普通の公立高が大化け 京大合格率上げた堀川の探究科京都市立堀川高校の恩田徹校長に聞く

以前の京都は私立王国だった。かつてはノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士などを輩出した府立洛北高校(旧制時代は京都府立一中)が京大合格トップ校として知られたが、ミッション系の洛星高校、仏教系の洛南高校といった私立校が順次台頭。公立高校の進学実績はさえなかった。

しかし、市民から「京大に行けるのは所得の高い家庭の子供が通う私立ばかり。公立の子は不公平だ」という声が上がり、京都市教育委員会による高校改革がスタートした。ただ、多くの関係者からこんな注文が付いた。「単純に進学実績を追求する市立高校では存在意義がない」

そこで学校現場と市の教育委員会が議論を重ね、導き出した答えが「大学受験だけではなく、学問を探究する学科をつくろう」だった。とはいえ、市立高校は9校しかなく、教員などの人材も豊富ではない。東京都の場合、都立復活が話題になったが、これは約1万人の都の教員のうち有能でやる気のある先生を日比谷高校や都立西高校など重点校に集めたことが大きい。

カープ方式で教員養成

「京都市の場合は、(一昔前の)ジャイアンツのように4番バッターばかりを集めてチームをつくるなんてできません。ウチは今いる教員を育成する広島カープ方式でいこうと。『自分の子供に行かせたい高校をつくろう』とまず教員の意識改革を迫り、ゼロから人材を育てました。そこに探究したいという意識が高い生徒が来ると、教員も応えはじめたのです」という。しかし、伝統的な進学校でもない堀川になぜ生徒が集まったのか。

「そこは目利きを得意技とする京都人ですね。『マネシ(人まね)』が嫌いで、進取の気質。探究科という日本初の試みなんていいやないか、挑戦しようかというムードが起こり、生徒が徐々に集まってきたのです」という。

ベンチャーも支援

京都はベンチャーの街でもある。京セラの稲盛和夫名誉会長の稲盛財団のほか、堀場製作所やロームなどの創業家一族も「面白い学校や」と様々な支援をした。スーパー・サイエンス・ハイスクールの運営委員会には堀場厚会長兼社長らが参加、ロームが図書館のランプを寄付するなどしている。

10日午前、休日を返上して図書館に3人の女子生徒が集まった。11月11日に開く中学生や保護者向け学校説明会のプレゼンテーション資料を作成している。説明会には、生徒100人あまりが参加するという。「自分らで探究とは何か、中学生らに伝えたいと。教員の出る幕はありません」と恩田校長は笑う。

堀川高校の隣にある本能寺跡の石碑

「信長はイノベーター。本能寺の変ゆかりの地で堀川が誕生したのも不可思議な縁」と、堀川には全国の学校関係者が視察に押し寄せている。探究モデルの学習法を導入する高校も増えている。

この3人の生徒に「探究は大変ですか」と家庭での学習時間を聞くと、「3~4時間ぐらいですかね」という。恩田校長が「堀川はしんどいやろ」と突っ込むと、笑ってうなずくだけ。もちろん探究と日々の学習の二兎を追うのは容易ではない。ただ、堀川ではこれを「楽しんどい」というそうだ。

(代慶達也)