「筋肉の衰え」阻止する歩行術 インターバル速歩とは

体力に自信がない、やり始めてもなかなか続かないという人に朗報だ。ウオーキングの継続率90%、筋力をアップさせて、病気予防にも効果を発揮するという歩行術を、スポーツ医学の専門家に聞いた。
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ご存じだろうか。筋肉は20代をピークに1年に1%ずつ減っていく。運動をせずに放っておけば10年で1割減。これは70代で寝たきりになりかねない減少率だ。「筋力の低下は生活習慣病の増加とダイレクトに相関しています」とスポーツ医学を専門にする信州大学医学部教授の能勢博さん。
仕組みはこうだ。筋肉の中に多く存在するミトコンドリアは、劣化すると活性酸素を出して、細胞を傷つけ始める。これに対して炎症反応が起きる。脂肪細胞や免疫細胞、脳細胞で起きた炎症反応が、糖尿病や高血圧、認知症などを引き起こす。ミトコンドリアが劣化する理由は、加齢による筋肉の萎縮。すなわち生活習慣病の根本原因の一つが、老人性の筋萎縮症、サルコペニアだったのだ。
ではどうしたらいいか。「筋肉を元気にすることです。ミトコンドリアの栄養源でもある乳酸が出るような運動を継続的に行えばいい。米国スポーツ医学会では、最大酸素摂取量の70%以上の負荷がかかる運動を週4日以上、合計60分以上行うと、6カ月で体力は10%向上するとしています」
年齢にかかわらず、「ややきつい」と感じる速歩きが、その人の最大酸素摂取量の70%に匹敵するという。「普通のウオーキングでは最大酸素摂取量は40%ぐらいで、ほとんど乳酸が出ていません。たとえ1万歩歩いても体力の向上にはあまり寄与していないのです」

息が上がるくらいの速歩きを継続するために、能勢さんが提唱するのが「インターバル速歩」だ。3分の速歩き+3分のゆっくり歩きを1セットとし、1日5セット行うと速歩きが合計15分となる。
「きつい運動をすると筋肉が酸素不足になり、大量の乳酸が出て息切れがする。しかし、2~3分休むと酸素が供給されて乳酸も代謝され、再開できます。15分一気に速歩きするよりも、速歩きとゆっくり歩きを交互に計30分歩くほうが、継続率が飛躍的に高まることが調査で明らかになりました」
インターバル速歩を週に4回行えば、米国スポーツ医学会が指標とする、最大酸素摂取量の70%以上の負荷の運動が週60分になる。6000人以上の中高年を対象に5カ月間の効果検証を行った結果、継続率は90%以上、体力は最大で20%増加。要介護の人でも体力が10%向上したという。
「2週間継続すると、体重が減る、血圧が下がる、よく眠れるなどの自覚症状が表れ始めます。ホルモン分泌が促され肌にも張りが出る。誰でもいつでもできますし、いいことずくめ。"医者いらず"です」
インターバル速歩とは?
速歩きとゆっくり歩きを3分間ずつ繰り返す。3分で息切れがし始めるくらいの速歩きであることがポイント。1日でトータル30分(そのうち速歩きは15分)行う。続けて30分でなくても構わない。週に4日、計60分の速歩きを目指そう。


(文 中城邦子)
[日経おとなのOFF 2017年10月号記事を再構成]
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