犬にも感情がある? MRIで迫る動物の脳、最前線

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/9/25

――イヌと人間は、重要な脳の部位の構造・機能がよく似ていると示唆していますね。

はい、尾状核という部位です。大半の動物、特に哺乳類の脳には一般に見られる部位で、ここにはドーパミン受容体が密集していることがわかっています。ドーパミンは従来、快楽の神経伝達物質であると考えられてきましたが、実際の働きはもっと複雑です。

尾状核は、本人が何かを期待しているときに活動が活発になります。つまり何かが起こり、その情報にどう対処するかを自分で決めなければならないといった場合です。その情報がポジティブなものであるときには、尾状核は特に強い反応を示します。

イヌの脳でも、この尾状核が活発なときには、彼らが何か重要なことを経験し、しかもそれが彼らにとって好ましいことであると解釈できます。

言うまでもなく、イヌの脳は人間のものと同じではありません。おそらく最も大きく異なるのは、言語に関する領域でしょう。現在取り組んでいる中でも特に重要な問題は、イヌは実際のところ、われわれの言語をどれだけ理解しているかということです。(参考記事:「犬は飼い主の言葉を理解している、脳研究で判明」)

人間は言葉による命令を通じて、イヌにいろいろな芸や技術を教えることができます。しかしイヌが言葉というものを、他の何かを表すための記号であると理解しているのか、それとも人間の話すことを、より直接的なやり方で処理しているだけなのかはわかりません。おそらく彼らは、音と特定の行動を結びつけているだけであり、そこに抽象的な意味に対する深い理解はないのだろうと考えられます。

――ペットは飼い主に対して、ごほうび目当てではない「本当の愛情」を感じているのでしょうか。

これは食べものをもらうことと、単なる喜びを得ることとの違いに関連した問題です。

実験では、まずイヌに食べものがもらえるという合図代わりの物体を見せ、次に飼い主が目の前に現れて「いい子だね!」と褒めてくれるという合図代わりの物体を見せました。食べものよりも褒められることを好んだイヌも多少はいましたし、正反対の反応を見せたイヌもいました。しかし大半のイヌは、食べものと褒められることの両方に、同じ程度の反応を見せました。

イヌの研究に続いて、バーンズ氏はアシカがリズムをとることができることを確認した(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

――アシカの脳も研究されているそうですね。

イルカやアシカの場合、MRIの中に入れるよう訓練することはできません。ですからわれわれは、死んだ個体の脳をサンプルとして入手して脳内経路を調べ、人間や他の動物と比較しました。

アシカが興味深いのは、彼らがリズミカルなパターンに従う能力――わかりやすく言えば、ダンスができる能力を持っていることです。ある仮説では、柔軟な発声器官を持つ動物だけがダンスをする能力を持つと言われています。

アシカはさほど柔軟な発声ができるわけではありません。しかしカリフォルニアにいたあるアシカは、複雑なリズムに乗って踊ることができました。

こうした能力は、言語を通じて身に付くものだと考えられてきました。なぜなら言語自体がリズミカルなものだからです。しかし言語を持たないアシカのような動物に踊る能力があるということは、これが動物にとってより基本的な性質で、おそらくは人間が登場するよりもはるか昔に発達したものであることを示しています。

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