疲れを感じない働き方 やる気引き出す「魔法の言葉」早稲田大学研究戦略センターの枝川義邦教授に聞く

早稲田大学研究戦略センターの枝川義邦教授

SNS(交流サイト)社会では「電話が嫌い」とか、上司との会話が苦手という若手社員も増加。コミュニケーションギャップが深刻になっている。この場合、まず相手の立場を考え、自分の意見を言ったり、発言するのが効果的だ。例えば上司が部下に仕事を依頼する場合、単純に指示するのではなく「忙しいのは分かっているが、君の成長にもつながるから『あえて』この仕事をお願いする」といえば、部下は納得し、両者の信頼関係も強まるだろう。

枝川教授は「欧米では夫婦や恋人同士以外でもハグしたり、握手したりします。このような行為が、信頼関係を強める神経伝達物質『オキシトシン』の分泌を促すといわれています」という。オキシトシンというのは女性が出産する際に多く分泌され、出産後も母子をつなぐホルモンとして知られる。女性だけでなく男性でも分泌されており、良好なコミュニケーションのもとになっているともいう。ただ、日本の職場で、上司と部下が握手するなど触れ合うのはなかなか難しい。

ドーパミン、セロトニン、オキシトシンの3つの神経伝達物質は「幸せのホルモン」と呼ばれる。バランスよく分泌される状況をつくれば、疲労感が緩和され、仕事の意欲も高まりそうだ。

8時間労働は理想的

ビジネスパーソンの中には「自分は仕事が大好き。何時間残業をしても平気だ」という人もいる。ただ、この状況はある意味で危険だという。枝川教授は「個人差はありますが、脳が覚醒し、きちんと働いているのは12~13時間だといわれます。出勤して8時間働いて帰宅するまでが、起きてから12時間程度に収まるなら、脳の働きからみて理想的な労働時間といえます。残業すれば、明らかに脳の働きは低下し、15時間以上なら酒気帯びと同様の状態になってしまいます」という。

もちろん仕事が多忙で、残業が必要な場面もある。「『ここが勝負どころ。スタートダッシュをかけよう』という時には、脳から神経伝達物質『ノルアドレナリン』が分泌されます。これには仕事の意欲、やる気を上げる半面、不安や恐怖、緊張感を高める作用もあるのです。ノルアドレナリンが長く分泌され続けると心身のバランスが狂い、体調不良を招く懸念もあります」(枝川教授)。ノルアドレナリンは「怒りのホルモン」とも呼ばれ、危険な要素がある。

疲労感がなく、やる気が高まっているからと長時間労働を続けていると、「気づかぬうちに疲労がたまり、最悪の場合は突然死する可能性だってあります」と枝川教授は指摘する。ここが疲労と疲労感が違う点だ。疲労感はなくても疲労はたまる。睡眠を削り、きちんとした食事をとらなければ、確実に疲労は蓄積されて体調不良を引き起こす。ノルアドレナリンに頼るのは一時的にして、ドーパミンなど3つのホルモンをうまく引き出しながら、仕事をこなすことが肝要だ。

(代慶達也)

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