同社の17年3月期の売上高は100億5900万円なのに対し、営業損失は53億8800万円。純資産が14億2700万円であることから、債務超過寸前の状態だった。楽天に売却する通信事業だけを見ると、総資産が18億7700万円に対して負債が30億9000万円と、既に危機的状況にあった。

プラスワン・マーケティングにとって今回の買収は、採算が取れていなかった通信事業を買い取ってもらい、経営の負担を軽くする狙いがあったといえそうだ。今後は海外を中心に端末販売を拡大し、事業の立て直しを図ることになりそうだ。

楽天が展開する「楽天モバイル」も、積極的なテレビCM攻勢や販路の急拡大で顧客獲得に注力するなど、プラスワン・マーケティングと近しい戦略を取っていた

一方、楽天がプラスワン・マーケティングの通信事業を買収するは自社のMVNO「楽天モバイル」の顧客を増やすためだ。約5億円の買収金額を支払い、約31億円の負債を引き取ってでも、プラスワン・マーケティングが獲得した顧客を取り込むのが近道と判断したといえそうだ。一部報道によると同社の契約回線数は40万といわれており、楽天にとっては1回線当たり1万円程度の調達コストとなる。悪い買い物ではなさそうだ。

大手キャリアの反撃で成長に陰り

想定ほど顧客獲得を伸ばせず経営危機に陥ったプラスワン・マーケティングと、事業買収してでも顧客を増やすことに力を注ぐ楽天。この買収劇こそが、MVNOの現状を表しているといえる。

プラスワン・マーケティングが多額の投資をしてもなお、顧客を思うように獲得できなかった背景にあるのは、大手キャリアの攻勢である。大手キャリアはこれまで、圧倒的な料金差で、MVNOに顧客を奪われ続ける状況が続いていた。だがそうした状況に危機感を抱いたキャリア側が、16年後半から一転してMVNOへの流出を防ぐべく、反転攻勢に出たのである。

ソフトバンクは低価格の「ワイモバイル」ブランド、KDDIは傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」に力を入れ、積極的なテレビCM攻勢や販路の拡大、さらに日本で圧倒的人気を誇るiPhoneの新品を正規に取り扱うなどの施策を次々と展開。MVNOより料金は高めだが、販売やサポートの面では充実度が高いなど、大手キャリアとMVNOの中間というべき位置付けを獲得し、人気と契約を伸ばしている。

ソフトバンクの低価格ブランド「ワイモバイル」は、適度な安さとサービス・サポートの適度な充実度合いから、“格安”の市場ではトップシェアを誇る人気を獲得している
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再編で勝ち抜ける強いMVNOが必要