「失敗のリスクをとれるかどうかも大切です。イノベーションを起こすのがグーグルの存在理由でもあるので、新しいことができなければ意味がありません。そもそも失敗を隠したり、その場で『わからない』と言えなかったりする環境では、非常に無駄が多くなります。わからないまま仕事を進めて、あとで発覚したほうが大ごとになるんです。だから、そういう『安全な』環境を守ることがマネジャーの大切な仕事なんです」

社員を同じ方向に向ける「OKR」制度

――働き方が多様になると、人事考課やマネジメントが難しくなりませんか。

岩村氏は、仕事を進めるうえで「社員が『心理的に安全』と思える空気を保つのが大事」と話す

「大前提として、グーグルでは時間ではなく成果で評価します。加えて、社員を同じ方向に向けるための『OKR(オブジェクティブ・アンド・キー・リザルツ)』という制度があります。これはチームの目標を設定し、そこで自分が何をするのかを、マネジャーと相談しながら設定するやり方です。全社で、このOKRを設定し、社員が共有します」

「目標をすべて達成したという『What』も大切なのですが、『How』も同じように大切です。目標を達成したとしても、その目標自体が野心的でなかった可能性もありますよね。グーグルには『10%ではなく、10倍大きく考えよ』という考え方があります。前年より10%ずつ業績をあげる目標よりも、目先が赤字でも20年後に10倍になっているほうがイノベーションだと考える。だから、単純に目標を達成したかどうか、ではないんです」

――いつでもつながれる技術の進化もあり、「ワーク」と「ライフ」の境目が昔以上になくなっている印象があります。

「そうだと思います。ワーク、ライフ双方にシナジーが生まれるようになると思います。『ワーク・ライフ・シナジー』とでもいいますかね。とはいえ、24時間仕事のことを考えているというのはよくないんです。年がら年中、連絡がきたらすぐ反応するというようなのは避けた方がいいと思います。たとえば、私のチームでは、週末はメールしないと決め、『どうしても週末中に反応がほしいときは電話にしよう』というルールにしています。時差がある海外はしかたないけれど、夜10時以降はメールをしないようにする、とか。お互いの働く時間を配慮することが大切です」

「自分が常日ごろ温めて考えていることは、ちょっとしたきっかけや刺激でまとまることもあります。私たちの仕事は、テクノロジーで人の生活をよくするためのものなので、日々の生活にたくさんのヒントがあります。オフタイムが仕事につながるから悪いわけじゃない。自分の人生のミッションにつながる仕事に出合ってほしいし、みずからの仕事をそういう仕事にしていくべきではないでしょうか」

岩村水樹
 グーグル日本法人専務執行役員CMO兼アジア太平洋地域マネージングディレクター。東京大学教養学部卒業後、電通に入社。スタンフォード大学にてMBAを取得後、2007年グーグルに入社。著書に「ワーク・スマート」(中央公論新社)がある。

(松本千恵)