マヤのピラミッドに科学のメス、隠し部屋の謎を解明へ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/9/30
ナショナルジオグラフィック日本版

メキシコ南部にある古代マヤの遺跡チチェン・イッツァにそびえるピラミッド。エル・カスティージョと呼ばれている。(PHOTOGRAPH BY CHRIS MILLBERN)

春分の日と秋分の日の夕暮れ、エル・カスティージョ(スペイン語で「城」の意)と呼ばれるピラミッドの北側の階段に、沈む太陽がヘビのような影を投げかける。1000年以上前に古代マヤ文明によって建てられたこのピラミッドは、高さ約30メートル。メキシコのユカタン半島にあるチチェンイツァ遺跡にある。世界遺産にも登録されている人気の観光地だ。

遺跡は100年以上にわたって探検家や考古学者に調査されてきたが、その謎はいまだ解かれていない。土地の伝説にあるように、ピラミッドの下には地下水路が存在するのか……。また、一部の考古学者が考えているように、この建造物の中心には隠し部屋があるのか……。

その手がかりを求めて、さまざまな専門分野からなる科学者やエンジニアのチームが、50年ぶりとなるチチェンイツァの徹底調査を始めている。

隠し部屋を探すため、エル・カスティージョの中心に向かう研究者たち。(PHOTOGRAPH BY CHRIS MILLBERN)

「これほどの規模の調査は初めての試みです。しかし、従来は不可能だった形でこの遺跡を理解できるようになると確信しています」。メキシコ国立人類学歴史研究所の水中考古学者で、グレート・マヤ・アクイファー・プロジェクトのディレクターでもあるギレルモ・デ・アンダ氏はそう話す。「このデータによって、入り組んだ地下世界が存在するという土地の伝説が本当かどうか、結論づけることができるはずです」

ナショナル ジオグラフィックが支援する研究者の一人、デ・アンダ氏によると、この都市に住んでいたマヤの人々にとって、洞窟や地下通路、そしてセノーテと呼ばれる天然の陥没井戸は、神々の世界との境界なのだという。「マヤの人たちは、実りから雨や雷まで、あらゆることが地下世界に由来すると考えていました。残された手がかりから、彼らは霊界の住人たちに祈りを捧げたり願いごとをしたりする労をいとわなかったことがわかります」

洞窟には水没している部分もある。考古学者のギレルモ・デ・アンダ氏は腰まで水につかりながらダイビング用のライトでマヤ時代の陶器の破片を照らす。(PHOTOGRAPH BY CHRIS MILLBERN)

人間の生贄もたびたび捧げられた。デ・アンダ氏は、チチェンイツァの「聖なるセノーテ」(「生贄の井戸」とも呼ばれる)で見つかった数百の人間の骨を調べたことがあり、死亡時かその間際につけられたと考えられる傷や骨折の跡を見つけている。

最新技術で遺跡を調査

かつて、チチェンイツァなどを訪れた考古学者や盗掘者は、遺跡を破壊して遺物を集め、持ち出した。しかし、構造物にほとんど影響を与えない最新技術を使えば、環境を乱すことなく遺物を見つけたり調査したりすることができる。そういった技術の大半は、ナショナル ジオグラフィックのエンジニアが開発または採用したものだ。

チチェン・イッツァの洞窟。天井から床近くまで伸びる石筍は、マヤの神話に登場する地底と天空をつなぐ木を思わせる。(PHOTOGRAPH BY CHRIS MILLBERN)

今回のプロジェクトは数年にわたる大がかりなもので、特別に改良された地中レーダー(GPR)を使って隠された通路を探したり、内壁の向こう側を確認したりする予定だ。また、GPRなどの遠隔イメージング技術を使ってピラミッドなどの近辺にある地下通路や洞窟を探し出し、地図を作成する作業も予定されている。

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