「よりどころ、ですか。小さい時は、時計のネックレスをずっとしていたな。『お母さんの形見なの』と言いたくて……。お母さん? 生きていますよ。ただただそのセリフを言ってみたかっただけなんです(笑)。たぶんモノを大事にしている自分がうれしかったんでしょうね。それまではモノを粗末にして、いろいろなモノを足で蹴ったりしていた子どもでしたから。

この仕事を始めてからは、ずっと映画『魔女の宅急便』に出てくる黒ネコのジジの人形を持っていました。シブリの作品が大好きなんですよ。仕事にも持っていくんです。持っていると緊張が和らぐような気がして。本読み(キャストやスタッフが初めて一堂に会し、脚本の読み合わせを行う場)のときとか、緊張するので、ずっと膝の上で握っていた。本読みが終わったときは、ジジが手汗でびっしょりなんてこともよくありました。今はもちろん持っていかないですけど(笑)、相変わらず緊張はします。でも、それはもう仕方がないこと。乗り越えていくしかない。

ジジを持っていかなくなったのは、家に忘れたことがあったんです。そのときに『あ、なくても大丈夫か』と思ったのがきっかけ。でも、いまだに捨てられませんね。あれから3回くらい引っ越したんですけど、そのたびに連れてきています」

現在、29歳。今年は『東京タラレバ娘』で3年ぶりに連ドラに出演、『ユリゴコロ』で5年ぶりに映画主演するなど、精力的な活動を見せる。

「年齢とともにお芝居が難しくなってきた。『お芝居は難しい』という自覚がどんどん増している気がします。

今、大事にしているのは『きょうは1日しかない』という気持ち。『あした頑張ればいい』と思いたくなるときもあるんですけど、全然そんなことはなくて、あっという間に置いていかれるし、あっという間に人は死んでしまう。

でも自分が死んでも、自分が出た作品は残る。自分より長生きする。だから簡単に処分される作品じゃなく、自分より長く残って、自分より身近に手に取られるような作品になってほしい。作品に臨むとき、そう思うようになりました」

出演した映画について「自分より長く残って、自分より身近に手に取られるような作品になってほしい」と思うようになったという
吉高由里子
1988年生まれ、東京都出身。2006年に園子温監督作『紀子の食卓』で映画デビュー。08年、蜷川幸雄監督の『蛇にピアス』で初主演、日本アカデミー賞新人俳優賞、ブルーリボン賞新人賞などを受賞。以降、『婚前特急』(11年)、『僕等がいた 前篇・後篇』(12年)、『横道世之介』(13年)などに出演。14年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインを務めた。17年はドラマ『東京タラレバ娘』に出演。18年は『検察側の罪人』が公開予定。
(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

『ユリゴコロ』

父親が余命わずかと知り、婚約者はこつ然と姿を消した。失意の日々を送っていた亮介は、実家の押し入れで『ユリゴコロ』と書かれたノートを見つける。そこに書かれていたのは「美紗子」と名乗る殺人者の衝撃の告白だった……。監督+脚本・熊澤尚人 原作・沼田まほかる(『ユリゴコロ』双葉文庫) 出演・吉高由里子、松坂桃李、佐津川愛美、清野菜名、清原果耶、木村多江、松山ケンイチ 9月23日(土)全国ロードショー

(ライター 泊貴洋、写真 藤本和史)

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