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アニメも縦型に 1話3分プロモにも向く

日経トレンディネット

2017/10/13

タテアニメになった学園サバイバルホラー『カラダ探し』(C)ウェルザード・村瀬克俊/集英社/タテアニメ、PIXTA
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 スマートフォンの利用時間が増えていく中、縦長のスマホ画面に合わせた縦型動画の配信・再生に対応するサービスが増えてきた。ファッションやメイクのハウツー情報を配信する「C CHANNEL」などは若い世代を中心に支持を獲得。Facebookやインスタグラム、YouTubeなども縦型動画の再生に対応している。そんな中、1話数分の新作アニメを縦型動画で配信するサービスも登場している。

 「攻殻機動隊」シリーズなどの作品で世界的に有名なアニメーション制作会社プロダクション・アイジー。同社が、2017年6月に配信を開始したのが、縦型動画に特化したアニメ視聴アプリ「タテアニメ」だ。その名の通り、縦型に作られた新作アニメをほぼ毎日投稿している。

 作品の長さは、1話約3分、1シリーズ10話程度。それぞれ第1話と、公開から2週間以内の作品は無料で視聴できる。それ以降の作品は、ポイントを購入したりPR動画を視聴したりして得られるポイントで視聴可能だ。2017年10月時点では、「週刊SPA!」(扶桑社)で連載中の『ゴハンスキー』、『稲川淳二のすご~く恐い話』などを配信している。テレビドラマも好評だった『孤独のグルメ』(扶桑社)や、元々は著者がKindleで自主出版していた作品にもかかわらず、ネットの口コミで火が付いた『ひとり暮らしの小学生』(宝島社)などの作品の配信も予定している。

縦型動画用に制作された新作アニメが公開されている (C)タテアニメ

 動画配信サービス「C CHANNEL」やライブ配信アプリ「LINE LIVE」など、縦型動画にフォーカスしたサービスは若い世代を中心に、すでに定着しつつある。スマホ画面の大型化、スペックの向上、通信環境の進歩などによって、スマホで動画を見たり撮影したりする人は増えた。それに伴い、スマホを横向きに持ち替えなくても見られる縦型動画にシフトする企業が出てきている。

 ただ、C CHANNELやLINE LIVEなどのサービスは情報コンテンツやリアルタイム配信が中心。これまで横向きに構えていたカメラを縦向きにして被写体となる人物を撮影すれば、縦型動画になる。

 アニメはそう簡単にはいかない。絵コンテやレイアウト、作画などの制作手法が全て変わってくる。また、アニメ作品は、テレビや映画、動画配信サービス向けの作品として公開したあと、DVDやBlu-rayなどのパッケージにして販売することも多い。縦型動画にすることで、それらの活用範囲は狭まってしまうだろう。それなのに、プロダクション・アイジーが縦型動画の配信サービスに乗り出したのはなぜか。今後の狙いなどを聴いた

■「君の名は。」に代表されるライトなファン層の台頭

 プロダクション・アイジーでタテアニメのプロジェクトを主導する企画室室長の中塚進一氏が、タテアニメを企画した理由としてまず挙げたのが「アニメを見る環境の変化」だ。そもそもの話、かつてはテレビなどを見ていた時間が、今はスマホに奪われている。アニメを見る環境も、かつてはテレビ中心だったが、動画配信サービスを利用してパソコンやスマホで見る人が増えてきた。そんな中、「例えば、ゲーム業界は、早くからスマホゲームに進出し、新たなビジネスモデルを作っている。アイジーとして何ができるのかと考えたとき、得意のアニメでスマホのビジネスにチャレンジしようと考えた」と中塚氏は話す。

プロダクション・アイジーでタテアニメのプロジェクトを担当する企画室プロジェクト企画グループの大久保圭氏、企画室室長の中塚進一氏、企画室プロジェクト企画グループの大塚裕司氏(左から)

 もう一つの理由が、従来の熱狂的なアニメファンとは異なるライトなファン層の増加だ。2016年は、『君の名は。』をはじめとした劇場アニメの大ヒット作が多く生まれた。それらの作品の共通点が、アニメファン以外の一般の観客が多く劇場を訪れたことだと言われている。タテアニメが狙うのは、そういったライトな層だ。

 「作画が崩れていないとか、ストーリーがきっちりあるとかにこだわるアニメファンの人たちには、これからもテレビや劇場で見てもらえればいい。タテアニメは、むしろアニメにはあまり触れたことがないけれど、漫画が好きとか、お笑いが好きとか、YouTubeは見慣れているとかいう人たちに見てもらいたい」(中塚氏)

 それには、「制作側でひと手間かけても、ユーザーに優しいサービスにしたかった」(中塚氏)。横型でアニメを作ってきた制作サイドからすれば、絵コンテの描き方、レイアウト、作画まであらゆる手法が従来と異なってくる。それでも、「スマホの画面を傾ける」というユーザーの負荷を取り除き、手軽に見られることを優先したという。

 アニメ1本の長さを3分程度にしているのも手軽さを重視するためだ。「スマホ向けゲームが流行ったのは、空いた時間にちょっとやりたくなる、やり始めてもすぐに終われるという手軽さだと思う。アニメもスマホで見るなら、3分くらいがちょうどいいのではないか」と中塚氏は話す。

■プロモーション用アニメという新境地も開拓

 1話3分程度の縦型アニメはユーザーにとって手軽な一方で、制作側から見るとテレビシリーズや劇場作品には合わないタイプの作品を拾い上げられるという可能性を秘めている。キャラクターものや4コマ漫画の作品には、たとえ人気があっても、1話30分程度あるアニメシリーズや1時間を超える劇場作品にはなりにくいものも多い。そうした作品がコンパクトなタテアニメにはまりやすいのだ。「ギャグ漫画などはとても作りやすい」と企画室プロジェクト企画グループの大久保圭氏は言う。

 工期や制作費が抑えられるのもメリット。時間が短いのに加え、背景などの作り込みが少なくて済むからだ。「タテアニメは全てデジタル制作。通常のアニメなら企画から完成まで1、2年、長ければ3年かかるところ、早ければ4カ月でできる。コストも3分の1~2分の1程度だ」(企画室プロジェクト企画グループの大塚裕司氏)。

 従来のアニメとは、ユーザーの見方も制作手法もコストも異なる縦型アニメの世界に乗り出したプロダクション・アイジーが狙うのは、縦型動画のプラットフォームという立ち位置だ。中塚氏は「今後は、アイジーが制作したアニメに限らず、他社にも活用される場になればいい」と展望を語る。

 実際、タテアニメには人気漫画をアニメ化した作品以外に、ゲームや施設のオフィシャルキャラクターなどを使ったアニメ作品も並んでいる。これらは企業が自社の持つコンテンツのテコ入れや、アニメ化との相乗効果を狙ったものだ。

 例えば、タテアニメで配信していた『ルナたん~1万年のひみつ~』は、NTTぷららのスマホ向け/テレビ向けゲーム『ルナたん~巨人ルナと地底探検~』が題材。ゲームの認知向上や、ゲームから足が遠のいた「休眠ユーザー」に働きかける狙いがあった。

 『えのしまんず』は新江ノ島水族館館内のデジタルサイネージと連携したコンテンツだ。同水族館のデジタルサイネージに登場する3匹のクラゲキャラをアニメにした。水族館でキャラクターを知った人に帰宅後もタテアニメで見てもらうことで、愛着を持ってもらうのが狙いだ。大塚氏は、「ゆるキャラを持っている地方自治体なども応用できる例」と説明する。

『ルナたん~1万年のひみつ~』はゲームから派生したアニメ。主人公のキャラクター「モクギョ」と「トリイルカ」の声は、小西克幸さん、金田朋子さんが務める
『えのしまんず』は新江ノ島水族館のキャラクターを使ったアニメ。スチャダラパーのBoseさんらが声を務める (C)EMC・ODDJOB

 前述の『カラダ探し』は、アニメ化までのスピードを重視したケースだ。アニメ化で人気を加速するのは漫画界の常套手段だが、ウェブで配信される漫画は雑誌などに連載される漫画より火が付くのが早いため、企画から数年単位の時間が掛かるテレビアニメでは旬を逃す可能性がある。「出版社が作品を推したいと思ったときに、即対応できるのがタテアニメの強み。本格的なアニメ化に向けたテストマーケティングに使う例も増えるのでは」と大塚氏は見る。

 これまでアニメというと、人気作品のアニメ化やオリジナル作品の制作が中心だった。近年はゲームのアニメ化なども進んでいるが、制作期間も制作費もかかるため、一般の企業がおいそれと手を出しにくいビジネスでもある。だが、従来のアニメよりも大幅に工期やコストを抑えられる縦型アニメならば、プロモーションを目的にしたコンテンツの制作も可能。一方のユーザー側には、内容が充実しているアニメを無料、もしくは低価格で見られるならば、オリジナル、プロモーションの区別なく見たいと思う人はいるだろう。縦型アニメの登場は、日本の有力コンテンツの1つであるアニメに、新たな用途を開くかもしれない。

(日経トレンディネット 平野亜矢)

[日経トレンディネット 2017年8月24日付の記事を再構成]

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