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認知症の母が通販で爆買い 笑えない50代男の介護記 『母さん、ごめん。』著者、松浦晋也さんインタビュー(前編)

日経Gooday

2017/10/25

「自分の介護を振り返ってみて、一番の失敗は『初動の遅れ』です」と話す松浦晋也さん
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

科学ジャーナリスト・松浦晋也さんの『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)は、自身の介護体験を赤裸々につづったノンフィクションだ。認知症を発症した親の介護について書かれた本は少なくないが、「50代独身の男性」が一人で母の介護を行ったケースは珍しいだろう。しかし未婚男性が増えているなか、これから同じ経験をする人も増えてくるに違いない。母のグループホーム入居で2年半にわたる自宅介護を終えた松浦さんに、改めて当時の苦労を聞いた。

■男性が書いた認知症の母親の介護記が話題に

――この本のもとになった連載は2017年3月から「日経ビジネスオンライン」で始まり、大変な反響を呼びました。母と自分を客観的に見つめ、厳しく冷静に記述していく姿勢は科学ジャーナリストならではですね。

予想以上の反響で驚きました。2017年の1月末に母をグループホームに預けて一段落した後、編集者に近況を話していたら「連載にしましょう」と言われたんです。はっきりと意識していたわけではないけど、介護をしているときから「これはネタになる」という気持ちはあったので、メモを取ったり記録を整理したりはしてありました。

自分自身の話なので普段の仕事と違って資料を集める必要がないのはよかったけど、当時のことを細かく思い出すのはつらい作業でした。連載は2017年8月まで続きましたが、原稿は2月から5月までに一気に書いてしまったんですよ。本になってからは読み返していません……。普通に読めるようになるには、もう少し時間がかかるでしょうね。

――同居していたお母さんはアルツハイマー病を発症するわけですが、松浦さんが異常に気づいたのは2014年の夏。きっかけは「預金通帳がない」と繰り返し訴えるようになったことでした。

『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)

はい。後から振り返るといろいろ前兆はあったんですけど、はっきり「おかしい」と気づいたのは2014年の7月でした。自分の中に、面倒臭いことは先送りにしたいという気持ちがあったんでしょう。認知症の場合、対応が遅れると、どんどん状態が悪くなっていくもの。それは今も後悔しています。

また、本人も「何ともない」と言うわけですよ。本人は家族以上に(認知症を)受け入れることができない。自分がそうなったとき、自分は受け入れられるだろうか、と考えてしまいました。

――認知症に気がついた2014年夏の時点でお母さんは80歳。それまで、認知症になる可能性は考えていませんでしたか?

全然考えていませんでした。当然起こりうる事態で、それを考えてなかったということは「逃げている」ということですよね。父方の祖母は99歳まで生きたけど、最後まで頭はしっかりしていたんですよ。でも95歳まで生きた母方の祖父は、今になって思うと最後の5年間くらいは認知症だったんだと思うんですよ。当時は認識していませんでしたが……。年を取れば多少はボケるもんだ、くらいにしか思ってなかった。

■「初動の遅れ」が取り返しのつかないことに

――非常に一生懸命、介護に取り組まれる様子が印象的なのですが、ご自身で「これは失敗だった」と思われることはありますか?

自分の介護を振り返ってみて、一番の失敗は「初動の遅れ」です。10月に総合病院の神経内科に電話して、予約が取れたのが(翌2015年の)2月ですからね。この初動の遅れは痛かった。

本にも書きましたけど、まずは近所の「地域包括支援センター」に連絡するのが正解です。私は普通の病気と同じように考えて、医者を探して予約を取るという対応をしてしまいました。対応が遅れると、どんどん母のできないことが増えていく。すると、少しずつこちらのストレスもたまっていくんですよ。

――松浦さんは一人だったのでなおさらですが、公的介護サービスに頼らず、「家族だけ」で認知症になった親の介護をするのは無理だと書かれています。

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