お酒で赤くなる人、ならない人 その違いはなぜ?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)これまでの飲酒経験
(2)遺伝子
(3)肝機能
(4)体内の水分量
正解は、(2)遺伝子 です。
顔が赤くなる原因はアセトアルデヒド
みなさんもご存じのように、お酒を飲んで赤くなる人と、赤くならない人がいます。そもそも、なぜお酒を飲むと赤くなるのでしょうか? そして赤くなる人とそうでない人の違いはどこにあるのでしょうか?
「お酒を飲んで顔が赤くなり、さらには血圧が上がったり、冷や汗をかく、動悸(どうき)がするなど、複合的な症状を『フラッシャー』と呼びます。顔が赤くなるのは、体内でアルコールが代謝される際に発生するアセトアルデヒドの毒性が大きな原因です」。成増厚生病院東京アルコール医療総合センターでセンター長を務める垣渕洋一さんはこう説明します。
「アセトアルデヒドの作用で、顔などの毛細血管が拡張されることで顔などが赤くなります。アセトアルデヒドは交感神経の刺激作用がとても強力で、これにより脈拍が上がり、その結果として、血圧が上がり、冷や汗が出る、筋肉が緊張するなどの症状が引き起こされます。さらにアルコールが本来持つ血流を促す作用も手伝って、顔の赤さが助長されるというわけです」(垣渕さん)
体内に入ったアルコールの約9割は肝臓で代謝されます。その際、アルコール脱水素酵素によって、アルコール(エタノール)はアセトアルデヒドに分解されます。その後、「アセトアルデヒド脱水素酵素」(英語の略称はALDHで、1・2・3の3つの型がある)により、アセトアルデヒドは無毒な酢酸になり、肝臓から排出されます。
アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性がカギ
「実は顔が赤くなる、ならない人の差には、アセトアルデヒドを分解する『アセトアルデヒド脱水素酵素』(ALDH)が大きく影響しています。ALDHの1つである『ALDH2』の活性は、その人の遺伝的要素によって決まります。ALDH2の活性には人によって生まれつきの強弱があり、3タイプに分類することができます」(垣渕さん)
ここで3タイプの違いを整理しましょう。
ALDH2が安定で正常な動きをするのが「活性型(NN型)」。両親から、分解能力が高いとされるN型を受け継いだ人です。自他ともに認める酒豪で、酒を飲んでも赤くならないノンフラッシャーがほとんどです。
2つ目は「不活性型(ND型、低活性型と呼ぶ場合もある)」。分解能力が高いN型と、分解能力が低下したD型をそれぞれ引き継いだタイプで、まったく飲めなくはないが、基本的には酒に弱くなります。普段からアルコールに親しんでない場合、顔も赤くなりやすい。
3つ目はALDH2が完全に失活した「失活型(DD型)」。両親からD型を引き継いだタイプです。酒に弱いどころか、まったく飲めないといったほうが正しく、ほとんどの場合がフラッシャーです。奈良漬けを食べた程度でも真っ赤になってしまうのがこのタイプです。
日本人などの黄色人種の場合、活性型は50%程度、不活性型が40%程度で、失活型が10%程度となっています。一方、白人や黒人はほぼ100%が活性型です。
なお、顔への出方には個人差もあるようです。「顔が赤くなる原因は主にアセトアルデヒドにあります。このため、ALDH2の活性が高い活性型の人はノンフラッシャーがほとんどで、失活型ならフラッシャーが多くなります。ですが、毛細血管への反応には個人差があり、必ずしも一致しないケースが見られます」(垣渕さん)
遺伝子検査で自分のタイプを知る
では、自分がどのタイプなのか知るにはどうすればいいのでしょうか?
「遺伝子検査で、自分のタイプを調べられます。自分では活性型と思っていても、実は不活性型だったりする可能性も大いにあります。専門機関などで検査されることをおすすめします。最近では一般向けの遺伝子検査サービスでも分かります」(垣渕さん)
予算的に遺伝子検査が厳しい場合は、「アルコールパッチテスト」という手もあります。やり方は簡単で、脱脂綿に市販の消毒用アルコールを含ませ、上腕部の内側にテープで7分間固定し、はがした直後と10分後に、脱脂綿が当たっていた肌の色でALDH2の活性を見ます。脱脂綿をはがした後、肌の色が変化しないのが活性型、10分後に赤くなるのは不活性型、直後に赤くなるのは失活型という判定になります。ただ、正確に自分のタイプを知りたい場合は、やはり遺伝子検査を受けたほうがいいでしょう。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday 2017年9月25日付記事を再構成]
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