WOMAN SMART

ヘルス

夫が、部下がもしかして? 大人の発達障害を知る

2017/10/20

最近話題になることが多いADHDは、不注意によるミスが多い、人の話を集中して聞けない、じっとしていられない(多動性)、唐突な言動(衝動性)、計画立てて物事が進められない、時間の見通しを誤り必要な仕事などを終えられない、といったことを繰り返し、やはり人間関係に悩みを抱えやすい。単なるうっかり忘れや注意散漫だけでなく「不注意、多動・衝動性、時間概念の問題がそろっていて、かつそれらの影響度が大きいのがADHD」(宮尾院長)とされる。

ASD、ADHDともに大人になってからではなく、幼少期から症状がある。国際的な診断基準でも「不注意や多動性、衝動性の症状が12歳以前から存在している」(ADHDの場合)とされている。ただ女性の場合、子どものころにおとなしくて多動性が目立たなかったり、場の空気が読めなくても「不思議ちゃん」など「キャラ」として扱われて見過ごされることもあるという。男女ともに学業成績がよい場合は、学生の間はそれなりに適応できるが、就職して対人関係が多様化・複雑化したり、管理職になって求められる役割が変化したことをきっかけに、困難さが生じることがある。

パートナーや、職場で共に働く人にそうした傾向を感じたら、どう対応すればいいのだろうか。

■パートナーが発達障害で悩む女性

パートナー(夫)がASD(アスペルガーなど)傾向を持つ女性の場合、気持ちを分かり合えない、共感してもらえないというつらさが重なって抑うつ状態になるなど、心身にダメージを受けてしまうこともある。そうした状態は、ギリシャ神話の孤独な女神の名を借りて「カサンドラ症候群」と呼ばれている。

子どもの受験など、大事なことや将来のことを相談しようとすると、夫が黙り込んでフリーズする(固まる)か「うるさい!」と怒り出して相談できない、という女性の悩みも多い。「アスペルガーの場合、それまでの脈絡と関係ないことを突然聞かれると答えられず、フリーズしてしまったり感情を爆発させてしまう。いきなり答えを求めずに『1週間後(理想は2週間後)に答えて。それまでに考えておいて』と促すといい」(宮尾院長)。また、こうした特性のある人は「相手の表情よりは声のトーンで相手の感情を読んでいるので、何か注意やアドバイスをするときも声のトーンはできるだけフラットにすること。話をするときも向かい合って座るのではなく、問題点を書いた紙などを目の前に置いて、一緒に見ながら話をする(共同注意)のがいい」。

女性はパートナーに対して「共感してほしい」と思うもの。「今日は子どもが言うことを聞かなくて。何とかして……」と夫に訴えたときは「大変だったね」と言ってほしいが、「何とかしてほしい」と言われた夫は何とかしなければと、父の立場で子どもを叱りつける、ときには暴力を振るうなど解決策だけに走りがち。こうした夫婦のケースに対して、宮尾院長は「父としての時間(子どもを叱る)、夫としての時間(妻の苦労をねぎらう)をそれぞれ決めて、毎日その時間帯は役割を果たすルールを作ること」を勧めているという。臨機応変な対応は苦手だが、夫の立場に立てば共感できるので、時間により立場を変えるルールが定まればきちんと行動できるはずだ。

■職場でいかに対応するか

発達障害を抱える人と共に働く機会も今後、増えていきそうだ。2016年4月に改正障害者雇用促進法が施行され、身体障害者・知的障害者に加えて精神障害者(発達障害者はこの中に含まれる)の雇用も義務付けられている。法定雇用率も引き上げられた。

これは障害者手帳を持つ人の雇用が対象だが、「障害者手帳は持っていなくても、発達障害の傾向がある社員は少なからずいる」と認識し、職場の理解や対応に取り組む企業はある。

(イラスト:YAB)

ASD傾向のある人は臨機応変の対応が難しく、頃合いを見計らった報告・連絡・相談は苦手。どういうタイミングで何について報告をするかを決めればきちんと実行できる。新しい仕事をするときは「上司や同僚と一緒に一度やってみて、予行演習をして覚えたり、パターンや映像など視覚から覚えるのがいい」(宮尾院長)。

注意力を維持するのが難しいADHD傾向のある人は、色や物など目に入る情報量が多い環境ではよけいに集中できなくなってしまう。「仕事をするスペースにはあまり物がないようにして、可能ならついたてなどで視界を区切る。仕事の指示は言葉で伝えるより、メモや図にするなど視覚的に訴えるほうがいい」(神谷美奈子さん)

発達障害のある人は「体幹が弱く姿勢が悪かったり、関節の動きがぎこちないことがある」(神谷さん)。また、何かに過度に集中できる一方、自分の疲労を感じにくくなってしまっていることが多いという。神谷さんは発達障害を持つ子どもや大人向けに、身体認知ヨガを指導している。身体認知の機能を引き上げることで、疲れやストレスなど自分の体の状態に気付きやすくなり、柔軟性を高めれば転倒などケガの防止にも役立つ。ヨガや呼吸法でリラックスする方法も身に付く。「ストレスが強く自発的な言葉が出なかった方が、身体認知ヨガをした後では自分からスムーズに話すようになることもある」(神谷さん)

企業の中には、社員のメンタルケアの一環としてこうした療法を取り入れ、発達障害のある社員のケアにも生かそうとするところがある。特に管理職にとって、部下や自分自身の心身の状態を把握することは重要だ。

■ダイバーシティー経営の一環として

そうした企業の一つが、NTTドコモの特例子会社であるドコモ・プラスハーティ(東京・豊島)。ドコモグループでの障害者の雇用と定着支援、そのための環境づくりを目的として15年に設立された。グループ各社向けの研修や、障害のある社員やその同僚・上司からの相談も受け付ける。

身体障害者、知的障害者、精神障害者が働くための環境づくりに取り組んできたが、対象は広がりつつあるという。「突き詰めれば、障害者に限らず、能力をフルに発揮する上で何らかの課題を抱えている人はたくさんいる。そうした人たちのサポートと現場のマネジメントのための仕組みが求められていると気付きました」(業務運営部の岡本孝伸担当部長)

現在準備中というのが、障害などのある社員の状況を本人、上司、ドコモ・プラスハーティ社内の専門家(精神保健福祉士)の三者で日々共有できるシステム。社員が自分の心身の状態を毎日システムに入力して「見える化」し、上司と専門家が助言したり、必要に応じて面談したりして心身状態が悪化しないように支援する仕組みだ。

「通常の枠にはまりにくい人が持っている能力を引き出せれば、組織にとって必ずプラスになります」(岡本担当部長)。ダイバーシティー経営の一環として取り組んでいる。

(コンテンツ編集部 秋山知子)

WOMAN SMART 新着記事

WOMAN SMART 注目トピックス
日経doors
暗闇ボクシング爆速成長 経営者は20代塚田姉妹
日経DUAL
中学受験からの撤退 挫折感を持たせない方法は?
日経ARIA
マレーシアに7年住み知った 移住に向く人、向かな
日経doors
読者9割「メンターが必要」 欲しいアドバイスは?
ALL CHANNEL