17年に入ってからは、大手キャリア自身が料金を引き下げ、MVNOへの流出を阻止しようとする動きも見られるようになった。そのことを象徴しているのが、KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」で、さまざまな割引やキャンペーンを適用することで、月額1980円から利用できることが大きな話題を呼んでいる。

KDDIは「UQ mobile」への注力やauの新料金プラン導入に加え、MVNO大手のビッグローブを買収し“仲間”にするなど、グループ外のMVNOへの顧客流出阻止に向けあらゆる手段を打っている

さらにKDDIは、MVNOの大手の一社であるビッグローブを17年1月に買収。10月には新たにauのネットワークを用いたサービスを提供するなど、キャリアがMVNOを買収して味方につけるという動きも出てきている。そうしたキャリア側のなりふり構わぬ施策によってMVNOに流出する顧客が減り、MVNOが思うように顧客を獲得できなくなってきているのだ。

再編で勝ち抜ける強いMVNOが必要

しかし、MVNOにとって顧客の数を増やすことは極めて重要だ、MVNOは「薄利多売」のビジネスで、数を売らなければ利益が出ないからだ。

MVNOの売り上げがどれくらい低いのか、公表されている数字から確認してみよう。楽天が公表した資料によると、プラスワン・マーケティングの通信事業の売上高は43億2900万円となっている。回線数を40万とみなすと1回線当たりの年間売上高は約1万800円、ARPU(通信事業者1契約当たりの月間売上高)は約900円程度という計算になる。

一方、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)の、個人向けの「IIJmioモバイル」に絞った契約数を確認すると、16年度末時点での回線数は95万1000回線。年間の売上高は171億円となることから、1回線あたりの年間売上高は約1万8000円、ARPUは約1500円という計算になる。NTTドコモの17年度3月期のARPUが4240円(固定回線の「ドコモ光ARPU」を除く)であるのと比べると、IIJで3分の1程度、プラスワン・マーケティングは5分の1程度という、非常に安い価格帯での競争となっている。

しかも先にも触れた通りMVNOの数は700近くにまで上っており、その多くが安さを特徴に打ち出していることから、競争上MVNOは利益を低く設定して通信料を下げざるを得ない。そうしたことからMVNOは、多数の顧客獲得ができなければ大きな利益を上げることはできず、顧客を増やすことこそが成功のための絶対条件となっているわけだ。

だが顧客を増やすにはプロモーションや販売などにコストをかける必要がある。現状大半のMVNOは、赤字覚悟で顧客獲得を図っていると考えられる。一度に40万のユーザーが獲得できる今回の買収は楽天にとっては渡りに船だったのかもしれない。今後も資金不足で競争から脱落する企業や、楽天のようにそれを買収して事業拡大を図る企業が続々と出てくるだろう。

今回の買収劇は、MVNOの数が増えて市場規模が拡大する段階から、整理・淘汰が進み再編される段階に移ったことを明確に表している。そもそも700近いMVNOが小さい市場でひしめき合う状況が続けば、大手キャリアやそのサブブランドと対等に戦えるだけの力を持つMVNOは現れない。より強いMVNOを生み出すためにも、増え過ぎたMVNOの再編は必要不可欠なものだと筆者は考える。

大手キャリアをも巻き込んで「格安」の市場競争が激しくなる中、どのような形でMVNOが再編を進め、いかに強い力を持つMVNOを生み出すことができるか。今後の国内携帯電話業界動向を見据える上でも、MVNOの再編劇は非常に大きな焦点になるといえそうだ。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。