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スコッチの源流はワイン? ブドウなしで果実の芳醇を世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(8)

修道院ではまずエールをつくり、それを蒸溜してウイスキーにしていた=PIXTA

さあ、本題に入ろう。

連載第3回で「スコッチウイスキーに関する最古の公式記録は、1494年のスコットランド王室の出納簿である」ことを紹介した。王(ジェームズ4世)が修道士にウイスキーをつくらせるための原料麦芽の受け渡しの記録だ。修道院ではまずエールをつくり、それを蒸溜してウイスキーにしていた。

当時はエールにはホップを使っていなかった。ホップの苦味成分の獲得に必要な麦汁煮沸工程もなかった。粉砕した麦芽をお湯と混ぜ、糖化、濾過後、酵母が弱らない温度まで冷やした後、酵母を加えて発酵させる。乳酸菌も増えてくる。それは、500年を経た今日のモルトウイスキー蒸溜所の麦汁製造、発酵工程と基本的には変わっていない。ウイスキーづくりとは、事実上エール醸造所に蒸溜釜が持ち込まれて行われたと言ってよいのである。

ずばりその通りの歴史を持つ蒸溜所もいくつも残っている。グレンモーレンジ、グレンマレイ、トーバーモーリなどである。エール醸造所があった敷地に蒸溜所が建てられた例としては、これも第3回で紹介したミルトンダフ、またグレンギリー、タリバーディンなどである。

このスコットランドのエールとはどのようなものであったのか? そのエールを蒸溜した蒸溜液はスコッチウイスキーにどのような特徴をもたらしたのだろうか?

ピルスナーは果実香より麦の香りが高い=PIXTA

エール、今や日本でも身近な存在となったことに感慨を覚える。「エール」「ピルスナー(ラガー)」を比較してみる。たちどころに分かるのが香りの違いである。「エール」には花の香りや華やかな果実の香りが豊富にある。「ピルスナー(ラガー)」にも果実香はあるが、もっと強いのは麦の香りである。

味をみる。「エール」には酸味と甘さが合わさった果汁的な味わいがあることが分かる。「ピルスナー(ラガー)」の持つ麦の旨味とは異なり、ワインのような感じさえする。

ワインは現在も多くの人々に愛され、広く飲まれているが、古代より最も求められる酒であった。しかし、麦と違いブドウは寒い地域では栽培できないので、それらの地域はワイン産出圏からの輸入に頼らなければならなかった。

英国諸島は今でこそ温暖化によってワイン産業が伸び始めているが、今から500年前は大陸や諸島からの輸入に頼っていた。英国諸島の一角を占めるスコットランドも例外ではなかった。だがスコットランドには大きな特権があった。フランスとの同盟である。「オールドアライアンス」と呼ばれ、イングランドに対する攻守同盟で、1295年に締結された後1560年まで続いた。

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