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バイオリニスト大谷康子 ウクライナと共演

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人気の実力派バイオリニスト大谷康子さんがウクライナのキエフ国立フィルハーモニー交響楽団と共演を重ねている。12月に東京、2018年9月にはキエフで共演する。両者の仲を取り持った演目の一つがチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」。ウクライナとロシアの緊張関係が続く中、ロシアの作曲家チャイコフスキーとウクライナとの深い縁を含め、共演の意義を語る。

「今年は日本とウクライナの外交関係樹立25周年という節目の年。私も微力ながらバックアップしたい」。大谷さんは12月のキエフ国立フィル来日ツアーでの共演に向けて抱負を語る。ウクライナを代表する指揮者の一人、ニコライ・ジャジューラ氏の指揮で、12月16日に神奈川県の藤沢市民会館大ホールにてフェリックス・メンデルスゾーン(1809~47年)の「バイオリン協奏曲ホ短調作品64」、12月21日の東京オペラシティコンサートホール(東京・新宿)ではピョートル・チャイコフスキー(1840~93年)の「バイオリン協奏曲ニ長調作品35」を弾く。

キエフ国立フィルと共演を重ねる

大谷さんがキエフ国立フィルと最初に共演したのはデビュー40周年の15年。同フィルの来日ツアーとして青森県の弘前市民会館と東京のサントリーホール、名古屋市の愛知県芸術劇場で公演した。3公演ともチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」を演奏し、東京と名古屋ではメンデルスゾーンの「バイオリン協奏曲」も加え、二大協奏曲を一挙に弾いた。

特に評判が高かったのがサントリーホールでの共演。「皇后陛下のご臨席を賜りましたサントリーホール公演の際に、キエフ国立フィルから『キエフの春音楽祭』に招かれた」と話す。ジャジューラ氏や楽団員と意気投合し、17年5月の「キエフの春音楽祭」に出演することになった。そして今年5月、大谷さんは初めてウクライナを訪問し、5月18日の同音楽祭オープニング・コンサートでカミーユ・サン=サーンス(1835~1921年)の「バイオリン協奏曲第3番ロ短調作品61」を弾いた。

「キエフの町じゅうにカシュタンというきれいな花が咲いていて美しかった」と振り返る。ウクライナはバイオリニストのダヴィッド・オイストラフ(1908~74年)やピアニストのスヴャトスラフ・リヒテル(1915~97年)ら20世紀の名演奏家を輩出した。特に同じバイオリニストとしてオイストラフを尊敬する大谷さんは「オイストラフも演奏した場所で弾けるなんて、本当に光栄なことだった」と話す。大谷さんは18年9月15日にもキエフを訪問し、マックス・ブルッフ(1838~1920年)の「バイオリン協奏曲第1番ト短調作品26」を演奏することが決まっている。

バイオリン独奏とオーケストラによる協奏曲で様々な演目を披露する大谷さんとキエフ国立フィルだが、共通するのはいずれもロマン派の音楽であること。愛器ピエトロ・グァルネリによる大谷さんの独奏は「歌うバイオリン」との定評があるだけに、美しいメロディーがふんだんに盛り込まれたロマン派の協奏曲が彼女には似合うし得意だ。特に繰り返し演奏しているチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」は、両者を取り持った重要なレパートリーといえる。

ウクライナと縁のあるチャイコフスキー

「チャイコフスキーの協奏曲では何秒で完璧に弾けるなど、速く正確に弾いて技巧を競う傾向が現代においてみられる」と大谷さんは指摘する。「でもジャジューラさんや楽団員の皆さんは、やはりこの曲はゆったり歌うところが多いと捉えていた。速く弾けばいい曲ではないと皆さんが言っていた。ゆかりの地の演奏家たちが、誇りにしている音楽について語る解釈は重要だと思っている」。大谷さんの「歌うバイオリン」がウクライナの音楽家たちの琴線に触れたといえる。

ウクライナ政府軍と親ロシアの分離独立派との武力衝突が続くなど、ウクライナとロシアは緊張関係にある。こうした中で、ロシアの作曲家チャイコフスキーをウクライナの人々はどう捉えているのだろうか。「チャイコフスキーは自分たちの誇り、宝物だとウクライナの人たちは盛んに言う。自分たちにはチャイコフスキーがいるんだよと何度も言われた」と大谷さんは話す。ウクライナの「国民的作曲家」と地元で受け止められているだけに、「『あなたのチャイコフスキーの演奏が好きだ』と言われた時には、本当に認めてもらったと思えてうれしかった」と5月のキエフでのコンサートを振り返る。

チャイコフスキーはウクライナと深い縁がある。彼の妹のアレクサンドラが嫁いだダヴィドフ家はキエフ郊外のカメンカ(カムヤンカ)に広大な領地を持っていた。「チャイコフスキーのお気に入りの土地で、そこに滞在し作曲をした」と大谷さんは説明する。ピアノ曲集「子供のアルバム 作品39」はカメンカで作曲され、当時7歳のアレクサンドラの息子ウラディーミルにささげられた。

「交響曲第2番ハ短調『小ロシア』作品17」もカメンカ滞在時にほぼ書き上げられた。「マンフレッド交響曲」を含め全7曲あるチャイコフスキーの交響曲の中でもあまり演奏機会に恵まれない作品だが、民謡調の親しみやすいメロディーが盛り込まれている隠れた人気曲だ。「愛称の『小ロシア』とは実はウクライナのこと」と大谷さんは指摘する。「政治的に難しい面もあるが、『小ロシア』を『ウクライナ』に書き換えようという動きがあるほどに、ウクライナを題材にした交響曲だ」と説明する。

ウクライナ国旗の空色のドレスで演奏

キリル文字やキリスト教正教会を中心にともに発展してきたウクライナとロシアの文化は切り離せない。ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」には「キエフの大門」が登場し、作家チェーホフは黒海沿岸のヤルタに移住するなど、ロシアの文化人はウクライナを愛した。ヤルタを含むクリミア半島は現在、クリミア共和国として事実上ロシアに編入されている。もともとはロシア帝国、旧ソ連という同じ国だった。

チャイコフスキーもロシア帝国における南国としてのウクライナに引かれた。きらびやかな「イタリア奇想曲」を作曲するなど、この作曲家の作品を聴けば、明るい陽光の差す南国を求める傾向があるのが分かる。「美しいものを求めた作曲家。持っている本質が暗いわけなので、明るいところを望んだ」と大谷さんは解説する。

ハクジュホール(東京・渋谷)を持つ白寿生科学研究所本社ビルの会議室で大谷さんにインタビューをした。ハクジュホールでは「大谷康子のヴァイオリン賛歌」と題した10年プロジェクトのシリーズ公演を続けている。今年11月12日の第2回「敬愛」では、彼女の代名詞ともいえるサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」をはじめスペイン音楽を中心に演奏する。しかしあまりもの人気でチケットはすでに完売している。10年プロジェクトとは直接関係はないが、大谷さんの最近の目立った活動として話題はウクライナに集中した。

インタビューの前にチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」の第1楽章と第2楽章を弾いてくれた。オーケストラ伴奏がないので独奏パートだけだが、きりっとして芯の通った音色で、明るく温かいメロディーを聴かせてくれた。インタビューの合間に見せてもらったキエフ公演の写真には、空色のドレスを着た大谷さんが写っていた。空のような青はウクライナ国旗の色だ。おちゃめなところがあり、周りを明るくする人柄もウクライナの人々に受けたのだろう。

死と向き合いながらも音楽会に通う国民

もっとも、大谷さんはロシアの音楽家とも積極的に共演している。今年6~7月にはユーリ・シモノフ氏の指揮によるモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演でチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」とプロコフィエフの「バイオリン協奏曲第1番ニ長調作品19」を弾いた。この両国の政治的対立を彼女は音楽家の立場からも憂慮しているようだ。

「日本にいると考えもしなかった。ウクライナでは戦闘地域で毎日のように人が亡くなる。キエフの修道院の壁や広場に写真が貼ってあった。何の写真かなあと思っていたら、亡くなった方々の追悼の場所だと気が付いた。戦死者の追悼が日常的に行われている」。国民が死と向き合う状況ならば、音楽会に通っている場合ではないと普通は思う。だが「歌劇場には毎日たくさん人々が集まってくる。どこも満員の盛況ぶり。音楽の持つ力を改めて実感し、私も音楽をやっていて良かったと深く思った」と語る。

1991年8月24日に旧ソ連から独立したウクライナ。キエフ北方のチェルノブイリで86年に起きた原発事故は旧ソ連の崩壊とウクライナ独立の遠因となった。「隣国ロシアとの軍事的緊張にさらされるウクライナ。北朝鮮の核ミサイル問題に直面する日本。ともに原発事故も経験したという点で、日本とウクライナは理解し合うことができる」と大谷さんの公演を支える音楽プロデューサーで、日本ポラロイドや日本ビクターの社長を歴任したフロンティアーズ社長の伊藤裕太氏は言う。「困難な状況を超えられるのが芸術の素晴らしいところ」と話す大谷さんとキエフ国立フィルとの共演はすでに2019年まで決まっている。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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