同じスーツでも着こなし方で印象が大きく変わるビジネスマンに必須の仕事着「スーツ」。にもかかわらず、その正しい着こなしは、なかなか難しいもの。装いを含め、エグゼクティブ向けに「ふさわしい存在感」の演出方法をアドバイスしているプレゼンスコンサルタントの丸山ゆ利絵さんに、「身だしなみ」としてのスーツスタイルについて語ってもらう。
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スーツスタイルが決まっていると、「できる男」に見えます。それもそのはず。スーツとは、もともとそのように見えるように、長い歴史の中で育まれてきた衣装なのです。スーツというと、多くの人がデザインや色柄にばかり目を向けがちですが、まず意識しなければならないのは、スーツを構成するさまざまなディテールです。目立ちにくい部分ではありますが、実はその人の印象を左右します。注意すべき5つのポイントをご紹介します。
1. サイズ
日本のビジネスマンのほとんどが、オーバーサイズのスーツを身に着けているのが実情です。ダブダブの制服を着せられた中高生時代から染みついた「大きくなっても大丈夫なように」といった感覚で、サイズを選んでいるのではないでしょうか。
あるいは逆に、ピタピタした短いジャケットに裾も短めのスリムパンツといったスーツ姿の方もいらっしゃいます。これは、スリムなシルエットを好む最近のトレンドによるものですが、行き過ぎるとまるで軽業師のように見えてしまいます。
すでに流行は変化しつつあり、シルエットはゆったりしたものになっていくとみられます。しかし、トレンドがどのように変わろうとも、「仕事ができる」「信頼できる」といった印象を、スーツスタイルで表現したいのなら、「フィット」というサイズ感を忘れないでください。
スーツの着こなしはサイズ感が重要スーツを選ぶ際、以下に注意するだけで、「見た目」が大きく変わるはずです。
身幅
椅子に座った際、上着のボタンをはめるとやや苦しいくらいが適当。立ったまま、ボタンを留めた状態で、こぶし1個分が入るくらいが適正サイズ。
肩
肩の前や後ろに「ハ」の字のしわが出ないこと。肩パッドがちょうど肩に載る。上腕にくぼみやしわができない。あるいは上腕が肩を超えて出っ張らない。
パンツの幅
太もも部分に横じわが何本も出るのはサイズが小さすぎ。縦しわが何本も入るのはサイズが大きすぎる。
裾丈
「ワンブレーク」、すなわちパンツ裾が靴の甲に乗ってたわみができるくらいの長さが適当。たわみがない「ノーブレーク」は若く軽い印象を与える。
いずれも、サイズが適正でないと、妙なしわやいびつなへこみ、出っ張りが出てしまいます。既製品を購入する際は、正面からだけでなく、横、背後を厳しく点検しましょう。気になるようであれば、何回も試着をしてください。
そして大切なのが「お直し」です。
「お直し」でピタッと決まる一着を寸法直しといっても、ほとんどは裾丈を修正するだけではないでしょうか。身幅や身丈、袖丈など、お直しによってフィットするシルエットが手に入ります。サイズが合っていないスーツはだらしなく見え、スーツが本来持っている「仕事ができる」「信頼できる」「格好良い」ように見せる機能を果たしません。つまり、着る意味が半減してしまうのです。
もちろん、お直しにはその分、別料金がかかりますが、見た目もよくないスーツを何着も持っているより、ピタッと決まる一着のほうがどれだけ価値があることでしょう。
2. シャツ
こちらも多くの人がサイズで失敗しています。
首回りにゆとりがありすぎてスカスカだったり、逆に苦しいのか、第1ボタンをこっそり外して、その上からネクタイを締めている人もいます。これだけで、どこか変な決まらない印象となってしまいます。
首回りは指が2本入るほどゆとりがあるのがちょうどよいサイズです。カラーがピタッと吸い付いたように首を覆い、「できる」「スキがない」といった印象を演出します。
オーバーサイズのシャツを着ていると、中で妙なたわみやしわが出てしまいます。これも変な決まらない印象をつくってしまう原因となります。
これもスーツと一緒ですが、サイズを厳しく吟味して「フィット」するシャツを選んでください。消耗品でもあるシャツに「そうお金をかけられない」と考える方も少なくないでしょう。しかし、毎日着替えて身に着けるものだからこそ、きちんとした印象を与えるシャツを選びたいものです。
3. スーツとシャツの袖丈のバランス
スーツの袖が長いと、「着られている」ようで、だらしない印象にスーツの袖丈は、腕を下げたときに袖口が親指の先から11~12センチメートルのところ、手首のくるぶしにあたる部分を軽く隠すくらいがちょうどよいでしょう。それより袖が長いと、「着られている」ようで、だらしない印象となってしまします。
シャツの袖口はスーツの袖先から1.5センチメートルほど出るのがちょうどよい長さです。これ以下でも、これを大きく上回っても、だらしがなく、「できない」印象となってしまいます。
試着のときには上着を着て、腕を伸ばした状態だけでなく、軽く曲げたり、伸ばしたりして、袖口の出方を見ましょう。シャツのカフスサイズがきつすぎると、袖がきれいに出ないので、注意しましょう。
4. 所作
これこそ「ほんのちょっとしたこと」ですが、実は一番差がつくところです。
スーツを着るときは動作に気を付けてください。例えば、ジャケットを羽織ったときに、両手にそれぞれ左右の襟を持ち、シュッと下におろします。襟が首にぴたっと合い、余計な隙間が生まれないように着るためのちょっとした動作です。
また、時々無意識にパンツをウエストまで引っ張り上げてしまう人がいますが、これは避けたい動作です。パンツは「腰ではく」ものなので、パンツ丈もシルエットもそれに合わせています。ウエストまで引っ張り上げると、丈が合わなくなり、せっかくのシルエットも崩れてしまいます。
5. 靴
とても多くの人が靴で印象を損ねています。スーツに気をかけても、ついつい足元には無頓着になってしまうのかもしれません。
目立つのは紺やダークグレーなど、ダーク系のスーツに明るいブラウンの靴を合わせているケースです。おしゃれと思ってのコーディネートなのでしょうが、残念ながら「できる人」には見えません。すっきりとした全身の統一感に欠けるためです。ダーク系スーツには靴もダーク系で合わせた方がいいでしょう。
そして、絶対に注意したいのが靴の「艶」と「光沢」、そしてそのための「お手入れ」です。
どんなに生真面目にスーツを着ていても、靴がほこりで汚れていたり、つま先が色あせ、何本も横じわが入って反り返っていたりするようでは、印象を損ねます。
成功する・している人と、うだつが上がらないであろう人は、足元を見ればすぐにわかります。見る人に服飾の知識がなくても、すぐに「ダメダメ感」を想起させてしまいます。その時点で、ビジネスに対する姿勢も能力すら、「ダメ」な印象を与えてしまうのです。
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以上、「できる」「できない」といった印象を分ける「明暗ポイント」を5つご紹介しました。いずれも、ほんの少しだけ注意すれば、すぐさま改めることができることばかりです。「仕事ができる」「信頼できる」といった印象を与える「身だしなみ」と「おしゃれ」は別物であり、まったく考え方の異なるものです。ぜひ、今すぐにでも姿見の前に立って全身をチェックしてください。
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丸山ゆ利絵ホテル西洋銀座やアークヒルズクラブなどを経て2010年、経営者などに「ふさわしい存在感」の演出方法を助言するコンサルティング会社、アテインメンツ(大阪市)を設立、代表に就任。15年、ビジネスマンに正しいスーツの着方を指南する「スーツ塾」を開講。 著書に「『一流の存在感』がある人の振る舞いのルール」(日本実業出版社)など。 「できる男のスタンダード講座」記事一覧
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