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トヨタとマツダなぜ協力 車にAI、グーグルも強敵

2017/9/13

イチ子お姉さん トヨタ自動車とマツダが、車づくりで協力関係を強めることで合意したわ。世界で新技術を開発する競争が激しくなっているのに対応したの。
からすけ トヨタもマツダも有名な会社だよね。優秀な技術者はたくさんいると思うけど、協力しないと開発できない新技術ってどんなものがあるの?

■電気自動車 開発進める

 イチ子 両社はこれまでも環境技術など、車づくりで業務提携していたの。今回はお互い500億円ずつ出し合ってそれぞれの株式を持ち合う資本提携(けい)することにしたわ。つまり、かなり深い協力関係ということなのよ。

 からすけ トヨタの車は「プリウス」を知っているよ。愛知県で生まれた会社で、今では世界でトップ級の会社。マツダは広島県が本社だよね。

 イチ子 今回、提携関係を強めたのは車をめぐる市場環境が急激に様変わりしているからなの。車が世の中を走り出して100年以上続いた「動力源はガソリンなどを使うエンジン」という時代が終わろうとしていることもその一つ。これからはガソリン燃料を使わず排ガスを出さない「エコカー」が主役になるといわれているわ。次世代車ともいうのよ。トヨタとマツダはエコカーの一つ電気自動車(キーワード、EV)の開発を進めていくそうよ。

<キーワード>
 電気自動車 車に積んだバッテリーにためた電気でモーターを回して走る。燃料にガソリンを全く使わず、二酸化炭素(CO2)や排ガスを出さない。1回の充(じゅう)電で走れる距(きょ)離がガソリン車より短いことが課題。英語で「Electric Vehicle」と書くので「EV」と省略する。
 コネクテッドカー 車に搭載したセンサーとインターネット通信網を接続し、ネット上の情報とやりとりする。車同士の通信で互いの位置を確認し、衝突を防止したり渋滞を回避したりする。事故発生時、自動的に警察や消防などの緊(きん)急対応機関に通報するシステムの開発も進む

 からすけ プリウスもエコカーだって教わったけれど。

 イチ子 プリウスはエンジンと電気モーターの両方で走るハイブリッド車(HV)。家庭で充電できるものもあるわ。いずれもガソリンの使用を減らすからエコカーの一種ね。でも環境規制を強化する流れから、英国とフランスは2040年までにガソリンで動く車の販売を禁止する方針を打ち出したわ。光化学スモッグなど大気汚(お)染が深刻な中国もEVを普及させるの。

 からすけ なるほどね。

 イチ子 トヨタはHVで世界の車市場をリードしてきたけれど、EVの開発は世界に後れを取っているの。マツダも単独で開発にお金をかける力は乏しいらしいわ。車の世界販売競争でトヨタのライバルであるドイツのフォルクスワーゲンはEVに力を入れているの。国内では日産自動車が先行しているわ。トヨタもマツダもこうした流れに乗り遅れるわけにはいかないので、互いの技術を持ち寄ることにしたのよ。

 からすけ トヨタは新しい仲間を求めて協力し競争していくんだね。

■車にAI、アップルやグーグルも強敵

 イチ子 両社はこれから人工知能(AI)や高度な視覚センサーで人の運転技術を補助したり、人の代わりに運転したりする自動運転技術でも協力するの。車本体をインターネットに常時つなげて安全運転を保ち、事故を防ぐコネクテッドカー(キーワード)も同様なのよ。これらも次世代車として注目されているわ。

 からすけ SF映画に出てくる車みたいだね。

 イチ子 あなたが成人になるころには当たり前になっているかもね。この分野には、AIやインターネットに強い米グーグルやアップルといった情報技術(IT)企業など、車づくりには関係のなかった会社が相次ぎ参入しているわ。トヨタとマツダの提携はこうした新しい勢力に対抗(こう)する狙(ねら)いもあるの。新技術が今までの車業界の序列や枠(わく)組みを壊しつつあるのよ。

 からすけ 大変な時代だね。

 イチ子 車づくりが変わる中、国もメーカーを支援するわ。今までの車づくりの主要な技術は機械工学といって、エンジンなど内燃装置の性能を向上させるのが目的だったの。でも次世代車にはあまり必要のない技術で、ITと電機関係の技術が重要なのね。ところが、各メーカーにはITと電機に詳しい技術者が少ないの。そこで国は各社共同での研究開発を促したり、IT関連のベンチャー企業が開発に加わるような仕組みを作ったりしているのよ。

 からすけ 国はなぜそこまでするの。

 イチ子 自動車が日本の経済を支える大事な産業だから。資源に恵まれない日本は鉄などの資源を外国から輸入し、車や機械などの工業製品にして国内外に出荷することで発展してきたわ。出荷される工業製品の中で最も多いのが車なの。しかも車をつくるには鉄鋼、ガラス、エアコン、バッテリーといった2万から3万点にのぼる材料と部品が必要。自動車産業は様々な技術が集まった産業の山脈といってもいいわ。

 からすけ それはすごい。

 イチ子 新車を開発すればいろいろな仕事が生まれる。それで働く人たちが増えて社会を支えることにもなるの。次世代車も同じ。IT関連の企業だけでなく高い技術力をもった、ものづくりの中小企業も参入のチャンスだわ。トヨタもマツダも今まで以上に前例のない車づくりが始まるのよ。

 からすけ 攻めないと勝てないってことだね。

■企業も求められる「進化」

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 19世紀、ダーウィンが唱えた進化論は、キリスト教社会に衝撃(しょうげき)を与えました。人間は神の創造物ではなく、動物から進化したというものだったからです。ダーウィンは、生存競争に有利な固体の特徴(ちょう)が遺伝し、種が進化するという自然選択説をあげています。
 この説は必ずしも正しくないとも言われますが、これを社会に応用したのがスペンサーが唱えた社会進化論です。社会もまた、自由競争による適者生存のメカニズムが働き進化するといいます。
 さて、現代は技術革新のスピードが速く、新しい視点や価値観も次々と生まれてきています。以前の手法や思考が通用しなくなることもしばしば。過去の成功体験を手放すことは簡単ではありませんが、順調だった大手企業も進化しなければ急速に廃(すた)れていく危険性があるといえそうです。

[日本経済新聞夕刊2017年9月2日付]

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