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iPhone全新機種に「AIチップ」 数の論理で先行

西田宗千佳のデジタル未来図

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NIKKEI STYLE

アップルが2017年11月に出荷を始める「iPhone X(テン)」はアップルのティム・クックCEOが「スマートフォン(スマホ)の未来」と呼ぶほど力の入った製品だ。ホームボタンの廃止など見かけの変更だけではない。何よりも重要なのはiPhone Xのために準備し、iPhone 8にも組み込んだAI(人工知能)機能を盛り込んだ新プロセッサー。これこそが未来を担っているのだ。

素早く正確に「顔認識」の秘密

iPhone Xでもっとも注目されているのは「顔認識」機能だ。iPhone Xにはホームボタンがなく、同時に指紋認証用のセンサーである「Touch ID」もなくなっている。それをカバーするため、カメラを使って個人の顔を個体識別し、個人の認証に使う。アップルはこの機能を「Face ID」と呼んでいる。

顔認識を使えばボタンや指紋センサーは不要になるが、過去の顔認証は「写真でも認証できる」「髪型や服装が変わると認証できない」「認識に時間がかかる」といった不完全さを抱えていた。

アップルが開発した、新しい「Face ID」はこれらの欠点を克服した。服装や髪型の変化があっても「同じ人物」と判別する能力を持ち、逆に写真など平面のものをかざしても認証されない。しかも判定にかかる時間は「一瞬」。スマホの画面を見るため自然に顔の前にもってくれば、それだけで簡単に「スマホのロックが外れる」。

筆者も発表会場で実際に試してみたが、非常にスムーズに「認証」される。スマホが人間と同等(速度面では同等以上かもしれない)の顔認識能力を備えた、ということだ。

iPhone XはFace IDを導入するため、元々は自撮り用だったフロントカメラを、多数のセンサーを組み合わせた顔の立体構造を把握可能なものに変更している。

だが、カメラの改良だけで高度な顔認識が実現できたわけではない。アップルが採用した新しいプロセッサーとの組み合わせで初めて可能になったのだ。

オリジナルプロセッサー「A11 Bionic」の野望

アップルはiPhone Xで、「A11 Bionic」という新しいプロセッサーを採用している。アップルはiPhone 4(2010年発売)以降の製品で、CPUなど中核となる機能を集積したプロセッサーに、自社開発の「Apple Aシリーズ」を採用している。初期のものは、複数の回路を一つのチップに集積したというだけでさほどオリジナリティーはなかったが、徐々に自社オリジナルの比率を高めてきた。

今回のA11 Bionicは特にオリジナルの部分が多い。16年までは英Imaginationからの技術供与を受けて開発していた画面表示を処理するGPU部分がアップルオリジナルの「GPU Family4」になり、カメラ処理用の「イメージ・シグナル・プロセッサー(ISP)」にもオリジナルの回路が搭載されている。そして新に搭載したAI処理用の「Bionic neural engine」もオリジナルだ。Face IDの処理を行っているのは、このエンジンである。

音声認識や画像認識の重要度はどんどん増している。人間が外界を認識するのと同じように、機械が正しく外界を認識してくれるようになれば、操作はもっと簡単になる。

だが、人と同等以上の認識能力を持たせるためには、かなり多くの計算能力が必要だ。一般的なCPUでは動作速度の面でも消費電力の面でも厳しい。「Bionic neural engine」は、これを効率よく行う。今後は、顔認識だけでなく、音声認識や行動認識など、「より人間に近い反応を行い、スマホ上のでの操作を楽にする」ことに使われていく。

とはいうものの、「スマホにAI専用のパーツを導入する」という発想は、アップル独自のものではない。

アップルがiPhoneを発表するほんの少し前の9月1日、世界第三位のスマホメーカーである中国のファーウェイは、「Kirin 970」というスマホ用プロセッサーを発表している。Kirin 970の特徴は、アップルがiPhone Xに使った「A11 Bionic」と同じく、AI処理チップである「NPU」を内蔵したことだ。ファーウェイは次世代スマホの発表を10月に予定しているが、アップルの動きを察知し、一足早く「部品だけ」発表した。

半導体業界から聞こえてくる話として、「プロセッサーの中に、汎用処理系に加えてAI処理系を入れる」のはかなり一般的な発想であるようだ。現在のところ発表したのはアップルとファーウェイだけだが、他社も同じアプローチを採用するのは間違いない。

CPUがどんどんスピードを上げていく時代はずいぶん前に過ぎ去っている。特に消費電力を増やさずに性能を上げるのは難しい。そこで、ある目的専用の効率の良い処理系を入れ、「半導体内のトランジスタをより効率の良い回路に割り振る」発想が必要になる。CPUを楽にして高速化を図ることが重要なのだ。

少なくともこの調子でいけば、2017年末以降に登場するスマホには、「AIチップ内蔵」というキャッチフレーズを使うものが増えてきそうな雲行きである。また同様の半導体は、監視機器や自動運転など、「画像や音声の認識がつきまとう場所」でも必要になる。だからこそ、スマホからIoT、機器まで「AIチップ内蔵」が今後トレンドになってくるわけだ。

「一気に数を増やす」のがアップルのやり方

話をアップルに戻そう。

すでに述べたように、「AI処理チップの内蔵」という発想は、アップルの独創ではない。しかしアップルの戦略はなかなか独創的である。

AI処理が重要とはいえ、まだ先端的なものであり、多くのスマホでは活用されていない。しばらくは高価格製品の差異化のために搭載されるだろう。AI処理系は規模が大きく、高価なチップになるためだ。

スマホメーカーのほとんどが、「300ドルまでの低価格機」と「600ドル以上の高級機」を両方を手がけて、そのミックスでビジネスをしている。アップルのライバルであるサムスンやファーウェイも例外ではない。

だがアップルは、今秋に発売する「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「iPhone X」すべてにAI処理チップを搭載する。iPhoneの特徴は、高付加価値な製品が圧倒的に売れるということであり、旧機種や低価格機種の販売比率は少ない。

規模が大きく新しいプロセッサーは、それだけコストが高くなる。だが、一気に量産すればコストは大幅に下がる。高度なAI処理ができる機器が一気に市場に出回るので、それを前提に、アプリやサービスを構築可能になってくる。だからアップルはハイエンドのiPhone Xだけでなく、iPhone 8系にもA11 Bionicを搭載するのだ。

アップルはAI戦略において、アマゾンやグーグル、マイクロソフトの後塵を拝している、という評価を受けることが多い。理由は、クラウドによる処理の部分で他社が先行している印象が強いからだ。しかし、端末内でのAI利用ではアップルが先行することになりそうだ。

独自のプロセッサーを作ること、そしてそれを活用する、OSを軸にした独自ソフトのコンビネーションを、一気に量産製品に持ち込むのがアップルの戦略だ。アップルの強みは、iPhoneの「数」。人気商品である数の論理を生かし、今後の展開を有利にする基盤を作ろうとしているのだ。

西田宗千佳
 フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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