。
ごく限定された地域でしか食べられていない、例えば能登の「とり野菜みそ」のような鍋物もある。鍋物は基本的に地元で手に入る食材で作るから、鍋の中身をじっと見ていればその土地の姿が浮かんでくるはずである。
大きな鍋で乾麺をどっさりゆでて、麺を洗ったりしないで鍋から直接お椀に取り、納豆、サバ水煮缶、刻みネギ、生じょうゆをかき混ぜたつけ汁を絡めて食べる。日本一サバ缶を煮て食べる県ならではの超簡単、極ウマ鍋料理です(山形県中央部住人/カラハシさん)
うーん、これはうまそう。納豆とサバ水煮缶との混合物ってどんな味がするか知らないが、うまそうな予感だけは確かにするのである。
デスク 確かにうまそう。
大阪といえばハリハリ鍋。私がこの鍋に出合ったのは入社して1年目か2年目の冬であった。社会部の宴会が有名な鯨料理の店で開かれ、コースのメインが鍋であった。そのころ私は水菜を知らず、着物の女性が「水菜の歯ごたえがハリハリしますやろ? そやからハリハリ鍋いうんです」という説明を「なーるほど」と聞いていたのであった。
能登の味。
作る際はまつや「とり野菜みそ」を使うのが定石らしく、スーパーの至るところにこのみそが積まれておりました。具材が鶏肉と白菜だけにもかかわらず、特製みそのおかげで結構濃厚な味でして、なかなかいけます。
聞き取り調査の結果、「鳥野菜みそ」ではなく「とり野菜」が正確な表記らしく、その意味は「(摂り)野菜」つまりは野菜を摂れる鍋である、という説がございました。これって本当でしょうか?(どらねこさん)
能登半島の付け根にあたるかほく市の「まつや」が発祥の店とされる。
この店の「とり野菜」は鶏肉と白菜のみ。30種類以上の材料で作った特製味噌を溶いて食べる。金沢周辺の家庭では、この味噌を買って自宅鍋が普通。失敗しようがないところがうれしい。北前船のまかない料理がルーツとの説があるが、どうなのかな? だって日本で白菜が普及するのは日清、日露戦争の後だし。そのころ北前船はなかったし…。
こんなものが入った鍋もある。
特に有名なものがシンメーナービー(シンメー鍋)という巨大な鍋で作るヒージャー汁(やぎ汁)である。この汁、なにしろ匂いが強烈なのだが、食べ方も臭みを消すと称して入れるよもぎ葉が、臭みを消すどころか自らも強烈な匂いを発し、臭みのカクテルとなって襲ってくる代物。
でも、食べ終わった後、なにかしら腹の底からメラメラとあつい炎が沸き上がり、まるで山賊にでもなったかのような気分が味わえる不思議な汁である(沖縄チャンポンさん)
沖縄に行ったときヒージャーを食べようと誘われたが、ちょっと引ーじゃった。行かなかった。
暑いところでは鍋は食べない…ということはない。
鍋料理を指す語は、日本でもおなじみの「火鍋」でいいのですが、広東語の言い方で「打辺炉(ダーピンロウ)」というのもあります。こちらはいかにも土着的な匂いというか、ローカルな感じが濃厚に漂う名前です。
ボール状の食べ物は、注文用の一覧表では「生根」とあります。本当は「生筋」と書きますが、同音なので前者も当て字的に使うようです。「生筋」とはグルテンのことで、食材として売っているものは形や加熱の仕方などで種類が分かれますが、これは揚げたものですね。料理に使うときは、お湯で油抜きしてから煮物などにしますが、この鍋ではいきなり投入します(日野みどりさん)
「生筋」という文字を見ているうちに、完全に解凍できていない冷たいままの牛スジを出しやがったおでん屋を思い出した。
でも香港ではグルテンなんだ。ちくわぶの親戚。お麩の親戚でもある。
鍋というと最後の締めが問題である。
今朝たまたま聴いていたラジオ番組で紹介されてたお便りで「鍋のシメはちゃんぽん麺が最高にうまい!」という話がありましたけれど、これってVOTE項目になるでしょうか?
ご飯を使ったシメは「ぞーすい」という? それとも「おじや」という? コレも地域性ゆえなのか、気になるところであります(S.Iさん.)
チャンポン麺で締めるのはもつ鍋。もつ鍋にはすき焼きタイプと汁鍋タイプがあるが、私は石鍋を使ったすき焼きタイプの愛好家である。最後にチャンポン麺を入れると濃厚なスープを麺が吸って膨らみ、がばおいしなっとよ。
関東の「おじや」、関西の「雑炊」というが、本当にそう?
会社は株式会社沼食。社長だった人はアイデアマンで特許もいくつか取っているようです。アルミ鍋を用いた調理麺でも特許をとっているとおっしゃっておりました(櫻井さん)
櫻井さんのメールには発明者の実名が書かれていたが、ご本人の了解を得ていないので今回は伏せた。でも貴重な情報である。折があればこのメールを頼りに取材してみたいものである。櫻井さんに感謝。
ラーメンどころか「アルミ鍋うどん」「アルミ鍋鍋」だってありますよ~。写真は、「アルミホルモン鍋」です。
こちらのホルモン鍋と博多もつ鍋との違いは、もつ(小腸)だけでなくミノなども入っている、野菜はネギだけ、味付けは濃いしょうゆ味で「赤い刺客」が潜んでいる、などですね(いけずな京女44歳さん)
中林20系さんから「それは全国のコンビニで売っているキンレイの冷凍アルミ鍋ラーメンではないか」とのご意見をいただいているが、文面からするとどうもそうではないらしい。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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