東海中学の授業風景=同校の提供写真

講座数は毎回50前後と多く、ユニークな講座が目白押しだ。今年6月のプログラムでも、将棋の加藤一二三さんによる「将棋界のレジェンド『ひふみん』が語る将棋の話、人生の話」や、円谷プロダクション元社長の円谷英明さんが講師を務めた「国民的ヒーローから学ぶ著作権ビジネスと海外進出の難しさ」、林正彦国立天文台長の「宇宙はどうなっているか?」など、興味深いテーマが並んだ。

カヅラカタ歌劇団もサタデープログラムも歴史は浅いが、いずれも昔からの東海の自由な校風を体現している。林校長は「個性は枠を作ってしまうとなかなか伸ばせない。枠にはめないよう自由な環境を作ってやり、生徒の活動を妨げないことが大事」と生徒の活動を後押しする。

水練会で絆強まる

東海はOB同士の絆の固さでも知られる。地元出身者が多いのも理由の一つだが、林校長が「まさに東海の伝統」と力を込めて語る「水練会」の存在がある。

水練会は、中1の7月に三重県伊勢市で行う4泊5日の臨海学校で、1911年から続いている。目玉は最終日の遠泳。全員がふんどし一丁になり、足の着かない恐怖や慣れない波や潮の流れと戦いながら、隊列を崩さずに、顔を水から出したままの平泳ぎで75分間(泳力のない生徒は、浅瀬で1000メートル)泳ぎ切る。「水練会は、東海生になるための通過儀礼。この集団生活を経験して初めて東海生になる」と林校長。水練会には多くの上級生が助手として参加し、後輩たちの面倒を見る。こんなところからも、縦横の固い絆が生まれるようだ。

国公立医学部に121人

17年の大学合格実績は、東京大学が30人、京都大学が36人、地元の名古屋大学は63人と、ライバルの愛知県立旭丘高校と競う。しかし、国公立大学医学部医学科の合格者数は実に121人と、全国トップの実績だ。しかも名大の合格者のほぼ半数は医学部だ。東大理科1類や同2類よりも合格基準が高いといわれる旧帝大の医学部に多くの生徒が進学。東海生は「東大よりも医学部」という意識が強い。

東海OBは「お医者さんの息子が多く、半数近くは医学部志望。名古屋人は地元愛が強い。一生地元で暮すなら医者という発想でしょうね」という。

東海は今年度、生徒数の減員に踏み切った。中学はそれまでの1学年400人から同360人に。それに伴いクラスの数も10クラスから9クラスに削減。高校受験組が加わるため中学より生徒数が多い高校も、数年後には現在の1学年約440人から同400人に減る。

私立校にとって経営にも響きかねない規模縮小を決断した理由について、林校長は、「従来の規模のままでは、設備面でも教員の面でも時代の変化に即し、かつ高いレベルの教育を生徒に与えてやることが、だんだん難しくなるため」と説明。その上で、「例えば、IT教育やアクティブラーニングなど時代の要請だと思うものはどんどん取り入れていく一方で、時代に流されない教育をすることも大切。そのあたりは懐深くやっていきたい」と抱負を語る。東海は来年、創立130年を迎える。不易流行の考えで変化の時代に挑む構えだ

(猪瀬聖)

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