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1本目は、Andrew B Scholey氏らがPsychoPharmacology誌電子版に2009年11月26日に報告した論文です[注4]

30人の健康な成人を登録し、(1)フラバノールを520mg含む飲料、(2)994mg含む飲料、(3)42mgしか含まない飲料(対照群)のいずれかを、3日間隔でそれぞれ1回ずつ、ランダムな順番で摂取してもらいました。摂取後90分たってから、さまざまな種類の認知機能検査や、不安の程度を調べる検査を行いました。また、検査後に本人に精神的な疲労の程度なども尋ねました。

その結果、520mg入り飲料または994mg入り飲料を飲んだ後は、42mg入り飲料を飲んだ後に比べて、「800~999の間のランダムな数字から3ずつ引き算していく2分間のテスト」の結果が上昇していました。994mg入り飲料では、視覚情報処理課題の所要時間の短縮も見られましたが、7ずつ引き算するテストでは間違いが増加しました。本人が感じた精神疲労は、520mg入り飲料を飲んだ後にのみ低下していました。一貫した結果ではありませんが、フラバノール摂取後に認知機能が改善することを示した研究はこれが初めてでした。

2本目は、Physiology & Behavior誌の2011年6月1日号に掲載されたDavid T. Field氏らの論文です[注5]

この研究では、若い成人30人に、フラバノールを含むダークチョコレートを35g(フラバノール含有量は720mg)、または、フラバノールを含まないホワイトチョコレート35gを摂取してもらい、2時間後に視覚機能と認知機能の検査を行って影響を調べました。一方を摂取してから1週間後にもう一方を摂取して、同じように検査を行いました。

すると、ホワイトチョコレートを食べた後に比べ、ダークチョコレート摂取後は、以下の結果が優れていました。

・輝度のコントラスト感度特性(視力検査表のように文字が並んでいるがサイズは同一で、文字の色が徐々に薄くなる表を見て、どこまで読めるかを検査する)⇒上昇

・運動視の能力(モニター上にランダムに動くドットが一面に存在する中にある、一方向に移動するドットを認識できるまでの時間)⇒向上

・視空間作業記憶課題(モニター上に表れる数字とその位置を記憶し、数字が消えたあとに記憶をたどって、位置を示す丸印を順番にクリックする)⇒所要時間が短縮

フラバノール摂取が視覚機能に影響を与えることを示した研究はこれが初めてでした。

どちらの論文でも、研究者たちは、フラバノールの作用として知られている血流の増加などが、機能の向上に関係している可能性があると述べています。

[注4]Scholey AB, et al. Consumption of cocoa flavanols results in acute improvements in mood and cognitive performance during sustained mental effort. J Psychopharmacol. 2010 Oct;24(10):1505-14. doi: 10.1177/0269881109106923. Epub 2009 Nov 26.

[注5]Field DT, et al. Physiol Behav. 2011 Jun 1;103(3-4):255-60. doi: 10.1016/j.physbeh.2011.02.013. Epub 2011 Feb 12.

大西淳子
 医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday 2017年8月23日付記事を再構成]

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