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日本橋の首都高地下化 そもそも都心に高速は必要?

2017/9/12

日本橋には1963年から首都高速道路の高架橋がかかっている(8月25日、東京・中央)

 1メートルを通すのに1億円かかる道路工事が始まるかもしれません。東京・日本橋の上空を走る首都高速道路について、国土交通省や東京都が7月、地下化を目指すと宣言したのです。伝統ある日本橋を屋根のようにおおうコンクリート製の高架を除くことで、景観を良くしようという発想からです。

 「国や都が日本橋の景観に目を向けてくれたことはありがたい」と話すのは、地元の老舗「栄太楼総本舗」の細田安兵衛さん(90)です。54年前に日本橋の上にかかった首都高は「大きな社会的役割を果たしたが、今は文化や環境を重んじる時代に変わった」として高架の撤去を求めてきました。

 そんな細田さんも心配しているのが、5千億円ともいわれる地下化のための費用です。

 もともと日本橋を通る2.9キロの区間は老朽化が進んだため、首都高の運営会社が1400億円かけて更新する予定でした。しかし地下のトンネルに替えると用地の確保などに追加でお金がかかります。仮に総費用が5千億円ならば1メートルあたり1億7千万円となり、数百万円といわれる高速道路建設の平均コストに比べて桁違いに膨らみます。

 地下化の費用は誰がどう負担するのでしょうか。石井啓一国交相は7月の記者会見で「民間の活力を取り入れることでコスト縮減を図る」と説明しました。たとえば開発業者に特例で高層ビルを建てるのを認める代わりに、費用を負担させる案などが検討されています。ただし民間だけで地下化のコストをまかなえなければ、税金が投じられる可能性もあります。

 インフラ老朽化が専門の根本祐二・東洋大教授は「まず計画の全体像を明らかにすべきだ」と話しています。首都高は総延長319キロの半分以上は開通から30年以上たち、全て更新するには兆円単位のお金がかかります。地下化に巨費を投じても、全体の更新が滞れば「部分的な投資がムダになる可能性もある」と指摘しています。

 地下化には複雑な工法などの課題もあります。生まれも育ちも日本橋という細田さんも「高速道は取り除いてもらいたいが、地下化が唯一無二の方法とは思わない」と話しています。

根本祐二・東洋大教授「都心の高速道、全廃も選択肢」

 首都高速道路の地下化をどう考えるべきでしょうか。著書「朽ちるインフラ」で道路や橋の老朽化に警鐘を鳴らした根本祐二・東洋大教授に話を聞きました。

 ――日本橋の上を通る首都高を地下に潜らせる計画をどう見ていますか。

根本祐二・東洋大教授

 「一部の区間の話ではなく、全体を明らかにしてから議論する話だ。首都高の全体を更新するためにはいくらかかるのか。そのうち税金の負担や利用者収入をどのくらい見込むのか。交通需要が減るリスクはないのか。全体についての情報開示がないと判断できない。部分的な話からはじめるのは危険だ」

 ――代案はありますか。

 「そもそも高速道はJR山手線内に必要なのだろうか。外環道も整備されてきて、車の分散もある程度、可能になってきた。私は都心の高速道は全廃するのも選択肢だと考えている」

 ――全廃は可能ですか。

 「緊急車両に限定して都心に入ることを認めるなら、必ずしも交通渋滞するとは限らない。重要交通や公共交通は残し、それ以外の車には課金することで流入を遮断する。首都高をなくす分、一般道の交通量を減らすことで渋滞を発生させない発想だ」

 「このような代案も含め、東京の道路網をどうするのかという根源的な議論をすべきだろう。部分的な建て替えを地下化のような巨額投資で始めてしまえば、あとから全廃というわけにはいかなくなる。部分が全体を決めるのはよくない。地下化に国や都から補助金が入るなら、国民や都民の判断を仰がないといけない」

 ――地下化の計画では、民間資金の活用も議論されています。

 「地価が高い日本橋にかぎれば可能だと思う。ビルの容積率を上げるかわりに、利益の一部を民間事業者に戻してもらうことなどが見込めるからだ。ただし部分的な更新は、ほかの都心環状すべてが更新可能であってはじめて意味をもつ。高速道路は10キロメートルだけあっても意味はない。民間資金が入るのであれば、投資家は更新計画の全体をチェックするだろう」

(高橋元気)

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